夏です!海です!イベントです!? 1-4
洞窟前のセーフティエリアに着き、私達は15分の休憩をすることにしました。
15分の休憩だったら、お花摘みと水分補給、それに軽くおやつをつまむくらいかしら?
休憩が終わりログインするとフィールドは夕方になっていました。そしてパーティメンバーの3人は既に来ており私が思った事は「この三人、ちゃんと休憩したのかな?」ですね。
「ん?レイカさんもきたみたいだね。それじゃあ出発しようか」
ヒラメキが出発の合図を出すとミヤもヘルガさんも頷き洞窟の方へ歩き出しました。
この洞窟の名前は《ゴルスカール洞窟》といい出現するモンスターはボスを含めて5種類。この情報は先ほどの休憩中に調べておきました。残り時間が短かったので出るモンスターの種類だけですけどね。
見た情報を纏めますと、スケルトン・ゾンビ・ホールスライム・洞窟蝙蝠・あとはボス扱いのゴルドスケルトンですね。
流石に序盤の洞窟という事もあり定番らしい名前が並んでいました。
スケルトンは骸骨剣士のモンスターで武器攻撃を仕掛けてくるそうで、ゾンビは動きは遅いですが体力が高いようで倒すのに苦労するだろうというコメントがありました。
ホールスライムは地属性魔法を使ってくるスライムで足元をぬかるみに変えられたりするので注意が必要だそうです。
洞窟蝙蝠は飛行型モンスターですが超音波ではなく熱減などを察知して襲い掛かってくるようですね。ボスのゴルドスケルトンについては時間が足りなかったので名前しか確認していません。
そして洞窟の適正レベルですけども18レベル位からというのでこのメンバーなら大丈夫と思います。
……訂正します。思っていました。
過去形なのは今現在私達はスケルトンやゾンビの群れに囲まれ身動きが取れない状況になっているのです。
「か、数が多すぎる!それに魔力も残り少ないわ」
「そいつはやべぇな!ミヤ!できるだけ魔力温存できるか?」
「ヘルガ。アンタ馬鹿なの?この状況で温存なんてできるわけないでしょう?」
「なんだとぉ?」
「あー二人とも喧嘩しないでくれよ。そういう場合じゃないだろ?」
一触即発になったミヤとヘルガだが、ヒラメキの仲裁によりなんとか気を収めてくれたようです。
それをのんびり見ていた私ですけどもスケルトンやゾンビからの攻撃を食らっていますが死ぬほどじゃありません。というのも俊狼シリーズで装備を固めている為か、攻撃力が高いと書かれてあったスケルトンやゾンビの攻撃でも大して減らないんです。減ってもウィンドヒールで回復できる量ですし、そのヒール使用分の魔力くらいなら精神統一のスキルレベルが高いのですぐ回復できます。
まあ理由は俊狼シリーズの中で体格と魔力ボーナスが付いた物を選んで装備してきたからなんですけどね。
「あれ?レイカさんの体力も魔力も減っていないのでは?」
「うそ?な、なんでよっ?あれだけ魔法を使ってたのに魔力が切れてないなんておかしいわ!」
「だよなぁ……」
あっ、気付かれた? やっぱり全員分の回復担当しているのに魔力が減っていないのは不自然すぎたみたい。
「スキルのおかげで魔力回復が早いだけよ」
「どう考えてもそれだけじゃないだろ?」
周りのモンスターを剣特技の一文字で倒しながらヘルガが聞いてくる。ミヤは範囲魔法を使える魔力が回復次第放っていき、ヒラメキは範囲攻撃スキルがないので、ミヤに近づくモンスターたちを各個撃破している。だけど殲滅力が足りないのかモンスターの数は増えていくばかり。
流石に出し惜しみしてる場合じゃないよね。でもレベルが高い事バレたくないんだけどなぁ。そうも言ってられないよね。
「……私は逃げるチャンスを作れる魔法があるけど、それを使える事は内緒にしてほしいの」
「誰にも言わないわ。どうせベータのときと同じようにおかしいことするんでしょう?さっさとやっちゃって!」
「ミヤに同感!」
「ベータで一体何をやらかしたのか非常に気になりますけど、この状況を打破できるなら黙っておくのも吝かではないよ」
「じゃあさっさと片付けるから巻き添え食らわないようにしてね」
一応全員約束は守ってくれそうなので私は魔法を詠唱開始しました。その魔法はもちろんテンペスト。
普通に考えて洞窟内で放つ魔法ではないですけど、そこはゲームということで納得してください。
「いきますよ? 【テンペスト】」
魔法を発動した瞬間洞窟内に嵐が吹き荒れ、中にいたモンスターが次々と洞窟の天井に叩きつけられては粒子化し消えていく。
「はぁ?なによこれ。レイカ。あなた一体レベルいくつなのよ……アンデット属性の弱点である火の魔法で一撃で倒せなかったゾンビすらも一撃で倒すってことは威力がおかしいってことよね」
「れ、レベルは乙女の秘密なんですよ?」
「残念ね。でも私も乙女だからその秘密の共有しましょうか(怒)」
ミヤの後ろには鬼が立っていました!凄く怖いです!超逃げ出したいくらい!
私は踵を返し洞窟の入り口に向かって走りましたが鬼と化したミヤに捕まり結局みんなの前で洗いざらい吐かされました。
「れ、レベル28で風魔法が29だって?もうカンスト寸前じゃないか」
ヒラメキはものすごく驚いていました。そりゃトップの人たちよりレベルが高いんだから当然ですよね?でもミヤとヘルガさんは違いました。
「あ~、そうよね。レイカだもの。この位になっててもおかしくないわよね」
「だなっ!聞いたときは驚いたけどレイカさんだしな」
二人が失礼すぎます。何で私だからとか言うんですか!?それにおかしい人を見るような目つきもしないで欲しいです。
「それにしてもナナさんも24だっけ?二人でよくそんな先のマップに行けたよなぁ」
「それについてはまあ私達二人ともよくわからなかったこともあって倒せるんだから進んじゃおうってことになったのよ」
「普通は倒せるからってたった初級ランク装備の二人で3マップも4マップも先には進まないわよ!」
「で、でもそのおかげでレベルアップが早かったわけで……」
「言い訳しないの!……まあそれに関してはもういいわ。ただレイカからしたらこの洞窟程度じゃ足しにならないってことが分かったわね」
「え?ちゃんと経験値になってるよ?スキル熟練度も上がってるし」
言葉通りあの大量の数を纏めて倒したのでまとまった経験値が入ってきていますし、新しい素材やイベントアイテムである【特性火薬】と【特性紙筒】も手に入っていますから私的には敵の強さなんて二の次なんですよね。
ここに来る事を了承した理由も私の見たことがない素材集めと、現在の平均の強さのミヤとヘルガの動きを見るためだったし。ヒラメキのことはイベント報酬(でいけるようになる島の素材)に対する熱意に負けたというか?
「ちがうのよ。私達が言いたいのは、このまま洞窟で戦っていてもレイカに頼りっきりになってしまいそうだから湿地まで戻りたいのよ」
「え?なんで?私の魔法でモンスターを倒せばすぐにレベルアップとかイベント素材集まるのに……」
「それは私の力じゃないからね。ヘルガも私も一応ガチゲーマーとして他人の力だけを頼りに狩りをしたいわけじゃないのよ」
「レイカさんには悪いけど俺もミヤと同意見だ」
「ミヤさんとヘルガさんがそういうのでは仕方ないか。俺個人としてはレイカさん任せにしてでもイベントアイテムを集めたいんだけどね……。レイカさん、悪いけど湿地まで戻ろうか」
「……うん、分かった」
その後私達は洞窟を出てセーフティエリアで少し休憩をしてから湿地に戻りました。
湿地帯に戻ってからもゲルスライムに装備の服を溶かされてあられのない姿を晒したりしましたが(ミヤが)それ以外は大きな問題もなく今日一日で水着券をもらえるくらいになりました。
「た、たった一日でイベントアイテムが集まるなんてな」
「これもまあ、レイカに貰った運が上がる装飾品のおかげよね」
「そうだね。とりあえずこれで4人のうちの3人の目標は達する事ができたから後はレイカさんのレシピだけですね」
ヒラメキの言ったレシピの話になったとき私は提案をしました。ソロでインスタンスダンジョンにいき集める……と。
「レイカ。もしかして私が洞窟で言った事で拗ねてる?」
「そうじゃないよ?水着を貰ってイベントの島にいったほうが3人にとっては有意義になるんだから。私の目標は多分一人ででも達せられるからいいの」
「手伝いはいらないって事なのか?」
「……そうだね。本音を言うと私は一人かナナと一緒の方が行動しやすいの」
「そ…っか。いつもの私なら文句を言う所だけど、今日のところは言わないでおくわ。レイカが人付き合いを苦手としてるのは分かってるつもりだから」
「気を使わせてごめんね、ミヤ。そういうわけだから私はPTから抜けますね」
「……わかった。今日は一日ありがとうな。また生産施設で会おうぜ!」
私の態度が悪くなった事でミヤとヘルガに気を使わせてしまった事は申し訳ないと思うけど、ここ数年で形成された性格はそう簡単に直せるものじゃないですから。
3人と別れた後やってきたのは先ほどのゴルスカル洞窟。最後に立ち寄ったセーフティエリアには町の転送装置で戻れるようになっている。この辺は便利ですよね。
「【テンペスト】 【テンペスト】もう一回【テンペスト】ォ!」
自分が勝手に気分悪くなっていた腹いせをするため大量にモンスターの出るこの洞窟に戻ってきたわけです。
部屋ごとに大量に溢れてくるスケルトンやゾンビを次々と倒し素材がアイテムボックスにどんどん流れこんできている。湿地帯からくる入り口周辺はソンビとスケルトンだけでしたが奥に行くに連れてホールスライムや洞窟蝙蝠などが出てくるわけですけどもテンペストの魔法であっさりと倒されていきます。
しばらく進むとボス部屋っぽいものがあったのですぐに入室すると、目の前に線が走りました。
「わ、What!?」
ボス部屋の入り口にボスがいたのです。金色のボディ?をしたスケルトンであるゴルドスケルトン。そのゴルドスケルトンの鋭い剣撃が私に襲ってきたわけですね。つい英語になったのは仕様です。これでも一応お嬢様ですので英語に関しては少しばかりはできます。これから先は使う機会はないですけど。
「びっくりしたぁ!まさか入っていきなり襲われるなんて思ってなかったわ。でも残念ね、あの一撃で倒せなかったあなたの負けはもう確定したわよ」
「【サンダー】・【ウィンドカッター】・【テンペスト】」
ゴルドスケルトンがボスとはいえレベル差のある私の火力に耐え切る事もできず3回の魔法でレッドラインに陥りました。
ゴルドスケルトンは私に向かってきましたが距離も離れている上、こっちは既に魔法を詠唱開始していて、どちらの攻撃が先に届くかなんて一目瞭然でした。
「これでさよならよ。【サンダー】!」
一筋の雷がゴルドスケルトンに落ち、ゴルドスケルトンはバラバラになって粒子化していきました。
手に入った素材は金色の骨。
【金色の骨:魔力がたっぷりたまり金色になった骨。 香料、錬金術、農業、畜産などに使う】
「あれ?何でこの骨が香料にできるんだろう?別に香りなんてしないのに……まいっか。施設に戻ってから考えよっと。えっと次の部屋はっと」
ゴルドスケルトンを倒し、先の扉を抜けるとそこは森がありました。セーフティエリアはないようなのでとりあえずこのまま進む事にしましょうか。




