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(旧)ブルーナイト・ストーリーズ  作者: 大根入道
第一章 白の巨人
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決戦 二

―― 指手猿飛流、


「らあ!!」


 飛燕王の嵐の刀身が処刑大剣形態(エクスキューショナー)の光の刃と激突、拮抗。

 光の刃が競り勝つが、その瞬間には飛燕王は別の剣閃の軌跡を描く。

 赤の炎沼盾(アモール・レッド)に受け止められるも、また嵐の刃を残し、翡翠の刀身がロー・アトラスの鳩尾を狙う。


―― 風猫戯画ふうびょうぎが


「くふふ」


 風の斬撃を残すことにより、疑似的な同時攻撃を成したこの技の最後の刺突は、しかし処刑大剣形態(エクスキューショナー)の柄頭によって止められた。


『黒狂徒!』


 ボルゴラックの砂塵の竜吐息(ブレス)は、赤の炎沼盾(アモール・レッド)から噴き上がった炎に防がれる。


「蛇腹太君、全開よ!」


 リクスの全魔力を込められた剣槍が、長大な銀光の刃を生み出す。

 自由の黒套(オール・ライツ)から伸びる黒手をニグナトスの劫火が焼き払い、蛇頭から跳躍したリクスが蛇腹太君を打ち下ろす。


「モード・黒い戦鎚(グラビトン)


 光の大剣が姿を変え、黒い鎚頭から発せられた極大の雷光が銀光の刃を打ち消した。


『おおお!!』


 旋風天狗(ボルテックス)の双剣を黒手の群れがいなし、三百の黒手の手刀が遂にその腹部を貫いた。


「この程度か?」


 必死にロー・アトラスの攻撃に喰らい付くルルヴァへ、醒めた声でオヌルスが問い掛ける。


 ルルヴァも、リクスも、善良に属する少年少女であることはオヌルスも理解している。


 だが魔族というどす黒い悪がある為に、残虐の剣を振り下ろさなければならない。


 かつてオヌルスは老賢者に自身の正義を問われたことがある。


 その時にオヌルスは「悪の畑へ塩を撒くことだ」と答えた。


 二度と絶対に、悪が芽吹くことのないように。

 二度と絶対に、そこに悪が芽吹くと誰にも思わせないように。


「ここが限界というならば是非もない。引導を渡してやろう」


 黒い戦鎚(グラビトン)の雷を広範囲に展開。

 堪らずルルヴァ達が防御をした瞬間に、距離を離し、地上諸共を砲撃形態(ハリケーン)の射程に収める。


砲撃形態(ハリケーン)、シュ」


 オヌルスの意識が一瞬途切れた。


(……魔力切れ)


 ほぼ同時、オヌルスの魂が悲鳴を上げ、激痛が襲って来た。


「ぐおぉおおおおお!」


 運命(ドゥーム)巧式フォーミュラーはその使用に莫大な魔力を消費する。

 戦士級でさえ最低でも真達位上位の魔力を喰らい、尽きれば使用者の魂を喰いに掛かる。

 

「く、ふ、ふふ」


 眼前に黒竜、そして暴風纏う精霊刀を握る少年。


「らああああああ!!」


 嵐の刺突。


 炎を失った赤の炎沼盾(アモール・レッド)で受けるが、盾が、いやロー・アトラス自体の実体が解けていく。


「ふふ、はーはっはっは!!」


 白い巨人は消え、翡翠の嵐を受け、オヌルスは地面に叩き付けられた。


* * *


 ルルヴァが地面に降り立つ。


 満身創痍のオヌルスが聖銀の剣を上段に構える。


「くふふ。見事だルルヴァ・パム」


 慢心があった。

 侮りがあった。

 ロー・アトラスの力に酔った。


 この無様の理由はあと何個もありそうだが、元より戦士でも求道者でもなく、正義に狂う亡者の身。


「見事だ聖女、軍人」


 空より降りて来る気配は無い。

 決着は目の前の少年に託したということだ。


「……」


 ルルヴァもまた飛燕王を上段に構えた。


「「つ」」


 踏込みは同時だった。

 振り下ろしも同時だった。


 聖銀の剣が僅かに速く、それはルルヴァを頭頂より両断するはずだった。


 ルルヴァの右足が横を蹴った。

 

「な!?」 


 傾いた姿勢、左袈裟の軌跡を描く翡翠の刀身。

 聖銀の刃がルルヴァを斬るよりも早くオヌルスを斬る、と同時、宙を飛んだルルヴァの体は振り子のように弧を描き、オヌルスの後ろで背中から着地して土の上を転がっていった。


―― 聖銀の切先が地面を斬った。


 敗れたと、オヌルスは理解した。


 流れ出る血と共にねつが零れていく。

 聖銀の剣を落としたと同時に意識は途切れ、黒騎士は自らの血溜まりの中に崩れ落ちていった。


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