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悪魔はマシリに入る

じいさんの思惑通り、俺は盗賊たちが逃げた瞬間からサーチをかけて盗賊たちがどこに逃げていっているのか把握していた。



「方向で言うと、ここから西に1キロのところを逃げています。動きがゆっくりになってますから、周りを警戒しながら進んでるようですので、その辺りにアジトがあるかもしれませんね。」

俺の言葉にじいさんはまたニヤリと笑った。

「町に行くついでに盗賊退治と行くか。マスティフ、行くぞ!」

「ええ~!じいさん、俺も行くのかよ~!?」

思いっきり面倒くさげなマスティフはブーブー言っていた。

でも大剣を準備しだしたので口でああ言いつつも従うようだ。


と、俺はなんとなくちょっと範囲を広げてサーチにかけてみると、思わぬ反応があった。

「・・・じいさん、レフィも同行したほうがいいと思います。」

じいさん・マスティフがちょっと驚いた反応をして、突然勧められたレフィはえっ!?という顔で俺を見てきた。

「どうしたんじゃ?ユウジン。」

「アジトと思われる場所を発見したのですが、若い女性数人の反応があります。捕まってるような感じですので、女性の人手があったほうがいいと思いまして。」

「なんと!?それは大変じゃ。レフィ、すまんがついてきてくれ。」

レフィは厳しい顔をして頷いた。

「ユウジンはアシュアと馬車を守っておってくれんか?保護をしたらここに連れて来るでの。」

「わかりました。待ってます。」


俺が細かくアジトの場所を教えると、3人はあっという間に森林の中に消えていった。


「・・・あれ?ユウジンしかいない?」

馬車からひょっこり顔を出したアシュアはそう声をかけてきた。

死体を見るのが嫌だったようで、今まで馬車に隠れていたのだが、急に静かになったので様子を見に出てきたようだ。

「この森林の奥に盗賊のアジトがあるようで、3人で突撃しに行きました。」

俺はサーチで若い女性の反応があったことも話した。

「じゃあ、ここに女の子たちを連れて来るのね?大変な目にあって体力ないだろうから、馬車に乗せられる人数だったら乗せてあげましょう。お腹とか空いてるかしら?」

「安心してもらうためにも、なにか食べるものがあったほうがいいかもしれませんね。食が細くなっているかもしれませんし、スープを作りましょうか。」


それから俺はアイテムから鍋と野菜を出して、アシュアとみじん切りにして水魔法で煮て味を整えてじっくりコトコト煮ながら帰ってくるのを待ち、1時間ほどしてじいさんたちは帰ってきた。


アジトは洞窟だったそうで、逃げた盗賊数人しかいなくて難なく倒せたみたいで、洞窟の奥で若い女性4人を保護したそうだ。

女性4人はいずれもマシリの町などで拐われてきたそうで、売り飛ばされる予定だったため乱暴はされていなかったがひどく怯えていて、レフィが落ち着かせたためにここまでやっと連れてこれたようだ。

それでも4人は固まってガクガク震えて怯えていた。


「怖い思いをして、大変だったわね。もう大丈夫!馬車に乗って、あったかいスープも用意したわ。」

アシュアの明るい声と笑顔に少しほっとした女性たちは馬車に乗り、スープを渡すと口々に飲んでくれた。

それで安心したのか泣き出す女性もいて、アシュアが慰めていた。


「これからマシリの町に向かうからの。みなは馬車に乗っておるがよい。」

「あ、ありがとうございます・・・。」

「アシュアとレフィも一緒に乗ってあげて下さい。クロ助、あなたも乗ってあげて下さい。」

「ミャー」

いいよっという感じでクロ助は鳴くと俺の肩からピョンと馬車に飛び乗り、女性たちに近づいて撫でてと鳴いた。

女性たちはクロ助のかわいさに途端に笑顔になって次々と撫でていた。

それでますます安心したようで、アシュアたちとおしゃべりをし始めた。


「ほっほっ、クロスケと2人が付いておれば大丈夫そうじゃのう。マスティフ・ユウジン、わしがゆっくりの速度で御者をするでの、おぬしらは後方の護衛を頼むぞ。」

「わかりました。」

「おう!」


それからゆっくり馬車は進み、1時間ほどかけて道を進むと前方に町が見えてきた。

「あれがマシリの町のようですね。」

「町はどうなってんだろうな。内紛やら治安が悪いとか聞いたからなんか心配なんだけど。」

だが意外に町を囲む塀は頑丈そうだし、出入り口には警備兵がちゃんといた。


「マ、マリルクロウ・ブラック!?」

警備兵は目を見開いて驚いていた。

「ちょっと盗賊のアジトに攻め行ったら拐われていた女性たちを保護してのう。この馬車の中におるんじゃが、マシリの町のもんのようだから引き渡してあげたいんじゃが。」

「そ、それはありがとうございます!確認させて頂きます!!」

警備兵は慌てて馬車の中を確認した。

騒ぎを聞き付けて数人の警備兵もやって来て、警備兵たちも事情を聞いて馬車を確認していた。


「か、確認しました!確かにマシリの町の者のようでして、顔見知りの女性がいるので間違いないと思われます。こちらで保護したいと思います。」

女性たちは馬車を降りて次々とこちらにお礼を言って頭を下げてきて、警備兵に伴われて詰所に入っていった。


「「本当にありがとうございました!」」

警備兵たちはお礼を言って頭を下げてきた。

「いや~、2時間ほど前に冒険者の親子が「盗賊に襲われているところを"黒の一族"のマリルクロウ・ブラックに助けてもらった」と言っていたのを聞いたのですが、本当だったんですね。変な夢でも見たのかと思っていたんですよ。ハハハ。」

「おお、その親子なら助けたぞ。無事にマシリの町に着いたようでよかったのう。」

「その親子、どうやら町中にマリルクロウ様に助けられたと自慢して回ってるようで、今マリルクロウ様の話題で持ちきりになってますよ。」


え、嫌な予感がするんだが。



俺の嫌な予感は的中した。

町の中に入った途端に噂を聞いていたっぽい人々が次々とじいさんに群がってきて、じいさんは握手攻めにあった。

じいさんはいつものニコニコ笑顔で応対し、ついでにと孫のマスティフも紹介したのでマスティフまでも握手攻めにあって、俺とアシュアとレフィは巻き込まれたくなかったので離れたところで傍観しながら町の様子などを見ていた。


マシリの町はトリズデンのフラヴィーナの町ほどの大きさではあるが、全体的にフラヴィーナより寂れている感じで、道を行き交う人も比較的少なく商店もあるが店頭に商品が並んでなくて暗い印象だった。


しばらくしてやっと町の人たちは散っていって、じいさんとマスティフは解放された。

「うーん、なんとなく暗い感じがしたな。みんな笑顔なんだけど、目が沈んでるというか。」

「やはり内紛の影響があるのかもしれんのう。」


俺たちはとりあえず馬車も停められる宿屋を探して、ほどなくして宿屋は見つかった。

"白梟の羽ばたき"亭という宿屋で、外壁がその名の通り白というきれいな建物だった。

個室1部屋に相部屋2部屋を借りて、じいさん・マスティフとアシュア・レフィとが相部屋になり、俺は個室となった。

因みに宿屋の店主は60代の夫婦で、じいさんにガチガチに緊張していた。


部屋に荷物を置いたりしていると夕方となり、食堂で集合してそれぞれ注文して夕食を食べた。


「ちょっとこれから夜の町にくり出してみるかのう。」

そう言ってじいさんは俺とマスティフを連れて飲みに出掛けようと行ってきた。

「なんだよじいさん、酒飲みたくなったのか?」

「ほっほっほっ、この国の酒は辛口でうまいんじゃ。年寄りに付き合ってくれ。」


じいさんはにこやかにそう言ってきたが、恐らくじいさんは酒が目的ではないな。


「・・・いいですねえ、じいさん。俺も最近まったく飲んでないのでお付き合いします。」

「なんだ、ユウジンも酒好きなのか。」

アホは思いっきり勘違いしてきているが、そういうことにして話を進めた。

「アシュアとレフィはどうしますか?」

「私たちはパスしとくわ。私お酒飲めないし。」

「・・・申し訳ありません。」

どうやらアシュアもレフィも勘違いしているようだ。



こうして俺はじいさんとマスティフと夜の町にくり出した。



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