GW戦線。風雲ギルドバトル 4
ダンジョン最奥部は部屋の大半が書庫となっていました。そこにいた人型の悪魔はフォラス。
ソロモン七十二柱の一柱で知を極めているとされる悪魔。見た目は老人?ふけたおじさん?と言う感じでしょうか?
「ふむ珍しいのぅ……この地に人がくるのは……我が名はフォラス。我の知識の祠へようこそ。歓迎するぞぃ」
声をかけてきたフォラスは手に大きな本を持っていて、それを読んでいるようです。どうやら問答無用で戦闘になるという事ではない様子かな?
「少し聞きたいのだけど……ここはどういうダンジョンなのかしら?」
フォラスはチラッとこっちを見てから奥にある本棚を指差したあと、また本に視線を落とす。その後は言葉を発しない。
どうやらその指差した方向にある本で勝手に調べろと言う事らしいですね。
本を読みふけるフォラスを横目に、奥の書架へ向かう。そこにはイロイロな本が保存されていました。
《下僕を作る100の方法》とか《快楽のツボはここにある!》に加え《後ろから襲い掛かる最高の方法》など、タイトルだけを見るとある意味赤面しそうなモノが収められていた。
その中に一際目立つ題名の物がありました。その本の名は《経験を他人から奪い取る悪魔達》と言う本。
先ほど会ったのが悪魔だったせいもあり、なんとなく気になった私はそれを読んでビックリすることになる。
中には数ある悪魔の特性などが書かれており、その中には先ほどの悪魔フォラスについても書かれていたのです。そこにはこう書かれていました。
《悪魔フォラスは倒した相手の経験を全て奪い去り、自分の糧とする》
その文章を見た瞬間私は後ろを振り返る。そこにいたのは先ほどの本に夢中になっている時の目ではなく、更なる知識を得るための獲物が来たと喜ぶ獅子の姿となったフォラスでした。
「クフフ、気付かれたか。まさか数ある本の中からその本を読む者がいるとは思わなんだわぃ。せっかく調べモノをしている好きに後ろからガブリと頂こうと思ったのに残念じゃ」
フォラスは最初は無害そうな対応をして警戒を解き、本を読み始めた獲物を喰らう悪魔だったのです。
なるほど、どうりで《後ろから襲い掛かる最高の方法》と言う本があったわけですね。
別に変な意味じゃなかったようです。……変な意味って何を考えてたかって?
そ、そんなの今は関係ないでしょっ!そんな事より今は目の前の悪魔の相手をしないと!
あ、相手って言っても、変な意味じゃないんだからね?……変な意味じゃないという理由を聞かせろ?
う、うるさいわねっ!いい加減にしないと帯で縛り付けて壁に縫い付けるわよッ!?
……それとも【飴と鞭】の方が良いかしら?
「何を一人で悶えておるんじゃ?まあよい、食らうがよいわぁぁ!」
フォラスはその体躯に似合わない速度で体当たりを仕掛けてきました。一人でイロイロ考えて赤面していた私は当然避け……られるはずもなく、その一撃を喰らい本棚に激突する。消耗した体力は4割ほど。思ったより強い攻撃じゃなかったです。
「いっつぅ~。人が考え事をしてる時に、攻撃してくるなんて最低ね!さすが悪魔だわ」
「クフフ、お褒めに与り光栄じゃのぅ」
「……初撃を貰って落ち着いたし、次からはずっと私の番よね……どうしたらいいかしらねぇ…」
「クフフ、小娘ごと気が何を言うとるか。我は総統のクラスを背負っておる。魔族の小娘ごときに負けるはずがなかろうがッ!さっさと我に喰われ贄となるがよ(ドゴッ)……ゲハァッ!!」
すいません。フォラスが長い口上を垂れてる内に帯による打撃をしちゃいました。でも良いですよね?
元々あっちが先に手を出してきたんだし、正当防衛から来る制裁を与えても……。
「クフゥ、こ、この小娘がぁ~許さ……(ビッシィン)クピャッ!?」
「誰が喋って良いと許したのかしら?乙女の顔を傷モノにした貴方に喋る権利など……なくってよ?」
よくよく見ると吹き飛ばされた先の本棚で切ったような傷がレイカの顔についていた。そしてその事実はレイカを怒らせるには十分だった。つい一瞬前までの初撃云々のあたりまでは、顔に傷がついていることに気付かなかったから普通に話せていた。
フォラスが長ったらしい前口上をしている間にステータスチェックをして、顔に傷がついたことに気付き、カッとなって殴ったに過ぎない。……ね?全然悪くないでしょう?
破壊的攻撃力を持つ帯による攻撃を二度食らい、体力ゲージが残り2本に。
……あら?この悪魔ってボス……よね?たった2回の攻撃でゲージ1本吹き飛んだの?流石に弱すぎないかしら?やっぱり武器が強すぎるのね。
「おのれぇ小娘がぁ!!我の本気を見て恐れ慄き、懺悔しながら食われるがよい(メキョッ)グワァァ!」
「頭悪いのかしら?わたくしは喋るなと言いましたわよ?こんな簡単な会話も分からないほどバカなのかしら?」
「何を言うておるかぁ。我ほど賢き悪魔が他にいるわけg……ガヒュッ!」
うーん、やっぱりこのフォラスって言う悪魔知識を極めたとか言われてる癖に頭悪いわよね?いちいち律儀に返答してるのが余計私を苛立たせていることに気づかないのかしら?
フォラスは私の4回目の攻撃で、体力ゲージが2本が消失し、その表情には焦りが浮かぶ。
なおも口を開こうとしたフォラスに対し、先制の一撃と言う事で【帯術】の焔巻を発動し、火を纏った帯で巻き上げ投げ捨てる。フォラスは属性攻撃にはそれなりの耐性があるらしく、先の攻撃よりダメージは少なかった。
なのでその分、追撃に針を投げておくことも忘れません。急所にヒットしてればこれで倒せたかもしれませんけど、残念ながら当たらなかった様子。
ヨタヨタとしながら立ち上がり、近くで口を開くと攻撃される事を悟ったのかフォラスは私から距離を取ると叫ぶ!
「おのれぇぇ!許さんぞ小娘!我の本気を見せてやる!苦しみながら死ねぇぇ」
フォラスは四肢を踏み鳴らし、獣型モンスターを次々と呼び出していく。手下に私の相手をさせて自分は体力回復に努めるつもりでしょうけど、そうは問屋が卸しませんよ?
フォラスは軍を扱う爵位を持つもの。単体では強くなくとも部下を扱わせれば比べようもなく強くなる…と先ほど読んだ本に書いてありました。
なので、フォラスが離れる動作をした時に部下の軍勢を召喚するつもりと察した私は、針飛ばし時に貼り付けていた人形を起動させました。
それは《限界蛭人形》という使用コストが30もある吸血ヒルの人形です。
この人形は張り付いた相手から永続的に体力を奪う効果と、味方からの回復魔法による効果も丸ごと吸収する、いわば回復無効化スキルを持つ。
この人形を外すには火炎魔法を使わないと外れないのでこの戦いで外れることはないと思う。だって、フォラスの残り体力じゃ、火炎魔法を食らったら死んでしまうもの。
部下モンスターの数が徐々に増えていきますが私は焦らず、自分に近づいてくる個体を相手していく。
帯しか使ってないから魔力もたっぷりありますしね。この位の強さなら裁縫闘士のレベル上げにも使えるわね。
「グヌゥゥ。な、なぜだ、なぜ我は回復せぬのじゃ!」
5分ほど経過した時、敵陣の奥から叫び声が聞こえる。私は笑みを浮かべる。今の反応からしてもうかなり切羽詰っているみたいですね?
その叫び声が聞こえてからさらに5分後、多数いたモンスターの軍勢が消えた。それはつまり、フォラスが倒れたと言う事。フォラスの軍勢は自分の体力か魔力を消費して呼び出す。
私の攻撃により残り体力が少なかったフォラスは魔力で代用して軍勢を呼び出し続けたが、馬鹿な事に自分の体力を回復する魔法も併用していたらしい。回復魔法は私の蛭人形に無効化さえ魔力だけが減っていく。無駄に魔力を減らし続けた結果とうとう魔力が枯渇し、軍勢を維持できなくなったと言う事だった。
「小娘がぁ……このような終わり方など我は認めぬぞぉ……クフッ」
最後の一言を残し、フォラスは死亡した。
後に残ったのは蛭人形と強封印球が一つにフォラスのボスドロップとなる【宵闇のローブ】。
効果は闇属性魔法強化、育成、調教、軍勢スキルの強化など。
それと同時にシステムメッセージが届く。
《魔族の上位である悪魔を倒した為、悪魔の能力の一部を吸収しました。逸れにより種族が魔族から悪魔族に変化します》
《特性:【悪魔軍師】を取得しました》
《特性効果により、始まりの街から魔界に侵攻する事ができるようになりました》
《特性:【天使の笑みを持つ悪魔】を取得しました》
……?……えっ?




