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分身の術でござるよニンニン!の巻

忍者スキルのひとつに分身という術がある。

ゲームの中では単に使用者に向けた攻撃を一度だけ受けてくれるという、我々が知ってる忍術でいうと変わり身の術のような効果だ。

「ムムッ!なにやつ!!」手裏剣カカカッ!丸太に刺さる手裏剣。

「フフフこっちだ」背後に現れる忍者。

っていうのが変わり身の術。

なんで背後を取ったのに声かけて居場所教えるの?とかは気にしないで欲しい。

ゲーム内では単なるマナを使った回避スキルとしての使い道以外に、手に入れた武器やスキルの威力を知るための試し打ちに使うこともある。

素振りに飽きてきた私は、何か新しい練習方法はないかと考え、とりあえず分身を作ってみることにした。


猫になった時と同じ要領で試すと簡単に成功した。

一応忍術スキルが低いと成功判定すらなかったり、成功確率が低かったりしたはず。

実は忍者の素質があったのか?日本に戻れることがあれば忍者の里的なテーマーパークにでも転職しようか。

それはまあ置いておいて。

目の前には私の分身が立っている。

来ている服や装備もそのまま完全にコピーだ。

「ハロー」

右手を上げて声をかけてみるが特に反応は無い。

横から見たり後ろに回って観察してみる。

今の私ってこんなか。鏡で見るのとは違ってなかなか新鮮だ。…もうちょっとおしゃれに気を付けるべきだな。

今日は元々あった長袖のシャツに膝下で紐をキュッと結ぶハーフパンツに普通の革靴、その上に自作の胸当てと手袋をつけて、皮のスカートを履いている。

皮のスカートは幅5センチ長さ30センチぐらいの皮を縫い合わせてプリーツスカートのようにした、既製品である。素材が鹿か何かの皮なのでどうも無骨感が否めない。

そして持っているのが木刀である。

なんていうか、こう、NPC感がすごい。

こういう格好もけして嫌いではないが、いつもおしゃれな格好をしてるのに今日はすごく無骨だね!っていうギャップ狙いの時の服装だろう。

普段からこれじゃただの地味な初心者だ。

実際に初心者だから間違いではないか。


脱線してしまった。

服がダサいのは今はいいんだ。人に見せるわけでもなし。

今は分身の仕様を知るべきだ。

まずゲームの時と同じように攻撃してみよう。

木刀を持ち、振りかぶって…え、えいっ!と、とおっ!

……。

出来ない。

人に手を上げたこともない私が、ましてや女の子に木刀を叩きつけるって、無理でしょ。普通に無理でしょ。

リアルすぎるよ分身の術。


分身をこのまま放置するのもどうかと思い考えあぐねた結果、デコピンしたら消えてくれた。デコピンぐらいなら出来るんだよ。へたれの私でも。

とりあえず、課題はわかった。

相手が自分とか女の子とか関係なく、今の私は人や動物に関わらず生き物に対して暴力を行使することは出来ない。

これはこの世界で生きるに当たって致命的だろう。

ドラゴンの時は一心不乱に魔法を狙うことで何とかなったが、実際にドラゴンの命を奪うような攻撃を加えられるかどうかわからない。

実践で躊躇するような状況になる前で良かった。

今日はこれがわかっただけでも身のある訓練だった、と思おう。

これから分身相手に慣らしていくしかない。

あー怖かった。

はー怖かった。

明日頑張ろう。

そうそう明日から頑張ろう。

はい。今日はお疲れ様。私は明日から頑張りまーす。


夕食は簡単に済ませる。

まずサラダはデフォ。アルパカちゃんのご飯に必ず必要なので、私の分はついでです。

今回はレタスをザク切りにして千切りのニンジンと、茹でたコーンを芯から外して乗せます。私の分には塩と醤油とオリーブオイルを混ぜたドレッシングをかけました。

レタスは包丁で切って時間が経つと変色して見た目が悪くなるので早めに食べてください。

スープ皿にパンをちぎって並べ、上から暖めなおしたお昼の玉子スープをかけます。これだけです。

スープはパンの中心に卵を落としてその上からスープをかけて混ぜながら食べるとおいしそうだけど、こちらの卵を生食するのは不安が残るので省きました。

あとデザートにアルパカちゃんも食べるリンゴを剥きましょうね。


夕食を済ませたらお風呂に入る。

今日はよく動いたので早くさっぱりしたい。

着替えを持って屋上の扉を開けて気付いた。

そうだ今日は雨だったから、お風呂のタルを一階に下ろしたんだった。

お風呂自体はいいけど、どこで体を洗おう。今のままだとトイレの横で体洗うっていう異常な光景になっちゃうぞ。

早いとこ屋上のお風呂スペースに屋根作らないとなぁ。

今日も新しい課題がいっぱいだ。


とりあえず今日のところはまずお湯を沸かして、タルの掃除をしながらタルの中で体を洗いました。

洗ったあとに一旦タルの中を水ですすいで、お水をためて、いつものように焼いた石でお風呂にして入ります。

その間のアルパカちゃんの冷たい視線が痛かった。

あ、ちなみにアルパカちゃんの感情とか私は全くわかってません。

今までのは単なる私の推理や思い込みです。

テイミングできたからって万能じゃないんですね。


かぽーん。

はあ。お風呂ってやっぱり気持ちいい。

おいおいアルパカちゃん、すごい勢いでお風呂のお湯飲むね。おいしいの?私のダシおいしい?

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