表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/104

 第5章 選択の刻 第四話 最終試験 219番 5/5

 


 補助講師の「お疲れ様でした」という声と、その姿を見て、少女は試験の終わりを察した。


 そのまま丁寧な口調で、補助講師は続ける。


「あなたはもう候補生ではありません。

 こちらからお進みください」


 少女は、一瞬だけ顔を上げた。


 示された扉は、この部屋に入室したときの簡素なものに似ている気がしたのだ。


 その向こうに、講師たちがいるような気がした。

 しかし。

 扉の先は白い光が満ちているだけで、他には何も見えなかった。


 これまでのすべての訓練は、記録されていた。

 つい先ほどの追加試験も、講師たちは見ているはず。


 少女はくるりと振り返り、部屋の中を見渡すように宙へと視線を巡らせた。


 今の自分の姿も、見られているのだろう。

 そう思い、深く一礼する。


「ありがとうございました」


 それから219番は、補助講師に促された扉の向こうへと歩き出した。


 

 


 少しずつ呼吸が整ってきた頃、廊下の先に広がる空間が見えてくる。

 219番は更衣室にたどり着いた。


 壁一面に並ぶパネルと番号。

 ところどころに、淡い光が宿っている。


 その中でも光の強いパネルに触れると、自分の番号を含めた数字の羅列が現れた。


 219番は制服の留め具に手をかけながら、試験を振り返る。


 ──分からなかった。


 何かに気づいていないことだけは分かる。

 だが、その肝心な“何か”に、気づけていない。


 この制服を脱げば、候補生ではなくなる。

 では、ここを出たら、自分は何者になるのだろう?


 光る番号に触れ、制服を現れた空洞の中へ収めると、パネルは静かに閉じた。

 同時に“219”の光も『フッ』と消える。


 その219番の光が消えると、少女の胸を、形にならない未来がよぎる。

 それを振り払うように扉に手をかけ、彼女は外へ出た。


 一歩進むと、陽の光が視界に飛び込んだ。

 視線の先から、御者が近づいてくる。


「ご案内いたします。

 こちらへ、どうぞ」


 219番は戸惑いながらも、御者の後ろを歩き始めた。


 小型の馬車が列をなして待機している。

 その中にある中型の馬車の前で、御者は振り返り、深く一礼した。


「こちらで“皆さま”を、お待ちいただきます」


「わかりました」


 少女が小さく答えると、御者は気遣うように足場を用意した。


「長くなると思いますよ。

 中でお待ちになりませんか?」


 少女はその言葉に感謝しながらも、小さく首を横に振った。


「では……、このままにしておきますので。

 いつでも中にお入りください」


 御者はそう言って、その場を離れていった。

 仲間なのだろう。他の小型の馬車の御者たちと、言葉を交わし始めている。


 少女はその様子を一瞬だけ見やり、

 やがて、自分が出てきた校舎の扉へと視線を戻した。


 彼女は、ずっと、そこを見つめていた。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ