冒険は次の舞台へ! 6
「お前!夏イベントの島にいたヤツだな!ここであったが百年目!今度こそPKしてやる!以前のようにはいかねぇぞ!」
「そうだ!以前のように油断はしないっ!お前に倒されて俺達がここまで這い上がるのにどれだけ苦労したか……俺達がお前を倒す事で同じ苦労を味わわせてやる!」
「やっぱアンタか…。レベルは……なるほど33か。やはり以前より強くなっているな。だが先の二人が言った様に俺達も以前とは違う。今回は負けないっ!」
前の二人は確か眠らせて体力奪って倒したはずね……。流石に今回は対策してきてるかしら?
でも、ここで会ったのは偶然なんだし対策していないかも?……試してみればいいわね。
て言うか、いつの間にレベル上がってたのかしら?全然気付かなかったわ。後で確認しなくちゃ。
「甘き香り立つ風よ、彼の者を眠りに誘え【ウィンドベル】」
前回と同じように眠りの魔法を掛けると、やはり眠りました。しかし……
「やはりそうきたな!こう言うことも在ろうかと、状態異常回復アイテムは山ほどあるんだ!抜かりはない!」
あのステータス鑑定持ちが眠った前衛二人を回復させる。それなら鑑定もちを……。
「おっと?俺を狙っても一緒だぜ?仲間が回復してくれるんでね。……んじゃあ俺達の反撃と行くか」
「へっへっへ!必ず殺るぜ!お前らっフォーメーションCだ!やるぞぉ!」
「「おうよ!」」
リーダーっぽいPKプレイヤー(鑑定もちじゃない方)が叫ぶと、3人は散開し、範囲魔法で纏めてやられないように私を囲もうとしていました。
「ふ、フォーメーションC……ですって?か、かっこ良い響きなのね」
ついつい、バイトの癖で話を聞くと褒め言葉を出しちゃうのよね……本心から思ってなくても。
客商売を選んだとは言え、最近お客さんからよく話しかけられて困るので佐田さんに相談した所、そう言うのは適当に褒めてあしらうのが良いといわれたので、頑張って実践中です。まだまだ拙いですけどね?
PKたちはそんな私の感想を聞いて一瞬足が止まり、気をよくして答えました。
「だろ?めっちゃ考えたんだぜ?」
「何言ってんだ?パターンを一番多く考えたのは俺だって!」
「いやいや!僕だって5つも意見出したじゃん!」
私を囲んだ状態で、そんな言い合いを始める3人。というか、さっきの口調が素よね?見た目以上に若いのかしら?
とりあえず言える事は、3人とも隙を見せすぎって事ね!
「荒れ狂う風よ、嵐よ、刃となり周囲を切り裂け!【エアスライサー】」
新マップ探索時に風塵魔法が42を超え、同時に覚えたこの魔法を詠唱。この魔法は術者の周囲に展開する攻撃魔法です。敵をズバッと切り裂くエアスラッシュを360度(円形)に放つんです。
「ぬおぉぉぉ!?は、範囲から出ろぉぉぉ!?」
「おあぁぁぁ!た、体力がすっげぇ減るぅぅぅ!」
「なっ、何だ!この魔法は見たことがないっ……ちっ、クソォォ」
3人が私の詠唱に気付いたときにはもう遅い。魔法が発動し風の刃が彼らに襲い掛かる。
魔法がおさまった時、3人の体力はレッドラインまで落ちていました。
「へぇ?あれを食らって生き延びるなんて凄いわね!撫でて褒めてあげたいけど近づいたら刺されそうだし、言葉だけにしておくわ」
「くそっ、余裕見せやがって。おい、みんな回復しろ?やられるぞ?」
リーダーっぽいPKプレイヤーが指示すると、残りの二人は急いでポーションを使用していく。
「たった一人で俺達をここまで追い詰めるとは……やっぱあんたってマジでヤバくてイイ女だな」
「すごく失礼な物言いね?お世辞とは言え、イイ女と言ってくれたことにはお礼を言っておきますけどね」
「お世辞じゃなかったんだけどな……よし、こんなもんか。全員かかれっ!」
「……えっ!?」
鑑定もちが言葉で私を足止めし、残りの二人が襲撃ポイントに移動するという作戦でした。奇しくも私の褒め作戦と同じような手口に引っかかってしまいました。さっき思った、相手への感想が自分に返って来ました。これは流石にマズいですよね。不覚です!
「アンタの魔法がやばいってことがわかったんでな、この一撃で終わらせてやる!【衝撃雷弾】」
「「うおおぉぉ~らあぁぁぁぁ【ランドシェイカー】・【陽炎・闇】」」
鑑定持ちが雷魔法、リーダっぽいのがハンマー、もう一人のよくわからないのが刀スキルで一斉攻撃を仕掛けてきました。全て食らっちゃうと流石にやられそうですから、避けれるのは避けないと……。
まずはハンマー攻撃、大降りでしたので武器本体の攻撃はかわすことが出来ました。けど追加で発動する攻撃の振動で足を取られ転倒。そこに刀持ちが追撃。彼らはPTですのでフレンドリィファイアがないから自由に行動できるんですよね。
ズバッ!!
刀で切られたため素早く目を体力ゲージに向けると……減ったのは2割?思ったより少ないわね?なんで?
私魔術系ですから防御は高くないのに……もしかして装備が弱いのかしら?
そこに雷魔法……あっもう回避は無理ですね。
バシュッ!ビリリッ。
この魔法も1割程減ったくらいかな?ダメージが少ない代わりに麻痺効果を貰っちゃいました……。え?落ち着きすぎですか?まあ実際の痛みはないんだし、こんなものじゃないかしら?
「っしゃぁ!麻痺ッたぞ!今のうちだ。全員で止めを刺そうぜ!」
「っしゃらぁぁ!これでカツル!」
「積年の恨みを晴らすこの時がとうとうキタぜぇぇ!ヒャッフゥ~」
しかし数分後……
「な、何故死なねぇ!?麻痺してるから回復できないはずなのに!」
「お、俺のハンマー、腕力補正高いはずなんだが?」
「キエェェェ、シヌゥエェェェ」
その答えは簡単。【無限円環】を発動しているからですね。
このスキルで減っていく体力を魔力で変換回復させ続けているだけ。魔力回復速度は止まっていれば早くなるので、麻痺している今も回復し続けるんですよね~。……あっ!麻痺解けた!
「あぁっ!麻痺がとけたぞ!早く雷打ち込めよ!」
「わりぃ、トドメを刺すつもりで全力だったから魔力が残ってない……」
「まじかよ……」
「キエェェ!?」
一方的に攻撃され続け、鬱憤がたまっちゃった為、出ちゃいました……あれが。
「ふ…ふふっ……いい加減になさってくださるかしら。麻痺してるからといって、か弱い女性に対し遠慮のない攻撃を延々とくださってほんと……イラつくわねッ!」
キレちゃったwてへっ……?ぺ、ペロッ?
「うおぉっ!?っままま、待て!待つんだ!話せば分かるhz……アベシッ!」
「ストップだ!俺が悪かった!謝るからゆるしてくr……ブベラッ!」
「キエェェ!?……キヒィィ……ひでぶッ」
怒り度が最大級に膨れ上がったらしい私は、秘蔵の帯を振るい、3人をあっという間に木っ端微塵にした上、ナナが戦っていたPKプレイヤーを高笑いしながら倒したそうです。……恥ずかしい。




