鋼鉄少女王タイタンメイデン 第六話 パンドラの胎動 その5
リビングのソファーに腰掛けたキョーコが手に取ったテレビリモコンのスイッチを入れると、報道されているのはやはり昨夜の出来事であった。
画面に流れる映像は、
記者が撮ってきた不鮮明な写真を指し示しながら司会者とコメンテーターが訳知り顔でわめきたてる姿。
報道番組というにはあまりにもお粗末な番組に呆れたキョーコは、
リモコンを操作してチャンネルを変えていく。
だが結局のところ、どこの報道番組も不鮮明な写真と証言しか情報がなく、
当事者達からすれば的外れな推測を流すばかり。
そんな中、飛び込んで来た一つのニュースがキョーコの興味を引いた。
それは近々、国内外に向けての発表を兼ねて
『日本政府が設立を決めた「未知の存在に対する新組織」』の設立式を行う、という話題。
画面に表示されているその組織の名前に、キョーコは腕を組み、難しい顔をしながら呟く。
「特別科学武装保安警備隊……略したら『特科武保警隊』とかになるのかな?」
「あ、なんか一部政治家が組織名の、特に『武装』って文言に文句つけているらしく、
科学『装備』保安警備隊に変更になる可能性が高いみたいだよ」
リビングに入ってきた乙女が、濡れた髪をタオルで無造作に拭きながらキョーコの独り言に答える。
キョーコはテレビを見つめたまま再び呟く。
「ふ~ん。なら略して……科装保警隊?」
「かそうほー……ん?」
乙女は一瞬、その略称に何やら胸騒ぎを覚えたが、考えがまとまるその前に
奥のキッチンからティーセットを持ってやってきたキョーコの母コハルが、二人の前のテーブルにカップを置きながら言った。
「な~に?只野タケシくんの事?」
コハルの言葉に乙女は思う『なぜ今の話題が僕の話だと?』
だが乙女は、何故かそこには触れてはいけないような気がしたので
あえて問いただすことはしなかった。
「ちょ、なんでタケシの話になんのよ?」
乙女の考えを知ってか知らずか、キョーコが代わって母コハルに問うと
コハルは目を細めながら答える。
「ん~?いつもタケシくんの話してるから、なんとなく」
「いつも?」
コハルの言い回しに引っ掛かりを覚える乙女。
「ちょ~~~!?いいい、いつもなんていってない!!」
「フフフ、早く仲直り出来るといいわね」
顔を真っ赤にして取り繕うキョーコに微笑みかけたコハルが、そう言いながらリビングを後にする。
キョーコは勢いよく振り向くと顔を真っ赤にしながら乙女を指さし、念を押す。
「いつもなんて言ってないからね!!ホントだからね!!」
その時、玄関に来客を告げる呼び鈴の音が鳴り響いた。
「お客さん!私が出る!」
キョーコは呼吸を整えると、カップを一口煽り、場を誤魔化す様に小走りで玄関へと急いだ。
「仲直り…………仲直り?」
一人、リビングに残された乙女がコハルの発言を反芻しながら視線を泳がしていると、
壁に設置されたインターホンモニターに目が止まる。
何やら見知った人物が映るその映像を確認しようと乙女は立ち上がりモニターに近づく。
「あれ?」
あらためて確認した画面に映る人物の姿に乙女は声を上げた。
「ケイくん!?」
画面に映る光明院ケイは、まるで『カメラのレンズ越しに乙女の視線に気づいた』
とでもいうように、子供のような無邪気な笑顔で手を振っていた。




