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(旧)ブルーナイト・ストーリーズ  作者: 大根入道
第一章 白の巨人
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ルルヴァ・パム 四

―― ぐちゃぐちゃにしたい。

―― ぐちゃぐちゃになりたい。


―― 興奮と何かで頭がおかしくなる。


 夜を退ける破壊の炎。

 静寂を吹き飛ばす怒号と悲鳴。

 その全てが相違する断続の連続。


 無人の戦闘ゴーレム。 

 有人の戦闘装甲ゴーレム。


 呼び出され、或いは生み出された異形の怪物。


 アッパネン王国の紋章を記した魔導の兵装で身を固めた兵士。

 聖典教会の聖印を刻まれた黒衣を纏う騎士。


 その全てがルルヴァへと襲い掛かる。


「風よ!」


 津波のような弾幕をルルヴァの風が粉砕する。

 交差する無数の刃と翡翠の刃。


「らあ!」


 半月を描いた飛燕王の軌跡、両断された魔導剣、魔導鎧、肉と血と骨達。


 舞い散った赤の飛沫しぶきが落ち始めるより前に、踏込み駆け抜けたルルヴァの斬撃はゴーレムと怪物達の中を走り、一拍置いて斬り飛ばされた各々《おのおの》が地面へ落ちていった。


『世界を汚す汚物が!!』


 ルルヴァの上空、天を背に鋼の翼を広げる戦闘装甲ゴーレム達の砲撃の掃射。


 その後ろで巨大な赤竜の顎門が開き、眩い程の赤い光がルルヴァ達を狙う。


(「ルルヴァ様伸ばします! ご準備を!」)


 ゼブからの念話。地下を走った強大な魔力の波動。

 ルルヴァは天を睨み、両手に握る飛燕王の刀身をその体の後ろへ隠す。

 がら空きとなった正面へ撃ち込まれる攻撃は、しかし翡翠の風が護り、エトパシアの炸裂型魔導矢(まどうし)が撃ち落とす。


 赤みを帯びたルルヴァの魔力洸が高まり、空気のこすれる音が鳴る。


(「お願いします」)

(「はい!」)


 次の瞬間、地面が爆発した。


『な!?』

『んだと!!』


 天へと伸びる、石の無数の槍柱。

 全てが音速を超え、六つ七つを耐えたゴーレムの装甲も、十を超え十五を超えるとなると耐えられず。


「っ」


 ルルヴァは槍柱の間を一呼吸で蹴り上がる。

 牙の生え揃う竜の顎門の奥に、今解き放たれようとする強大な赤い破壊の力が覗く。


「風よ!」

『ゴアァ!!』


 間に合わず、放たれてしまった業火の竜吐息ブレス

 ルルヴァを呑み込み、地上のエトパシア達を穿ち、爆炎の中に全てを燃やし消し飛ばすはずだったそれを、飛燕王の嵐の刀身が竜の口ごと斬り裂いた。


 爆発。


 爆風を受け空へ、宙へと飛ばされたルルヴァの視界に、リクスへ光の剣を振り下ろすロー・アトラスの姿が映った。


―― 飛燕王の鼓動が応えた。


「お願い!!」


 ルルヴァの投擲とうてき

 飛燕王が翡翠の洸を引き、閃光となってける。


「!?」


 風が処刑大剣形態(エクスキューショナー)を弾き飛ばした。


 それを見届けた瞬間がルルヴァの現界だった。


―― 疲労の極限に達し、視界がかすむ。

―― 白い巨人がその左手を、自分ルルヴァへと向けたのが見える。

―― 赤い盾と一体化し、てのひらに開いた砲口に白い輝きが灯るのが見える。


(ああ、)


―― 本当に、どうしようもない。


発射シュート


 白い光。


 その輝きの中に過去これまで未来ゆめが重なり、消えていく光景の幻を視た。


―― 父さん、母さん、ペローネ。


 いつか世界を旅しようぜ。すっげえもんがある気がするんだよ。


 うん。いつかきっと。


 夢なんだよ。だから俺は。


 だから私は頑張るんだ。


「みんな……」


 ……。


 終わりは訪れなかった。


 紅色の魔力洸を放つ巨大な盾が、白い光からルルヴァを守ったのだ。


 そして。


「あ……」


 空にり、自分を抱える巨大な存在をルルヴァは見上げた。


 月光に照らされ黒いうろこが輝く。

 それは赤い魔導鎧を纏い、夜空へと翼を広げる黒き魔竜の姿。


『よく頑張りました。もう大丈夫ですよ』


 ルルヴァへ微笑んだ黒い竜の瞳は、優しい光を湛えていた。




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