第61話 東嶺子爵と対面
「ようこそ、西山男爵グスタフ閣下。そして……レオン様」
フリーデリカの声は冷静で明瞭だった。
「そして、民衆勇者の皆様。エリザから早馬で連絡があり、急ぎ準備を整えました」
グスタフが一礼した。
「久しぶりだな、フリーデリカ。相変わらず、本に埋もれておるようだ」
フリーデリカの口元にほのかな微笑が浮かんだ。
「知識こそが最大の武器ですから、グスタフ閣下。ですが今、私はこの東嶺で起きている不可解な事件に、頭を悩ませています」
レオンが前に進み出た。
「子爵、我々は重要な情報を持って参りました。それは、東嶺の襲撃事件と、王国全体を覆う陰謀を結びつけるものです」
フリーデリカの表情が真剣になった。
「聞かせてください」
次の数時間、レオンたちとグスタフは、これまでの経緯を詳細に説明した。
ヴァイダー卿との出会い、財務卿の不正の証拠、西山での交渉、廃鉱山での戦い、そして「試作機」の目撃と、金歯車傭兵団の指揮官から聞き出した「殿下の計画」について。
フリーデリカは一言も発せず、すべてを聞き終えた。彼女は机の上に広げられた地図を見つめ、長い沈黙を保った。
「……つまり」
彼女がようやく口を開いた。
「クラウス殿下は、何か古代の技術と現代の魔術を融合させた兵器。おそらくは自律的に動作する機械兵を開発しており、その完成のために東嶺の古い知識と資源を必要としている。そして財務卿は、その資金調達のために不正を行い、我々のような辺境領主の反感を買うことで、殿下の影響力を拡大する機会をうかがっている」
レオンがうなずいた。
「その通りです。そして今、殿下が自ら東嶺に来るということは、計画が最終段階に入ったか、あるいは何か障害が生じ、直接指揮を執る必要が生じたことを意味します」




