表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬が兄弟になりまして  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/64

犬が兄弟になりまして・64

「よかったー、間に合ったー。もう出られたって聞いたから間に合わないか、わー!かわいいー!リクくんとカイくんですか?わー!ボルゾイもいるー!ハスキーだー!きゃー!」

 肩で息をしていたかと思うと、突然周りのイケメンたちに気づきひとしきり撫で繰り回すと、舟木はようやく航のもとへ戻って来た。

「すいません、わざわざ追いかけてお渡しするようなものでもないと思ったんですが、せっかく作ったので……」

 言いながら舟木は持っていた紙袋の中から小さなあみぐるみを取り出した。

「はい。リクくんとカイくんです」

 ゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバーのデフォルメされた小さなあみぐるみだった。

「すごい……、かわいい……」

 呆気に取られている航だが、本心である。まったく興味のないものではあるが、『かわいい』ぐらいは言える。

「あ、こっちは曹操くんとパーカーくん」

 舟木は美馬にもやたらかわいいシェパードとドーベルマンのあみぐるみを渡す。

「うれしい!まさか手作りですか?」

 きゃあきゃあと喜びながら受け取る美馬が訊くと、舟木はにっこり笑った。

「はい。趣味で作ってて。あとこれ、図々しいですけど、うちの子も受け取ってください」

 笑いながら舟木が出したのは、真ん丸のチャウチャウ犬。2匹づつ航と美馬に渡す。

「2匹も?」

 航と美馬が同時に首を傾げると、舟木は言った。

「アスラとスモモです。アスラ、お嫁さん貰ったんですよ」

「写真見せてください!」

 食い気味に航は言った。

 一瞬にして航は悟った。悟りはしていたが、写真を確認するまで安心はできない。

「いいですよ~。えーと、はい、これ」

 舟木がスマホの画面に出したのは、舟木とチャウチャウ犬のスモモと、見覚えのあるヒトの姿をしたアスラが並んでいる写真だった。

 間違いない。と航は思った。だが。

「あ、すいません。このあいだ病室で見せてもらった、舟木さんとふたりで写ってるやつ、もう一回見たいです」

「ああ、はい。どれだったかな……」

 フォルダをスクロールする舟木の手元を、失礼だと承知しつつも航は覗く。すいすいと通り過ぎる写真には間違いなく誠実そうな好青年・アスラと、たぶんスモモであろうチャウチャウ犬の姿が写っている。だが、あの時見たのがスモモの写真だと確定するまでは安心はできない。

「これかな?」

「いや、これじゃないです。あの、スモモちゃんと撮ってるので、これと似たようなショットのありませんか?自撮りの」

 我ながらしつこいなと思いつつも航は諦めるわけにはいかない。

「スモモと?このあいだ見せたのアスラとの写真じゃなかったですか?」

「いや、なんか、ちょっと違ったような気がしたんですよ、あの時。だからもしかしてスモモちゃんだったのかなーって」

「そうなんですね。えーと似たようなの……、これかな?」

「これです!これこれ!これスモモちゃんですよね!」

「やだ、私、スモモとアスラと間違えて見せてたんですね、ごめんなさい~。それにしてもよくわかりましたね、アスラじゃないって」

「いや、なんていうか、ちょっと、アスラくんにしては小さいかな~、なんか痩せたかな~なんて、ね?」

「それであの時、変な声出してたんですね」

 聞こえてたのにスルーしたのかと航は思った。たしかに変な声が出てしまったが、美馬と舟木が犬談義で盛り上がっていたので気づかれていないと思っていた。

「うん、なんていうか、ちょっとだけびっくりして?」

「それにしても飼い主の私でさえ間違えたのに、凄いです天道さん。2回しか会ってないのに」

「ねー。すごいですよねー。我ながらびっくりです」

 嘘です。本当は全然気づいていなかったです。気づいていなかったからこそ今の今までもうヒト化したリクにもカイにも会えないと相当落ち込んでいました。今やっと舟木さんの間違いだったと知って、とてもとても安心しています。ヒト化して見えるのが一時的なものではなく、これからもずっとリクとカイがあの姿で見えるとわかってホッとしています。なんなら万歳三唱したいくらいです。

「小次郎だからわかったのね」

「ちがいますよ」

 航は上機嫌だ。だから隙をついた美馬の攻撃も難なく躱せる。

 航はたぶんこの何年間のなかで一番すっきりした顔をしているのではないだろうかと自分でも思っていた。新規の契約が取れたときより、バッティングセンターでホームラン出したときより、ストラックアウトで9枚抜きしたときより、ずっとすっきりしている。たとえモフモフふわふわの犬や猫を抱きしめる権利を永久に失ったのだとしても、ヒトの姿をしたリクとカイがそばにいるということは、何にも代えがたい幸せなのだとつくづく実感しているのだ。

 リクとカイはヒトのままだ。頭を打ってももとに戻ることはなかったのだ。

 航はリクとカイの肩を両手で抱き寄せると晴れ晴れと言った。

「つくづくおまえらが人間でよかった!」

「いや、おれら犬だし」


        完


 長々とお付き合いくださり、

 ありがとうございました。

 しばらく別のお話を書きますので、

 これにていったん終了となります。

 またそのうち続きを書いた際には

 読んでいただけるとうれしいです。


 重ね重ね、ご精読、ありがとうございました。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ