トナの村にて.6
さっき間違えて同じの投稿してしまいました!ごめんなさい!
「ひゅう、ひゅう!これはよい武器が出来るぜ、くくく」
「…………」
鍛冶屋に来ると、眼が血走ったおじさんが剣をトンカントンカン打っていた。
「アルフさーん」
「こいつは、中々の武器だ。もっとだ!もっと強い武器でこの辺りの魔物を殲滅してくれる!くくく!」
いや、なんか怖いんですけど?
「アルフさーん?」
「ほれ、トンカントンカーンと!」
「全く、聞こえてませんね」
「あの人、武器を打つと人がかわっちゃ……わないけど、害はありませんよ」
「いつも、あんなんなんですか」
「まあ、変態ですからね、武器防具のね」
「……ん?誰だ、貴様!」
いきなりダガーを投げて来たので、指で挟む。あっぶな!
「きゃあ!いきなりなにするんですか!アルフさん、だからいつまでも結婚出来ないんですよ」
「やかましい女め。見た目が可愛いからってそれが通用するのは、若い時だけだぞ?気をつけろ」
うわっ!ぐさりと来たこと言うな、この人。
「にゃにおう!あなたみたいな鍛冶きちがいに私の魅力が分かるもんですか!年を重ねても、男は言い寄って来るもん!」
まあ、確かにルリは、明るくて僕の好みの小柄美人だね。
いや、そんなことよりもと。僕は、アルフさんを見て挨拶する。
「あ、あのハヤテと言います。武器の合成とかしてほしいんですけど」
「合格だ」
「はい?合格?」
「俺の不意打ちをあっさりと受け止めたからな。
俺は強い奴と強い武器が好きだ。後、やかましい女は苦手だ」
ルリをちらりと見て言う。ルリが、あかんべーをしてる。子供か。
「……ほう。レア武器に鎧か。いいな。そそるなぁ」
な、なんだか、鼻息が荒いんだけど?
「しかも、素材はワイバーンとはな。これなら、魔王も一捻りだな」
「魔王?」
「なんだ?知らんのか。最近の若者は……」
赤毛の髪をがしがしかいてしかめ面をする。
「大昔、この世界を手に入れようとしてたおかしな奴だ。世界フェチって言うのか?
ま、ホントにいるかどうかは知らんがな」
「なんだ」
「レベルが10000越えとか言う噂だからな。倒されたにしても、倒した人間のレベルが10000はあるってこったろ?無理無理。レベル100行くのだって大変なのにさ」
「…………」
レベル500とは言えないよね。でも、魔王。魔族の王様か。
まあ、そんなものの相手は、しないようにしたいものだ。
僕は、ただの転生者。勇者ではないから。
「……んで?合成すんのか?二人でお揃いにすんのか?」
「やだ~、アルフさんたら!」
「こ、これから、ワイバーンの巣に行くので僕のだけをお願いします」
「ぶー、ぶー!」
「よし、任せときな!あの巣を殲滅させてやるぜ!」
なんか、物騒だなこの人。大丈夫かな。
「後、これどうにかなります?」
それは、あのひょっとこのお面。
「ははは。面白い表情だな?この国のお面じゃないな。
ルリのスッピンみたいじゃねーか!」
「私のスッピン見たことあるのか、こら!」
「まあ、頑丈にして割れなくしてやるよ」
ルリの文句を無視して、引き受けてくれる。
「はあ。頼みます」
やっぱり、ひょっとこのお面は珍しいのだろう。
「まあ、俺にかかれば明日にでも出来るぜ。
ついでに防具も合成してやっから、脱ぎな」
「脱いじゃえ、脱いじゃえ!そして、私の家に泊まっちゃえ」
ルリ、悪のりしすぎ。まあ、防具をわたしたら、空から降る魔物は大丈夫かな。
「予備の弓矢なら貸してやるよ」
店の奥から持ってきたのは、珍しい装飾の弓矢。
なんか、日本っぽい弓矢に似ているな。
「こいつは、東方之国の旅人が持ってたもんだ。
金がなくてひもじい思いをしていたんだがよ。しばらく家に泊めてやったらお礼に置いていった」
「貸してもらっていいんですか?」
「ああ、丸腰ってのも困るだろうしな」
「ありがとうございます」
それは、弓道部だった頃の自分を思い出すかのようだった。
日本のデザインっぽいからだろうけれど。
試しに矢をつがえて構えてみる。うん、悪くない。使いやすいかもな。
「わあ~、かっこいい!」
「あ、ありがとう」
美人に褒められると嬉しいと言うか照れくさい。
前世では、厳しくされることはあっても褒められたりとか、共感されたりとか少なかった。
人間なんて自分には甘いんだから、もっと褒めればいいのになと思うこともある。決して甘やかすとかではなくて。
「これからどうします?私とデートしますか?」
「はは」
「あ~、軽く笑いましたね?私なりに本気でアピってるんですよ」
「いや、嬉しいことは嬉しいけど。僕は今までモテなかったから戸惑っちゃうんだ」
「迷うな。ためらうな。私を黙って抱きしめなさい」
にこやかにそんなことを言う。
「な、なんか、男前の台詞だね」
でも、モテ期のスキルがあるから、君の気持ちはホントなのかと考えてしまうんだ。
「えへん。人生は一度なんですから、無理でもアタックしなきゃ!」
二度目の人生なんて伝えたら、悪いかな?
取り敢えず、この弓矢の試し撃ちでもしてみるか。
つづく
与一の弓矢―東方之国の有名な侍が使用した弓矢。命中率が大幅にアップする。