11.騎士とおっさん―7
「ま、まあ……あの子は少し可哀想なヤツなんだ。許してやってくれ」
しょうがないので、何故かサリエラのフォローに回るグルゥ。
だが、その直後――ずかずかと室内に上がり込んだブランが、サリエラの腕を取る。
「まさか、貴女は――」
それでも変顔を止めないサリエラ。
「ああー」
「……いや、まだ続けるのですかそれ!? もはや見上げた根性ですね!? とにかく、貴女に少し話があります。一緒に来てくれますね」
それでも変顔を止めないサリエラ。
変顔のパターンが若干変わり、顔のパーツを全て真ん中に寄せた岩のような顔面になった。
「酸っぱいものでも食べたのですか!?」
二人のやり取りを呆気に取られて見ていたグルゥだったが、サリエラが、ちょくちょくこちらに視線を送っているのに気が付いた。
変顔はまだ続いていたが、その目はある一つの言葉を物語っている。
すなわちそれは――“助けて”、と。
「やめろ」
仕方ない、と自らのお人好しさにいい加減うんざりしつつも、グルゥはブランの腕を掴んで、サリエラから手を離させる。
「嫌がっているだろ。……彼女は年頃のレディなんだ。あまりべたべた、触るもんじゃない」
「へぇ。私に向かって、そのような提言をするとは」
ブランの視線の行き先が、サリエラからグルゥの方へと変化する。
両者の視線がぶつかり、激しく火花が散るような感覚があった。




