冒険は次の舞台へ! 7
「さて、素材は集まった物の……スキルレベルに少し不安があるけどやれるだけやってみましょうか」
「レイカちゃん。もし何か素材が必要ならメッセージくれたら集めに行くからいつでも連絡してね」
「ありがとう。でも暫くは大丈夫そうだからナナは好きにしてて大丈夫よ」
「ほいほいー。それじゃあ私、ホルスエリアでシャナンと遊んでくるね~」
ところ変わって私の私有地にある生産の工房。
ウサミやナナに着てもらう水着のタイプをどうするか迷っていました。外部サイトから参考資料を取り寄せたりしますが、これだ!と思えるものがないのです。
自分が身につける分でしたら、以前と同じようにシンプルなビキニで良いのですが、他の人が着るとなると、妥協するわけにはいきません。
このDCOで毎回ログイン時に身体的データをスキャンしています。そのデータは、毎回きっちりアバターにも反映されます。こうする理由はアカウント作成時に登録したデータと現在のデータに差異があると、ログアウト時に些細な変化に違和感を感じてしまうことがあるから。
要するに初期設定で自分をモデルにアバター作成した場合は、リアルで太るとこっちのアバターにも反映されますよってこと。
この事は製作者側の秘密情報ですけど、望まなくてもパパから情報が入ってきてしまうので困ったものです。
「ナナの水着はギリギリまで作らないほうが良いわね。あの子ダイエット続かないかもしれないし。
とすると、先に取り掛かるべくはウサミの水着ね。ウサミはスレンダーで健康的な体してるから、セパレーツタイプにしてみようかしら。ミヤのは……前回同様セパレーツで良いわね。勝手にビキニに変えたりしちゃうと大学でグチグチ言われそうだもの」
おおまかな形は決まったのでまずは試作品を作っていきます。染色などのデザインは後付で問題ありません。スキルでポンッで済みますので。
龍の皮を数枚併せて一枚の革布へと変え、依頼者の体に合う様に裁断していきます。依頼品を作るときに相手の名前を登録すれば、システムの方で自動修正してくれますので、本人から詳細データを聞く必要はありません。個人情報ですし。
「はぁ……8着中6着も製造失敗ね。成功と判断された水着も品質が3しかないもの……。こんなのを納品するわけには行かないわ!もっとスキルのレベルを上げないと!」
龍の皮の素材ランクが高かったので、一ランク下げた恐竜の皮で挑戦。
こちらの方も10着作成して5着成功とマズマズの結果に。素材ランクが高い物を使用し、生産成功した場合、レベルアップも早くなるので、これ以上素材のランクを下げるのもどうかと思う。
「暫くは恐竜の皮で水着以外の装備も作ってレベルアップに励むとしましょう」
その日から数日、大学とアルバイト、DCOの往復をこなし、少ない時間でやりくりした結果ついに【マスター裁縫】のレベルが製作開始当初27だったものが35レベルへ上昇しました。
龍の皮での成功率も8割を超えてきましたし、大分良い感じですね。
「レイカちゃん。水着が出来たって本当?」
「何処で聞いてきたのよ……」
「私の直感だよ!」
「鋭い勘なのね……まあいいわ。どうせ知らせようと思ってからね」
成功率が上昇してからは常に龍の皮での加工を行ってきたので、ナナには何度か素材の調達を頼んだりもしました。多分最初の頃と違って失敗が減り、素材を頼む回数が減ったのでそこで察したのだと思います。
「ナナ。ちゃんと毎日サボらずにジョギング続けたから、高校生の時と同じ様な体型に戻ってるわね。アナタのお腹にあった摘まめるお肉の量が減って私も嬉しいわ」
「えへへ!私頑張ったもんね!でも、実際レイカちゃんが一緒にいてくれなかったら、すぐに辞めてたと思うから感謝してるよー」
「そんな頑張ったナナには私が丹精こめて作ったこの水着をプレゼントよ」
ナナに渡したのは、小学生が着るような可愛らしいフリルの全身を覆うスク水タイプ。背中にはなんと天使の羽もついてます!
「おぉ~?これはぁぁ~。何でお子様水着?私の体はお子様サイズって言う事なのぉぉ?」
「あらら?間違えちゃった?これは……ルルカの分ね。ナナのはこっちだったわ」
続けて取り出したのは、7色でカラフルに彩られた上下セットで布面積もかなり少なめのビキニ。なんとパレオと麦藁帽子も付いてきます。
「これは……派手すぎるし、その隠せる箇所が少ないというかぁ……流石にちょっと恥ずかしいよぉ……」
「そ、そんな……私がナナの為に頑張って作った水着なのに……うっうっ……」
「わぁわぁ~~。悲しまないでよレイカちゃん!この水着気に入ったよ?うれしいなぁ」
「ほんとに?」
「も、もちろんだよ~」
「そう……ならこっちの染色が白いタイプは要らないわね…」
実は2タイプ用意したナナ用の水着。本命はこっちだったりします。
さっきの派手なのはネタ装備用です。派手な方のステータス補正はヌマリザードと同程度。
しかしこっちの白いビキニは、ヌマリザードの水着の10倍のステータス補正を誇ります。ただし水中に限る!
「えぇっ!?2種類も用意してるとかズルい!やっぱりそっちの白い方が良い!そっちが欲しいぃ~」
「さっきナナは派手な方が良いって言ったじゃな~い。騎士に二言はないわよね?」
「ブー!それを言うなら武士ですぅ~。だから私には適用されないのでーす」
「そこまで言うなら私と勝負なさい?私に勝てたら、白い方の水着をあげるわ」
「レイカちゃんと勝負!?良いね!負けないよぉ!」
「え?受けちゃうんだ……」
という訳で始まった勝負は簡単。街で適当に捕まえた生産職の人から欲しい素材がないかを聞き、あればその素材を手段はどうあれ、先に取ってきた方が勝ちという単純な物。
いまだにインカロードの迷宮が攻略されていないことから、あの辺りは生産者のメッカとなっているのでそこでターゲットを探す。
「はぁ……生産の素材で欲しいものですか?それなら噂のアイオーンダイトを1つ欲しいですね。
採れる場所はこのインカロードエリアに属する《アイオン廃坑》でレアなモンスターが落とすって聞いたことがありますよ」
適当に捕まえた鎧鍛冶のプレイヤーから希望を聞いたところで勝負スタート。
ナナはこの数日で大きく成長したシャナンに騎乗し空へ。私は草原馬を呼び出し地を駆ける。流石にドラゴンの飛行速度には勝てないようですね。
廃坑に着き、少し奥まった所へ行きレアモンを呼び寄せるためお香をセット。
来る時に速度で負けたんだから、廃坑の中でアイテムを集めることは勝たないとだめでしょ?帰りの問題もあるしね。
2度目のお香使用時に2体の鉱物タイプのレアモンスタを倒し、無事対象を入手した私は、廃坑の中で戦うナナを横目に廃坑を出ました。
しかし、間もなくインカロードに着くというタイミングで上空を通り過ぎるシャナンの姿が。
「私の勝ちだよね?レイカちゃん?」
私より数分早く街に戻ったナナは鎧鍛冶の人に材料を渡し終えていたのです。
「残念…負けちゃったかぁ。約束は約束よね。この水着はナナの物よ」
「やったぁ!……ところで私の水着はこれで良いとしてウサミさんやミヤさんたちの分は?」
「そんなのとっくに渡してあるに決まってるじゃない」
「えぇっ~?……その時に今回のような勝負したんだよね?」
「毎回そんな疲れる事するわけないじゃない。バカね~?」
「じゃあ、今の私達の勝負って……する意味あったのかな?」
「最初からあげるつもりだったんだから無意味ね」
「ひぃどぉぉいーーー。それ早く言ってよぉぉ」
「本当の事言う前に勝負を受けたナナが悪い!」
実はナナが勝負を受けてくるとは思っていなかった私の誤算だったのです。
そのせいで私も疲れたのでお互い様ってことで……。




