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章太郎コンプレックスコンプレックス

 「まあ、恋人らしいことはね、しょーたが高校出てからかなあ」

 最近の沈んだ表情とは一転して、楽しそうに深子は言った。

 「なんでだよ。もう恋人なんだろ」

 「しょーた、まだ十代だもん。犯罪になっちゃうし」

 ああ歳の差。ばれなければいいという俺の主張は彼女には通用しなかった。

 「こうして一緒に歩いているだけで、世間の目は興味津々なんだからね」

 学ランの俺と、仕事着の深子が並んで歩いているのは、確かに好意的に見れば姉弟で、悪意を持ってみればショタコン女と若いツバメだろうか。悪意のある見方が間違っていないというのがもう救い様のない感じがする。

 「…でも、これくらいはいいだろ」

 言って、手を取った。姉弟と見られるのはもうごめんだ。好奇の目にさらされても、否、むしろ見てくれ!俺のこの努力の結果を!

 「ちょっと…」

 深子は慌てた様子で手を引きかけたが、そのままぐいと引っ張って、しっかりと手をつなぐ。

 「もう…」

 「恋人になっても態度が変わんないと不安になるだろ?」

 「…そうですね」


 ちなみに、やはりというかなんというか、俺の気持ちは柏木一家には全員知れていたらしい。「ようやくなんとかしたか」と生暖かい目で見られて少し居心地が悪い。さらに洋司にまで言われたのは少し、いやかなり驚いた。

 「やっぱり兄ちゃんは深子姉のこと大好きだったでしょ!」

 なんて深子に笑顔で言っているのを見た日には、卒倒するかと思った。


 「そうだ、今日はねえ、アルバム持ってきたんだよ!」

 「アルバム?」

 「しょーた、ヨウくんの運動会行けなかったでしょ?私たくさん写真撮ったから、あ、ムービーもあるし」

 「…あっそ」

 「ちょっと関係ない写真もいろいろあるけど。まああんまり気にしないで。一緒に見ようね!」

 もーかわいいんだよー、ヨウくん。あとね、ヨウくんのクラスメイトの男の子にもすっごい可愛い子がいてね、…などと語る深子を俺は若干引きながら、しかし手は離さない。


 正太郎コンプレックス。少年に愛情や執着を抱く者のことをいう。深子の趣味はもう変わらないだろう。こんな変態女にどうして惚れてしまったのか、わからないが。

 俺だっていつまでも、彼女への愛情や執着を捨てられないのだ。捨てる気もないけどな。


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