冒険?なにそれ?おいしいの? 10
「あっ! 麗華ちゃ~ん、たっだいま~」
先日のインナー制作依頼事件?から数日経過したある日の事。 私が学校から戻り、自宅のリビングに着くとそこには七実と陽菜の姿がありました。陽菜は私が戻ったのを見てから、キッチンへ移動し家事をすることにしたようです。
「えっ?ウソ?七実……?なんで?帰ってくるのって明後日のはずじゃなかったの?」
「ふっふっふ~。麗華ちゃんを驚かそうと思ってあらかじめウソの日程を教えてたんだよ~」
「そんな……親友だと思っていた七実にこんな形で裏切られてしまうなんて……およよよ……」
「およよよ……って麗華ちゃん、何時の時代の人になったの!?私達の年代でそんな言葉使う人初めてみたよ」
「ここにいるじゃない!エッヘン!」
「えっ?今のとこ威張る所だっけ~?」
とまあこんな掛け合いが続く中、陽菜は食器を洗いつつ、微笑みながら声を掛けてきました。
「ほらほら、麗華?七実ちゃんに大事な挨拶していないでしょう?」
そうだった!言われて気付く。驚きが先にたって大事な事を言っていませんでした。
「お帰り七実。帰るのを待ってたわ」
「うん、私もだよ!向こうに居る時、何度麗華ちゃんに会いたくなったことか……。きっと天井のシミの数より多いよ」
「何処の家の天井のシミの事か分からないけど、きっと回数が多かったって事で良いのよね?」
「ん~、2回くらい?」
「少ないわねッ!?さすがにそれ、ヒドくない?」
「うっそだよ~。20回くらいはあるよ」
「3ヶ月のうちの20回……まだ少ない気がするけど……。ま、いっか。話を変えるけど七実は学校に何時からこれるの?」
「明日からだよ!って言いたい所なんだけど、この後まだ家の方で色々手続きしないとダメだから、11月に入ってからになるかな?」
「そっか。(じゃあ急がないとね)」
七実に復学時期を聞いたのは、かねてからクラスメイトたちと相談をして少しずつ準備していた事があるから。今日も姫島さんや神込くん、伊達君などといった面々と準備をしてきたばかりだ。
「ん~?麗華ちゃん何か言ったぁ?」
「なんでもないわよ?それじゃ、私の部屋に行こっか」
「あ、ごめんね。さっきの理由で今日はもう家に戻らないと……」
「……そう、残念ね。ゲームの方もまだ厳しいの?」
「DCOのほうは大丈夫だよ。家の環境は出る前と変わってないから夜にはつなぐよ」
「それは良い知らせだったわ。じゃあ今日は七実……ナナの勘を取り戻す為に一緒に行動しよう?」
「もちろんだよ!……それじゃ、私一度家に帰るね。つなぐ前に電話を入れるから!」
「分かった。首を長くして待ってる事にするわね」
「うん、それじゃ!」
私は七実を玄関まで見送り、幾つか出た宿題を夕食前に片付けました。夕食時は、七実の家族の話について盛り上がりました。陽菜も七実のお母さんである紡木遥さんと学生時代からの親友なので、私と同じく親友に会えなくて寂しがってたと思います。
夕食を終え、19時すぎにDCOにログイン。七実からは21時位になるとの事だったので、今のうちにナナに渡すアイテムを整理しておこうと思ったのです。
渡すアイテムは、以前から作っていたモンスターをおびき寄せる効果つきの最新の高補正装備品に加え、私の着物に引き続き見た目装備として、とある服を作成しました。まああれですね、ナナのメイン装備武器は薙刀。それを使うにふさわしい服装というと定番のアレですよね?これで弓まで使うようになってくれれば……。ナナが弓も使ってくれればさらに似合うのですけどね……。
ちなみにこの服装の案はクラスにいるプレイヤーと話をした際に、ナナの種族とメイン武器、簡単な容姿を聞かれそれに答えていった所、姫島さんが一言物申しました。
すると、それを聞いたクラスの男子がワッと盛り上がり、私を含めたプレイヤー24人で多数決を取ってみた所、なんと賛成24・反対0の結果をはじき出したのです。
……私が賛成した理由ですか?以前も少しお話しましたけど幼い頃、七実が道場に通い、武術の稽古をしていたときの姿を思い出し、案が出た服装ならばそれに近しくなると思ったからです。
あの頃の七実は、可愛くてかっこよかったんですよ~。このお話だけで多分ご飯10杯くらいイケちゃうんじゃないでしょうか……。いえ、イケちゃいます!
っと、つい夢中になってしまいました。とにかく七実に渡すアイテムを倉庫からアイテムボックスへ移動しませんとね。時間がありませんから!
まずはガンセキトカゲの皮で作った上半身用の服《岩蜥蜴コルセット》、同じく下半身には、ミニデーモンから出た子悪魔の表皮等をメインに作り上げた《子悪魔アーマースカート》が私の作った装備。他には《夕薙刀》という薙刀と《蛇香石のイヤリング》があります。
まず武器の方ですが生産系の横のつながりで知り合ったハルという私と同じ魔族でスキルに鍛冶を持った女性がいるのですが、そのハルにお願いし、ドリルバッファローの角とタイグーの牙、ウサミに掘るのを手伝ってもらって取得したダマクラカス鉱石というアイテムを渡して、薙刀の制作を依頼し完成した物です。
イヤリングの方は、ヒラメキにお願いしました。この素材に使った蛇香石もレアリティが☆5を超える物でなかなか手に入らない素材です。この蛇香石もウサミさんと鉱山へ掘りに行った時に頂いたものです。
ウサミさんいわく、私とルルカちゃんが居れば、第4の街の周辺にある香石採掘エリアは安全すぎて、集中してレアリティの高い素材を集めたい時は非常にありがたいとの事。ルルカちゃんと一緒に行くと、なぜかモンスター討伐数勝負になり、それをある程度の数(実績)をあげないと素材の分配が減る……という条件をつけられてしまったので、流石にこの2名と一緒に行く時は、戦闘をこなし経験値を稼いでいます。
まあ、以前ボスを11種類15体を倒しても職業レベルが2つしか上がらなかったのに、鉱山で数勝負した所でレベルアップなんてするはずもありませんでしたが……。




