異世界.2
まあ、ゆっくりです。すみません
プラチナの速さに追いつけない。僕は、レベル500だよね?
それなのに僕より速いなんて。待てよ?ここから狙い射てばいいのか?
立ち止まって矢をつがえて構える。部活の時を思い出すな。集中!
スキルの効果か、視界がクリアになる。見えた。盗賊が馬車を襲っている?護衛の兵士?いや、冒険者らしき人が襲われているけど、数が多い。それでもこの矢ならば!剣を振るおうとした盗賊の肩に一矢。そして続けて女性にのし掛かろうとしているクズに二矢め。ただ冷静に放って行く。冒険者たちは何事かと驚いているがそこで、ハヤテが到着して、剣を振るうのが見える。後は任せて、馬車に近づこうとした盗賊を射つ。足を狙って。
戦いはすぐに終了した。僕がたどり着く頃には、盗賊たちは縛られている。プラチナが気づいて手を振ってくる。
「ハヤテくん、ハヤテくん。捕らえたよ」
随分と気さくな喋り方だ。
「あ、うん」
見ると、冒険者の方々も平気みたいだ。良かった。その冒険者たちもこちらにやってきて礼を言う。
「さっきの矢は君か?凄い腕前だな。」
気さくな剣士の人は、ゲインさん。
「ありがとう!助かっちゃった!」
長い棒みたいのを持ってるのがマイリーさん。
「ふん、あれくらい俺だって出来たぜ!」
なにか意地を張ってるのはグラバーさん。戦斧の使い手かな。背中に重たいの背負ってるし。映画とかの小道具ではないんだよな。当たり前だけど。
そして、豪華そうな馬車の扉が開き、立派な服装と言うか。あれが貴族様という奴か。会ったことはないものの良いイメージはない。
住民から搾取して、良い女がいれば囲ってそうな気がする。貧乏な人間のコンプレックスだけどね。
中から出て来たのは、スラッとした一人のおじさん。そして、こちらに向かって歩いてくる。
「君かい、助けてくれたのは?」
「は、はい」
緊張してどうする?僕の方が圧倒的に強いんだ。
しかし、貴族の気品と言うか風格と言うか。そう言ったものに飲まれてしまうのは仕方ないのかもしれない。どうしたら良いのか。僕が考えていると手を差し出される。ん?お手?違うか。握手だよね。貴族を前にして緊張しているようだ。
「ども」
しっかり握ると、静かに微笑み隣にいる執事に話しかける。
「セバス。あれを…」
「はい。お待ちください」
セバスと呼ばれた執事は、優雅に一礼すると馬車の中へ入っていく。
そうか。どこの世界も執事はセバスチャンなのかも。
どうでも良いことを考えていると、セバスさんは小さなお面を持ってきた。なにあれ?
「これは、東方の島国より手に入れた一品です。よろしければどうぞ」
「……はあ。ありがとうございます」
えと。ひょっとこのお面なんですけど。それを被ってプラチナを見たら、吹き出すのを我慢している。え?なにこれ?これがお礼?
「プラチナ、君のことは僕が守る」
「ぷっ!」
お面を着けてかっこつけてみた。
だよね。笑っちゃいよね。ひょっとこのお面はいいんだけど、これ着けてバトルとかしたら緊張感もないし。カッコつけても決まらないよ。
ひょっとこのお面―東方の国での一品。珍しくて手に入らない。
気になるあの子に急接近するには、このお面しかない!?
「冗談です。こちらです」
セバス。チャーミングな人め。渡された皮袋。ジャリジャリした音がするので中身はお金かな。助かるけど。断ってから中を開けてみたら金貨が何枚も入っている。
「いや、あのこんなにもらえないんですけど」
貧乏人には、眩しすぎる。
「まあ、そう言わずに」
「いや、でも」
「それで、そこの彼女にでも素敵なアクセサリーでも買いなさい。あんなにきれいなのになにもつけてないなんてもったいない」
「あら。きれいだなんてお上手ですね」
「はは。すまないね。私は急いでいるのでこれで失礼させてもらうよ」
馬車に乗り込み、セバスは一礼して冒険者たちも馬に乗って行ってしまう。あの、このお金。そして、名前も名乗らないで行ってしまった。
まあ、男にはあまり興味がないからいいか。小さい頃から、下に見られて来たからな。同性は苦手なんだ。
「……どうしようか、このお金」
「まあ、いいじゃない。きれいな私になにかアクセサリーをプレゼントしてね」
この天使、褒め言葉に弱いのかな。まあ、それはそれとしてゆっくり街に行きますか。モテない男としては、美女と旅出来るなんて中々ないからな。
ちなみに金貨は、1000枚あったよ。計算出来ないけど、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白銀貨、さらにどーん!そんな風に続いてると説明書に書いてあった。
時折、遠くに見える魔物を射抜いて倒し、素材をGET。空に飛んでいる自由なグリフォンを射抜いて素材をGETしながら、夜は野宿。
近くの林から木の枝を集めては、プラチナの火の魔法で、火をつける。
アイテム袋から取り出した魔物の肉を串に刺してを焼いている。魔物の肉か………大丈夫か。
つづく