同志
それからは周りに流されるまま過ぎていきました。
いい臭いのする侍女さんがどこからかやって来て私を連れて(連行して)お風呂に突っ込まれました。
侍女さん達を見てリアルメイドさんキタコレとか興奮しているうちに香油を塗られ、体を拭かれて服を着せられました。
多分この服高い。
あんまり洋服にこだわりがないからわからないけど絶対に高い。
というか、こんなにメルヘンなの似合わない。
なんでサイズがぴったりなのかは怖いから聞かないよ?
確かに大人っぽいには程遠い顔をしているとは思う。けれどこの服はちょっと…。
と心の中でぐだぐだ文句を言っていると、再び侍女さんにひとつの部屋に連れていかれました。
そのままドレッサーの前に座らされて、同年代だと思われる1人の侍女さんが私に挨拶してきました。
「フミカ様、私がフミカ様の専属となりました、リルと申します。何かございましたら私にお申し付けくださいませ」
そういって深々とお辞儀をしました。
「あっ、はい。お願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。では、髪を結わせていただきますね」
「あっ、はい」
よくわからないけど、されるがままになっときゃいいんでしょ?
返事がコミュ障っぽいのは気にしないで!!
リルさんは私の返事にニッコリと笑うと櫛で髪をとかし始めました。
そして、無言。……耐えられない。
「あの、リルさん」
「はい」
「リルさんはおいくつですか?」
私よりも大人っぽい印象のリルさん。
オリーブの髪を綺麗に後ろでまとめて、上品なクラシカルなメイド服を身に纏う彼女は私よりも年上に見えます。
「530歳です。もうすぐ531になります」
オウ、年上すぎ。てか、年上ってレベルじゃないよね。
え、美魔女?
「人間の年齢でいくと…そうですね、20歳くらいでしょうか」
「はたち!?」
なるほど、犬みたいなもんなんですね。
大学生に成り立ての私は早生まれなのでつい最近18になったばかりです。
これでやっと制限なく色々買えると思ってたのに。
この世界にもあるのかね?薄い本。
「フミカ様は18歳でしたね。ふふ、お若い」
いや、2歳しか変わらんっす。
笑顔もかわいいっす、リルさん。
「はい!あ、あの、できたらその様っていうのやめて貰えませんか?こそばゆくて」
「…いえ、でも、規則が…」
「二人のときだけでも!お願いします」
「…わかりました。フミカさん」
可愛い。
守りたくなる、可愛さ。
「それで、私はこのあと何をするのですか?」
「はい、王様と補佐官様とお食事です」
「パスで」
「ダメです」
即答に即答で返すリルさん。
ふっ、やりよる。
「……なんでですか、私はいいです。マナーとかできません!!」
「大丈夫ですよ。お二人ともその程度でお怒りになどなられません」
「ううっ、仕方ない。王様と補佐官でCP作って妄想するしか。美形と美形だから…王様はクールで俺様で…補佐官は…」
「ツンデレ受けですね」
……健気受け……………え?
一人言をぶつぶつと言っていると、私のではない声が混ざってきました。
ぱっと前を見ると唖然としている私の顔と、同じく唖然としているリルさんの顔が移っていました。
え?
「…え?」
「…え?」
二人で鏡のなかで唖然とします。
えっと、今の言葉を言ったのが彼女で、聞き間違いではなかったのなら。
一縷の願いも込めて訪ねてみます。
「…………リルさん」
「はい」
そう返事をしてくれたリルさんは何事もなかったかのように澄ました顔をしていますが、私の髪をとかす手は震えています。
「…補佐官さん、ツンデレなんですか」
「勘違いしないで下さい、あなたのためにやったわけではありません。を素で言う程度には」
「受けなんですか」
「王様が攻めの場合ですが。王様は俺様だと思っています。…いや、寡黙攻めですかね…」
と考え込み始めてしまったリルさんですが、ハッという顔で再び鏡の中で見つめあいます。
「同志、ですか?」
「…はい、おそらく…」
念のためリルさんに尋ねたところそんな曖昧な返事が返ってきました。
すると次の瞬間、リルさんの今まで少し固かった表情が崩れ、目に涙が浮かんできました。
「え、え!?なんで?!」
「うわぁぁん、会いたかったですぅうっ」
と泣きながら抱きついてきました。
いつの間にか髪は結い終わっていたようです。
困惑しつつも私に抱きついて泣いているリルさんを抱き締めました。
うふふ、あたってるよ???
女性のシンボルの大きさの違いに泣きたくなりました。