どこかの土地で.2
「ほらさ!ほらさっさー!いいぞ、お前たち!レコード更新だぁぁぁぁぁぁ!」
「ヒヒィィィィィィィン!」
マネルガさんは、変人でした。この人に手綱は握らせては行けない。そう思った。
土煙を上げて、スピードを緩めることなく、進む。足場悪いので揺れまくる。
競馬中継でたまたま見た馬の速さってこれくらいなのだろうか?
かなりの速さなので、冷たい空気が、僕の身体を冷やす。秋から冬に変わりつつある冷気は、冷たさを運んでくる。
しかし、そのお陰か、魔物が襲って来ても、馬の体当たりで蹴散らし、しかも、粗っぽい操作なのに馬から転げ落ちることはないから。
(いや、これ、ごえいらないでしょ!?)
内心で、叫ぶことしか出来ない。
「馬の尻と女の尻は、叩きがいがあるのぅ!」
「ええ!?今、なにか言いましたぁ!?」
唸る風によって、マネルガさんの言葉は聴こえなかった。
ともかく、徒歩でとぼとぼ歩くよりは早くたどり着けるのだろう。
夜は、マネルガさんの交渉の仕方を教わり(一方的に教えられた)中々早く寝てくれなかった。
なんだか知らないけれど少しは、気に入られたようだ。
婿養子に入らないかとしつこかった。
特に決めた人はいないけれど、なんとなくプラチナの姿が、村のみんなが思い浮かぶ。
いや、ハーレムだからじゃなくて。あの村が好きだから。
いや、でも、可愛い子に好かれているのもあるかもしれない。
そりゃあ、男だからな。それは仕方ない。
「お、見えて決めしたよ。あーくそ!こいつら蹴散らしてー!」
遠くを歩いてる人たちを見て言ってないよね!?
「マネルガさん!?そんなことしたら駄目ですって!」
慌てる僕を見て、楽しげに笑う。
「ははは!分かってますよ。冗談です!」
快活に笑う。目は笑ってないような気がする。
そりゃあ、配下の者が同行しない訳だな。
街道にはぽつぽつと、旅人や行商人が増えてきているので、目と鼻の先にあるオイルトテスで休んでから、また王都を目指すのだろう。
門番の前の行列に並ぶことしばし。
「やっと入れた」
門番にギルドカードを提示して中へ入る。
中々の大きくて、栄えた街だな。渡り鳥みたいに、旅人たちが骨休めをする場所か。
「ここまでありがとうございます。これはお礼です」
馬車を預ける場所で渡されたのは、結構なズッシリとした袋。銀貨多い。銅貨も混じってる。
「い、いやいやいや!いりませんてこんなに!」
法外だよ。どこのブラック企業だよ!僕は、善良な冒険者だよ。
「しかし、私のような者に付き合ってくださった。
誰かを隣に乗せて走れるなど嬉しくて喜びまくりますよ!」
うきうきしてる。距離が近いので、落ち着いてくたさい。周りも何事かと見てるよ。
押し問答は目立つので、報酬は受け取って置くことにした。
マネルガさんに、冒険者ギルドまで案内してもらい別れる。
「……大きいな」
トナの村の寂れた感はない。いや、失礼か。扉を押し開けて中へ入ると、冒険者は何人かいたものの、みんななにかピリピリしている。
「……なんだあんた?あまり見ない顔だな?」
モヒカンの冒険者が油断なく見てくる。絡んで来ないで欲しい。
「ええ、まあ。ここは初めてで」
「そうか。あんた強いんだろ?どうだい、俺と一勝負?」
「いや~!ちょっとそれは……」
意味のないバトルはしたくないから、どう断ろうか迷っていると、ギルド職員が間に入ってきた。
「コッセルさん、いちいち絡まないで下さい」
「……ちっ、悪かったな」
意外と素直?ともかく助かったな。僕は、そのギルド職員に礼を言う。
「ありがとうございます」
ぺこぺこ謝ると、くすりと笑われた。参ったな。
大人の美人と言うか。一流企業の秘書みたいな感じか。ともかく、仕事が出来そう。
「いえいえ。今、みんなピリピリしてるもので……私はクインです。あなたは、こちらには?」
なにやら、地下にダンジョンが出現して、攻略が難しいと言う。
それで、街に不安が広がり不安になってイラついていると言う。
「あ、僕はハヤテです。よろしく。実はトナの村に帰りたいんですけど、どうにかなりませんか?」
「……え。トナの村ですか?」
何故か、思いっきりびっくりされた。まあ、そうかもね。
周りの冒険者たちも、ざわついている。
「……なにかまずいですか?」
「いえ、その、生存者がいたんですね」
酷い言われようだ。でも、仕方ないかも知れない。
フォルティシオ領は、その領地全体がカーストアップで魔物が強くなってしまったから、AランクかSランクの冒険者でも油断出来ないらしいのだ。
だから、周りの領地からは、絶望の魔境と呼ばれている。
「…ならば、奥でお話しをお伺いしますのでのこちらへ」
動揺を押し隠し、最高の笑顔で僕を案内する。
応接室と言っても簡素なもので、シンプルだ。
座って待つことしばし、一人の男を伴って現れた。
耳が特徴的で長いのは、エルフだからか。トナの村にはエルフはいなかっから珍しいな。
つづく
この後マキとすれ違うよ。あくまですれ違うだけだけどー




