鬼斬り空洞.7
鬼は静かに消えていった。後に残るは静寂ばかり。
いや、その静寂を切り裂くようにリアが抱きついて来る。
「おっと!大丈夫だったかい、リア?」
「うん!お兄ちゃんも無事でよかった!」
リアは、にこにこしているのでそれにつられてしまう。
「ハヤテくぅ~ん!無事で良かったよ~!」
プラチナ分かったから、顔に抱きつかないで。
「私も抱きついていいかい?」
コハクが、にじりよってくる。
「ふぅ。みんな目的を忘れてないかい?」
「そうです。コハクさんの言う通りですよ」
なんとか話しを逸らす。僕たちの目的は鬼退治ではなくて、あくまでマンドラコラの捕獲なのだ。
あれが、どこかの街で叫んだりしたらみんなが危ない。しかし、部屋を見回すも誰もいない。
さて。どうしたものだろうか。
「もえぇぇぇぇ~」
あ。いた。奥へ続く道の先にこっそりと顔を覗かせている。
「もぇ~」
「もぇぇぇ~」
萌え?いや、違うか。もう逃げる気はないみたいだ。
でも、どうしよう。言葉が通じないしな。
「えと。私たちあなたを迎えに来たんだけど」
「もえ?もえもえ?」
「うん、そう。君たちはどうしてここに逃げたのかな?」
「もええ?もえええ!」
なにやら訴えるとリアに抱きついてるけど、言葉が分かるのかな。
「リアちゃん、言葉分かるの?」
「うん。なんとなくだけど退治しなくてもいい感じだよ」
「もえええ!」
確かに、リアに懐いてるように見える。
「それで、面妖な方々はなんておっしゃっているのでしょうか?」
「うん。自分が凄く注目されていてびっくりして、逃げ出しちゃったみたい」
リアが、マンドラコラの葉っぱのとこを撫でると嬉しそうにしている。
関係ないけど、大根の葉っぱって、ごま油と醤油で炒めると美味しいんだよな。
その気配を感じ取ったのか、ビクッとしている。
「もえもええ~」
「なんだい?私の胸の谷間で、トランポリンしたいって?豪気な奴だね~」
「いや、そんなこと言ってないでしょ~?
さあ、奥まで探索して帰ろっか?」
プラチナを先頭に進んでいくと社があり、その前に魔方陣みたいのが二つある。
「こいつはなんだい?」
「おっと。地上まで帰れる魔方陣みたいだね~」
プラチナが教えてくれる。これならまた、歩いて入り口まで戻らなくていいな。
「でも、もうひとつありますね」
社の前で礼をした後、ミコが言う。
そして、社が光り目の前に宝箱が、いくつか出てくる。
「おや、めっけもんだね~」
「気をつけて開けて下さいよ。なにが出てくるか……」
コハクは、僕の言葉が終わるの待たずに開ける。
無用心だなと思いながらも確認すると、いくつかの回復アイテムと兜?
それと、まが玉だった。なんだこれ?
(それは、そこの巫女が持ってるといい)
「……あ。灰色鬼さんがそう言ってる」
「灰色鬼?」
「うん。この刀のことだよ。さっき倒した鬼を倒すのに力を貸してって頼んで来たの」
リアの説明をコハクとプラチナが補足する。
なるほど。だから、和風っぽい魔物ばかり出て来たのか。
「この兜は、私のみたい」
兜と言うか、ゲームの勇者が装備するみたいなハチマキみたいなやつ。
それは、リアに吸い付くように装備される。
鑑定すると、まが玉は神器とある。
兜は、ブレイブヘルムとある。
この前の湖のダンジョンで手に入れた盾と一緒だ。
リアの装備が揃う度に、運命が近づいているようなそんな気がする。
「どうしたの、ハヤテくん?」
「もえ?」
マンドラコラたちは、もうプラチナにも懐いているし、僕の足元に寄りかかって寝ている。
叫ばないなら、連れ帰ってもいいだろう。
「もう一つの魔方陣はなんなんだい?」
「う~ん。異国に繋がってる感じ?」
プラチナの言葉に、嫌なフラグが立ってやしないかと不安になる。
まあ、こちらからつついて見ることはないよな。
「取りあえず、地上まで戻りませんか?
みなさん、心配なさってますから」
「そだね~。ミコちゃんの言う通りだよ」
「汗かいたから、温泉に入りたいね~。
ハヤテも一緒にどうだい?」
コハクは、僕の腕を引っ張り魔方陣へ向かう。
反対側を、リアが引っ張りますけど?
「お兄ちゃんとは、私が入るんだから!」
「では、みなさんで入りましょう」
「もえ、もえ~!」
「ミコまで、なにを言うかな!?入らないからね!?」
「ホントにあんたの頭とあそこは固いね~」
コハク、下ネタはいいから!
わいわい言いながら僕たちは、魔方陣に乗るとその場からかき消えたのだった。
つづく




