11.騎士とおっさん―6
「失礼する」
年の頃は二十代後半だろう。
端正な顔立ちで、上背も高く、その立ち振る舞いには気品が溢れている。
だが、それら全てを帳消しにするほどのインパクトが――一本の乱れも許さぬよう、整髪料にてべったりと七三分けにされた、黒髪だ。
「私の名はブラン・クランシェ。此度の徴収について、各公国が適した方法を取っているか確認するため、王の勅命により派遣された騎士の一人です」
ブランは感情の見えない抑揚の無い話し方をして、正面のグルゥを見据えた。
「私に言えることは一つだけ。正しい額を、正しい方法で、正しく納めて頂く。“きっちり”させて頂くために、ここまでやって来ました」
魔人であるグルゥを前にしても、臆することなく、真っ向から対峙する。
それだけで、グルゥは理解した――チンピラのような公国の使いとは違う、この男は“強い人間”であると。
「そんな……どうして『五彩の騎士』の一人、『清廉と純潔の白騎士』がここに……っ!?」
すると、後ろで見ていたサリエラが、何かを知っているような口調で独りごちる。
当然、全員の注目がサリエラの方へ向けられたが。
「ひゃんっ!!」
サリエラは渾身の白目を作って、天井を見上げ、意味不明な変顔を作っていた。
「え……何をしているんだ、サリエラ? ふざけている状況じゃないぞ? おい、聞いてるのかサリエラ!?」
「ひょのサリエラっていうの、やめてくらはい。私はカニです。あー」
口から泡を吹いて、両手をチョキチョキさせるサリエラ。
異様だった。
異様過ぎて、誰もそれ以上ツッコめなかった。




