夏です!海です!イベントです!? 1-2
待ち合わせ5分前。私が始まりの街の南門に来るとそこには既にヒラメキの姿がありました。彼に挨拶を済ませた後、少し待っているとヒラメキを探す2人のプレイヤー……(それも凄く見たことのある)が現れました。
「おーい、ヒラメキさーん。ここか~?」
「おっ?どうやら声をかけた人が来たみたいだな。とりあえず一緒に行動するメンバーの紹介をするからこっちにきてくれ!」
「りょうかーい」
案の定というかやはりヒメラメキが声を掛け、それに応じてくれたのはミヤとヘルガさんだったようです。私はとりあえず2人とはβ時代からの知り合いだというとヒラメキは驚いていたが「紹介する手間が省けたぜ」とか言っていましたね。
「あら?レイカ?数時間振りね。ここにいるってことはヒラメキに呼ばれたの?」
「こんちには。私は呼ばれたのではなくこの場で直接声をかけられましたよ」
なお別れてほんの数時間しか経過していないというのにミヤさんたち2人の装備が変わっている事に驚きです。別れた時は店売りの皮鎧だったヘルガさんはウルフレザー(評価4前後)に、ミヤさんも初期装備の皮の服だったものがウルフレザークローク(魔法使い用の服で評価が高ければ賢さと魔力に補正が多くつきやすい)にウルフレザーハットを装備していました。
「ふーん。そうなんだ?私達もさっきイベントクエスト一緒にやりませんか?って声をかけられたのよ。2人でアイテム集めを黙々とやるのもしんどくなってたし、丁度いいかなと思って話に乗ったってわけ。ぶっちゃけて言うと、2人だと寂しくなってきたって言うのが正しいかも」
「あはは。私はてっきりミヤさんたち2人は常に話していそうな感じがしたんですけども」
「さすがに私もずっと話してられないわよ~」
とりあえず4人が集まったので一応それぞれが自己紹介をしていく。私は3人の事は少し知っているつもりだったのですけど改めて自己紹介をしてもらうと知らなかったことが出るわ出るわ。
ヘルガさんはβ時代は【剣術】しかなくても【大剣】を使え戦闘時は少し格好よかったのですが、正式版では【剣術】では【大剣】を扱う事はできず【大剣】スキル取得のためにスキルレベルあげに必死だという事とか……。
ミヤはβ時代、【火魔法】と【風魔法】を取得していたがベータ版では初期選択スキル数が減っていた事で【火魔法】しか取得していなかったのだ。その【火魔法】も範囲攻撃を覚えておらず思うように効率が出ていないことなどを聞けた。ただ魔法の効率運用についてはβ時代と変わらなかったので魔力切れで困った事はあまりないとの事です。私もその辺、力技(体力⇒魔力変換)で解決してるのでそれに頼らずに済む効率的運用方法教えてもらおうっと。
最後にヒラメキなんだけど、【細工士】【小刀】【採掘】等を持っているとのこと。残りの二つもしくは6つ目以降の追加したスキルについては語れるほどの物じゃないと言い出し惜しみをしていました。
「さて、自己紹介も終わった事だし、早速目的を確認しようと思う。7月の末から始まっているイベント《夏を満喫!ひと夏の夢を君に!》のイベント報酬に水系フィールドに進入可能となる《水着引換券》という物がある。あと始まりの街のすぐ近くにイベント専用インスタンスダンジョンが設置され、多くのプレイヤーでにぎわっている事は知っているだろう?」
「え?知らないけど?」
「ダンジョンねぇ。私達も行って来たのだけど人が多すぎて狩ができなかったのよね」
「だよなぁ。あの場所でイベントアイテムを集めるのはいろんな意味できついな」
ヒラメキからの質問……確認事項についての返答ですが上から私、ミヤ、ヘルガです。
「レイカはもうちょっとイベントについて調べた方がいいんじゃないかしら?ベータの時も最終日のイベントのこと、私達から聞かなかったら行かなかったでしょう?」
「うぅ、βはパパに頼まれて参加してただけだもん。だからログインしてそれなりに育ってればいいはずだったのよ」
「そんな考えでいたわりにたった3日でメインスキルとベースレベルカンストしてたよな。性格には2日でだったっけか」
「ぐぅ!?それは色々あったんだよ?というよりあの時の私はネットゲームも初めてだったからアレで普通だと思ってただけだし!」
「「いやいやいや!2日でカンストとかおかしすぎるから(な)!」」
最後のツッコミだけヘルガさんとヒラメキだったということだけ述べておきます。
「とりあえず話を戻すよ?そのイベントだけど別にそのインスタンスダンジョンに行かなくてもイベントアイテムは入手できるんだ。そこらのフィールドやダンジョン、町で受けられるクエストの報酬など入手方法は様々。まずはこの辺りから決めていこうか」
話し合った結果4人がイベントで入手したい物が決まった。私を除く3人は《水着引換券》です。
これはNPC製の《水着》と交換してくれる物で効果は【夏の間水系フィールドに浸入できる】で、当然ながら夏が終われば期限切れアイテムとなりアイテムボックスから消滅する。
私が望んだのはもちろん《水着作成レシピ》。
これを取得するにはイベントアイテムを大量に取得し交換するか、インスタンスダンジョンボスからドロップされる物を取得するしかない。もちろんドロップ率も5%とイベントにしては低い目の設定で、取引も不可なので自力で集めないといけないのがネックです。
当初はヒラメキもレシピを求めていましたが、自分が入手しても私が作れなかったら意味がないと知り間に合わせでNPCの水着を取得する事に決めたようです。この時点で私がヒラメキを手伝う理由はなくなったのですけど「夏が終わった後も材料集めのときに使うかもしれないから是非とも作ってくれ!」と頼まれましたのでなんだかんだで説得され手伝う流れに落ち着きました。
「次に決めるのは戦闘時の配置だよな。基本前衛はヘルガさんがやってもらう事になると思う。ミヤさんとレイカさんはマジシャンということだから後衛をお願い。俺はこの中で一番弱いから申し訳ないが死なないように中衛からハイエナの如く行動させてもらうよ」
「おう!まかせてくれ!」
「最初から自分はハイエナという辺り信用できるわね……その代わり武器スキルが育ったらきっちり前衛に行くのよ?」
「じゃあ私は基本回復魔法を担当しますので攻撃はミヤさんお願いしますね。非常事態のときは私の判断で動きますけど……」
「そのつもりだ……すまないがしばらくはそういう方向で頼む。レイカさんもスキルのレベル上げとか必要なんだし攻撃してくれてもいいんだが?」
「えっと~、私はイベントを利用してまでスキルを育てようとは思ってないので気にしないで下さい。私の目的はたくさんのイベントアイテムを取得するためにどうすれば効率よく集められるかですので」
この時一応ヒラメキに私の装備を勧めてみたのですけどその評価を見て顔がヒクついていたのが印象に残りました。結局彼は自分のためにという事で《俊狼のボトムス》と《俊狼のブーツ》 (ともに評価8)を購入してくれました。毎度ありがとうございまーす(私なりの満面の笑顔で)。
ヘルガさんとヒラメキがなぜか顔を真っ赤にしており、そんなヘルガさんを見たミヤがヘルガに蹴りを放ちギャンギャン言っていましたけど私のせいじゃないです!断じて!
(あれ?でもこういった反応、1年か2年生の時クラスで見たことあったような?)
とそんな事をふと思い出しましたがどうでもいいこととすぐに考えるのを止めました。過去(入学当時)はそうだったかもしれませんが、今はどう思われてるのか全く不明(七実から説得されて一応嫌われているという思い込みは止める事ができました)ですからね。
横道に逸れすぎましたが、ようやく目的と手段が決まったので私達4人は南門から少し離れたイベントクエスト受注のためビーチに向かうのでした。




