カミノマニマニ
池田治夫は、ごく普通の賽銭泥棒である。
毎日神社を巡り、毎日賽銭箱付近を注意深く観察する、齢38の賽銭泥棒である。
今日も今日とて、恐竜のうんこの化石に供えられている小銭をくすねたあと、通りかかったコンビニで値引きされた5枚切り食パンと投げ売りされていたクッソマズい清涼飲料水を買って24円のおつりをもらって家路についていた―――のだが。
キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
池田治夫の魂と…、女神が対面している。
「池田治夫さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「はあ」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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池田治夫(38)
レベル12
称号:転生者
保有スキル:カミノマニマニ
HP:26
MP:4
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「というわけで、いきなり草原に放り出しやがったな…くそが…」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…賽銭泥棒の前に現れた!
「スライム?ふん、キッタネーなあ!!」
蔑む、賽銭泥棒。
「ふん、保有スキル?使えばいいんだろう…《カミノマニマニ》って…なんじゃこれ」
うばほん!!
目の前に賽銭箱があらわれた!!
なんと…今までに賽銭泥棒がくすねた金額分入っているようだぞ!
29万9976円分の小銭…少額でも32年の積み重ねがモノを言っているらしい!
「これで戦えってか?!ムリゲスギんだろ!!」
文句を垂れながら格子状のふたをはぎ、小銭を握ってスライムに投げつける賽銭泥棒。
ジャラッ!
ビしっ!
スライムに1のダメージ!
正直ぜんぜん効いてない!
「クッソぉおおおお!!こうなったら賽銭箱ごと…ってか重っ!!」
じゃらー!!!
賽銭泥棒は賽銭箱の中身をあけて箱を投げつけようとしたが、持ち上げている最中にスライムに接触されて秒で猛毒が全身に回って絶命した。
賽銭泥棒を捕食したスライムは、倒れていた賽銭箱を元に戻し、散らばっていた小銭を収めた。
格子状のふたを閉めていたところ、口の中に異物が残っていたので吐き出すと、茶色と白っぽい色の硬貨だった。
せっかくなので24円分の小銭を賽銭箱に入れたスライム。
すると、空から異世界の神が降りてきて…。
友好関係を持った神と魔物の英雄譚については、機会があればいずれ。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
賽銭泥棒は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
賽銭泥棒はコンビニで値引きされた5枚切り食パンと投げ売りされていたクッソマズい清涼飲料水を買って24円のおつりをもらって家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「おっ!!小銭落ちてんじゃん、ラッキー!」
賽銭泥棒は、ショボいパクリを繰り返しながらパッとしない毎日を送っていましたが、目と鼻の先でひらひらしていた万札に手を出した時にしょっ引かれ、規則正しい生活を何年か送ったのちショバに戻ったもののまた同じようなことをして舞い戻り、結局腐った性根が正されることはなく62歳でこの世を去ったという事です。




