どこかの土地で.7
困った。夜になって案内された部屋で寝ていると、誰かがそっと入って来た。
最初は、魔物かと思ったけど違う。
「ハヤテさま。もう寝てしまわれました?」
「え?サリー?ど、どうしたんですか、こんな夜中に?」
いつも、プラチナとリアと三人で寝ているとは言え、大人の女性と二人きりなんてね。
「失礼しますね」
「え?」
断る暇もなく僕の布団に入り込んで来た。
これは、その、そう言うことだよね。
そりゃ、僕も大人ですから。分かりますけど。
僕の背中にサリーの吐息がかかり、ドキッとする。
「……昼間は助けていただいてありがとうございます」
「あ、いえ。あの、こんなとこに来たら、だ、駄目ですよ~」
出来るだけ明るいノリで、話して帰ってもらおう。
そうです。僕はヘタレです。でも、誰とでもしたい訳でもない。
身体は勝手に、反応するけども。
「……あの。私じゃ駄目ですか?お礼に私のことを抱いて下さい」
きっとそれを言うことは、凄く勇気のいることなんだろうなとも思う。
「………その、ごめんなさい。僕にはたぶん、好きな人がいて。だからその、そう言うことは出来ないかな?その気持ちは凄く嬉しいんだけど」
「…………」
しばらく沈黙が続く。傷つけたよね。そうか。モテる人ってそれだけ人を傷つけてるんだよな。
まさか、自分かそんな気持ちが分かるとは思わなかった。ほぼ、ぼっちの前世とは大違いだな。
「……良かった」
「え?」
「ハヤテさまのことは、好感がもてますけど、いきなりその、身体の関係を持つのはやっぱり違うと思いました」
思わず、サリーの方を見ると、ホッとしたように微笑んでいる。
「えと?ならどうして?」
「村長が、急かすんです」
「あ~」
なんとなく納得してしまった。女性をあてがって、あわよくばこのままこの村にいてもらおう的なことか。
「断れなかってんですよね?」
「はい。村長の命令で、周りのみんなに仲間外れにされます」
「……それはなんともね。じゃあ、このまま帰っちゃまずいですね」
「え?」
少し強ばるので、慌てて手を振る。
「ああ。このままここにいて下さい」
「いいんですか?」
「はい。あ、心配しなくても手は出しません」
「ありがとうございます。でも、あなたなら手を出してもいいんですよ?」
「え?」
「冗談です。でも、この村にいるのが少し嫌になりました」
「……そうですか」
結局、サリーが眠りにつくまで会話をしていた。
これはこれで、ドキドキして少し寝不足だよ。あの村長め。髭が全部抜ければいいのに。
次の日の朝。起きたらサリーはもう部屋にいなかった。
帰り支度をしていると、村長が何事もなくしれっとしてやってくる。
「おはようございます」
「おや。もうお発ちですか?しばらくゆっくりなさっても良いのですぞ?えひゃひゃ」
なに言ってんだ、このエロジジイと思いつつ笑顔で対応する。
「まあ、僕の帰りを待ってる人もいるんで」
「……そうですか。また近くに寄る際にはお立ち寄り下さい」
「はい。ありがとうございます」
村長が帰ると、サリーが朝食が出来たと呼びに来る。
「あれ?おじさんは?」
「あ、はい。朝から山に狩りをしに」
「そうですか」
「挨拶は出来ないけど、よろしくとのことです」
「そうですか」
この村の山菜だろうか。美味しい。仕事帰りの立ち食い蕎麦をおもいだした。山菜蕎麦が好きだ。
ぼっちだった頃の密かな楽しみの立ち食い蕎麦巡りだ。懐かしい。
しばらくは、黙々と食事は続く。サリーは、食べる手を止めて僕を見る。
「あ、あの。私も連れて行ってもらえませんか?」
「え?でも……」
「私は、この村長に逆らえない感じが嫌でした。
いつか、村を出ようかと思っていました」
「でも、家の村も外は地獄だよ?噂で知ってると思うけど」
取り敢えず、良く考えてもらわないとね。デメリット部分をちゃんと話す。
「はい。覚悟します。あなたがいる村なら……」
そう言って、頬を染める。こ、これが、スキル『モテ期の効果』か。
ただ、こう言うとこ真面目な僕が持っていても、宝の持ち腐れだよね。
むしろ、欲望との葛藤で苦しむだけなんですけど!?
「でも僕には……」
プラチナの顔が浮かぶ。多分好きなのだろうと思う。いつの間にかって感じだ。
「それはいいんです。私が勝手に好きになって勝手について行くんです!」
近い距離でそう言われてはなにも言い返せない。
それにと、振り返り伝えたのは、一夫多妻は普通にあるとこはあると言う。
それにしたって、前世はそう言う制度は無かったので抵抗はある。二番目でいいのとか言う芸能人が面白可笑しくテレビで話していたのを見た覚えがあるけど。
「………まあ、ともかく。君のお父さんが許してくれたらいいんじゃないかな?」
「はい。分かりました」
サリーは、嬉しそうに返事をするけど、内心ホッとしていた。
可愛い一人娘を、そんな魔境に行かせるなんてことはしないだろう。
つづく




