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悪魔は夜の町にくり出す

ちょっと短めです。

マシリの町の夜は、昼間より更に閑散としていた。



人通りもほとんどないようで、すれ違う人も足早に去っていく者が多かった。


「宿屋の店主にオススメの飲み屋を聞きましたが、そこも寂しいことになってそうですね。」

宿屋を出る前に俺は店主にオススメの飲み屋を聞いたのだが、店主はちょっと躊躇しながらも教えてくれた。

というのも、治安の悪化がこの町にも進んで町中であっても夜道で襲われることがあるようになったそうだ。

それにより夜に出歩く人が減ったそうで、飲み屋も数件潰れたらしい。


「これでは情報収集(・・・・)にならないかもしれませんね、じいさん。」

じいさんは俺を見てニヤリと笑った。

「やはりユウジンは気付いておったか。」

「え?飲みに行くんじゃないのか?」

「まったくあなたは・・・。あの宿屋にもお酒が置いてあったのにわざわざ飲み屋に出掛けようと言ってきた時点で疑問に持ちなさい。飲み屋の酔っぱらいほど口が軽くて情報を引き出せるカモはいないでしょう?」

「カモってすげえ言いぐさだなおい。でも、なるほど。それでじいさんは俺らを誘ってきたのか。2人とも頭いいなあ!」

アホは呑気にそう言ってきた。


「じいさん・・・、鍛える前に勉強させるべきだと思います。」

「うむ、わしもそう思う。」

「あえ?なんの話?」



そうしてオススメの飲み屋に着くと、それほど広くない店の半分ほどは客で埋まっていた。

冒険者と思われる鎧を着たグループに大工と思われる屈強な体にタンクトップ姿のグループや、人手でカウンター席に座っているおじさんなど様々な客がいて少しガヤガヤしていたが、飲み潰れている者は少なかった。

今回はあくまでも情報収集のためということで、じいさんは俺が教えた隠蔽魔法で顔を隠蔽し、マスティフも一応俺が顔に隠蔽魔法をかけて、目立つクロ助はシャドウダイブで影の中に潜んでもらった。


俺たちは適当な席に座って適当に軽めの酒とおつまみを注文してにこやかに話しているフリをしながらも周囲の会話に聞き耳を立てた。



どうやら内紛は国の各地で起こっているようで、現在の王様に第三王子が反旗を翻したというのは本当のようで、第三王子の支持者が暴徒化したのをきっかけに兵士たちが鎮圧にのりだし、ひどいものでは支持者がいると噂があるだけで建物を爆破しているらしい。

現在の王様は好戦的なところがあったので、元々軍事費の予算を増やして他国に侵行しようとしていたが、それを反対した第三王子と対立し、王様は第三王子に怒って王位継承権まで剥奪しようとしたことが発端となり、第三王子が反旗を翻したと言われているそうだ。

現在、第三王子は行方をくらませているそうで、兵士たちは支持者の鎮圧と行方を探すので手一杯なようだ。

そのため、各地で兵士や警備兵の人手不足となり治安の悪化や魔物の増加が起こっているというわけだ。


「もうちょっと、突っ込んだ情報がほしいですね。」

「そうじゃのう。ちょっと話してみるかのう。」

そう言うとじいさんはわざと隣の席の冒険者グループにぶつかり、そこから何気ない会話をしていった。

冒険者グループ男4人はほろ酔いでそのうち2人はもう潰れて寝ていた。


「そうかそうか。この町の冒険者か。それは大変じゃのう。」

そうニコニコしながらじいさんは冒険者のグラスに焼酎をドバドバ入れていた。

「そうなんだよ~。依頼もあっても報酬が安くてやってもやっても貯金すらできねえんだからよ~。」

「ホントそうだよー、これだったら国出た方がましだよー。」

ほろ酔いの冒険者はそう言って並々とつがれたグラスをぐいっと飲んだ。

「俺たち庶民からしたら、どっちが善か悪かなんてわかんねえんだから内紛が終わってくれたらどうでもいいんだよ~。」

「でもどうせならー、変な魔法を持ってない第三王子が勝ってくれたらいいかなー。」

「変な魔法を持ってない?どんな魔法じゃ?」

「なんだっけー?使役魔法だっけ?ヴェネリーグの王族しか使えねえ魔法とかいう魔法だよー。それ、第三王子は持ってないらしいぜー。」

ふうん、王族で第三王子だけ使役魔法を使えないか。

それが本当なら、もしかしたらそれも反旗の要因になったかもしれないな。


「ふへへ~。むにゃむにゃ・・・。」

「ぐー。」

冒険者グループは眠ってしまい、これ以上は情報を引き出せそうになかったので飲み屋を出ることにした。


「とりあえず、明日から町に出て情報収集しますか?」

「そうじゃのう。」

「うーん、なんか酔ってきた。」

えっ?軽めのを1杯飲んだだけで酔ったのか?

よく見たらマスティフは顔が真っ赤になっていた。

「おっと、忘れておった。こやつゲコじゃった。」

途端にマスティフはフラフラになって道の真ん中でバタリと倒れた。

「!?ちょっとマスティフ。ここで寝られたら町の人たちに迷惑ですので起きて下さい。」

「うう~ん。」

「これこれマスティフ。まったく、軟弱なやつじゃのう。」




「ふへへっ!てめえら!金を出せ!」


と、こんな時に建物の陰から男たち数人が飛び出してきた。

いずれもボロボロの身なりで手には剣やこん棒を持っていてこちらにちらつかせてきた。

「ちょっと今取り込み中なんで静かにしてください。」

俺がそう言うと、男たちの足元の地中からロープが飛び出してひとりでに巻き付き、あっという間に男たち全員は口から下をロープでぐるぐる巻きになって地面に転がされた。

言わずもがな、俺の罠魔法の拘束魔法を無詠唱でやったものだ。

男たちは突然のことに茫然としていたが、すぐにモガモガ言いながら暴れて解こうとしたが、まったく解けなくて転がっていた。


「ほら、マスティフのせいで追い剥ぎに会いましたよ!起きて下さい。」

「うーん、むにゃむにゃ。」

「我が孫ながら情けないのう。ユウジン、わしが引きずって宿屋に連れていくわい。」

「しょうがないですね。そうしましょう。」


じいさんは片手でマスティフの片足を持つとズルズル引きずって宿屋に向かって歩きだした。


「あ、そうだ。」

俺はアイテムから紙とペンを取り出すと「俺たちは追い剥ぎです。」と書いてモガモガ暴れている男たちの1人の顔に張り付けてじいさんについて宿屋に向かった。




翌朝、マスティフがなぜか自分の全身が傷だらけだったと首を捻っていた。





内容が短めだったので余談を。


作者の思いつきの見切り発車で始めた小説なので、名前や地名はその場の頭に浮かんだワードやテレビを見ていて出てきた横文字とかをいじって名付けてます。

なのでヨーロッパ風なのにソレっぽくない名前もあったりでそのちぐはぐ感が気になる方もいるかもしれません。

「キリスト教がないのにクリストファーとかおかしい!」と名前に違和感を持つ方もいらっしゃると最近知りました。

作者はなるべく名前や地名が似ないこと・被らないことだけを気を付けているので、こういう世界のこういうもんだと思って頂けると幸いです。


因みに人名をつけるのによく苦戦するので「ヨーロッパ人名辞典」なるものを参考にしようとしたのですが、腰を抜かすほどの横文字にどうしても頭に入ってこず、結局脳みそを振り絞ってます。

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