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(旧)ブルーナイト・ストーリーズ  作者: 大根入道
第一章 白の巨人
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焼ける空 二

 人の世に人として生まれた。


「しかし人としては死ねないのか?」


 リクスは黄金の大蛇に乗り、蒼い機兵と共に白い機兵に立ち向かっていった。


 泥より芽吹いた俑器兵(ようきへい)達が暴れ、人々を襲う。


「艦へお逃げください! お早く!」

「急ぎなさい! 南よ!」


 石の槍に貫かれ、氷の砲弾に砕かれ、魔導矢まどうしの爆発に呑まれても、何度も何度も生まれ出る。


 絶えず姿を変えるそれらは既に人の形を崩しており、獣の頭を持ち、或いは蟲の体をして、手には無数の鉤爪かぎつめを生やすに至る。


「兄さんっ!」

「おいルルヴァ呆けるな!」


 ペローネとジルルクが、佇むルルヴァを動かそうとするが。


『ウラ、ウファ、ウファメシシ』


 動かぬ、動けぬルルヴァ達へ異形と化した俑器兵(ようきへい)がその顎門あぎとを開き、飛び掛かって来た。


 ルルヴァ達を守ろうと前へ出たペローネ、しかし二人を守ろうと覆い被さったジルルク。


 その中より抜け出たルルヴァ。


「これが正義だというのなら」


 鞘より抜き放たれた翡翠の刃が弧を描き俑器兵(ようきへい)を斬り倒した。

 そして薙ぎ払いが風切り音を立て、それが嵐となって他の俑器兵(ようきへい)達を吹き飛ばした。


「ルルヴァ」

「……兄さん」


 朱い目から涙が零れるのが見えた。


『マオウ、マゾク、マゾク!!』


 土からまた、無数の俑器兵(ようきへい)が生まれ出る。


 ルルヴァが駆ける。


 そして、虚空へ飛燕王を振り下ろした。


『オオオオオオオオオオオ!!』


 中に黒い炎を宿す水晶の馬が姿を現し、縦に両断され、地面に崩れ落ちて粉々に砕け散った。

 同時、全ての俑器兵の姿が崩れ、ただの泥となり動かなくなった。


「僕は正義を斬る」


 とんっ、と黒衣の騎士が着地を決めた。


 とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ、とんっ。


 魔導剣を構え、切先をルルヴァ達へと向ける。


 ルルヴァは飛燕王を中段に構えた。


「「くぇええ!!」」


 騎士達の斬撃は音速。


―― だが、しかし。


「お前らは黒狂徒(あいつ)の足元にも及ばない」


 ルルヴァはオヌルスの剣を受け、その奥義を血肉に受けた。


 そして、ルルヴァの才が()()()()には、それで十分であった。


 飛燕王を振り被る。

 柄を握る右手と左手の間を無くす。


 上下左右より迫る騎士達の魔導剣はしかし、刹那の世界より見れば、全く同時とはなっていなかった。

 一人を斬り、二人を斬り、次を斬るまでに剣の刃がルルヴァへと届くまでのは、確かに存在した。

 

 だからルルヴァは自分が斬る瞬間に、騎士の剣にそのを挟ませるように動き、ただ一つの軌跡を描き刃を振り抜いた。

 

「つっ」


 振り返り、残心を取る。


「な?」

「ばか、な……」


 騎士達の魔導剣の剣身がたれ、落ちた。

 騎士達の魔導鎧がずれて、落ちた。

 そして騎士達の体はバラバラとなって崩れ落ちた。


「あれ?」


 体力と魔力の消耗から眩暈めまいを覚え、倒れそうになったルルヴァをエトパシアが支えた。


「よくやった」

「……はい」


退くぞゼブ」

「はい、畏まりました~」


 ゼブが氷の大蛙を呼び出し、その背に魔法でノイノ達を乗せる。

 ルルヴァはエトパシアに抱えられ、ペローネ達と一緒に飛行戦艦のある場所へと向かった。

 

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