第99話 勝利の代償
フリーデリカとその家臣たちが慎重に近づいてくる。彼女の目には複雑な感情が渦巻いている。
王国の王子を失った悲しみ、野望がもたらした破壊への怒り、そしてこの危機を防いだ者たちへの感謝。
「レオン様……」フリーデリカが声をかける。
レオンはゆっくりと立ち上がり、仲間たちを見渡した。
彼らの誰もが傷つき、疲れ切っている。
しかし、その目には確かな光がある。
自分たちの信じる道を進み、守るべきものを守ったという確信の光だ。
「私たちは……勝った」
レオンの声は枯れ、疲労に満ちていたが、その響きには確かな強さがあった。
風が東嶺の城塞を吹き抜け、硝煙と鉄の匂いを運んでいく。
遠くでまだ炎がくすぶり、黒煙が灰色の空に昇っていく。
戦いの跡が生々しい広場で、レオンは手にした革筒を握りしめていた。
その中には、殿下が密かに進めていた『新生計画』の詳細が記されていた。
計画が始動したのは、十数年前。
彼がまだ少年だった頃から、この狂気の歯車は回り始めていたのだ。
その事実が、レオンの胸に冷たい棘を突き立てる。
「1人の狂気だけでは、ここまでできなかった」
老魔術師アーサーが頷いた。
彼の深く刻まれた皺の間から、鋭い目が光っている。
「魂の転写実験……」
アーサーの声は低く、重々しかった。
「古代魔法の禁忌をここまで応用し、実用の域にまで高めるには、膨大な知識と資源が必要だ。宮廷魔術師団の奥義、王家に伝わる秘儀、そして…失われたはずの研究資料」
アーサーが一歩前に出て、レオンが手にした文書をじっと見つめた。
「これは組織的な陰謀だ」
老魔術師の声には怒りが込められていた。
「殿下だけが動ける範囲を超えている。宮廷の中に、いや、王国そのものに、この計画を支える勢力が潜んでいる」




