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朝の日課と胸打つ響き

朝。

パッチリと目を覚まし、がばっと起き上がる。

別に何かあったわけじゃない。これが普段通り。

大きく伸びをしてからスリッパを履き、部屋を出て歩きながらあくびを済ませてから洗面所に入る。

あくびは脳の覚醒を促すと聞いたことがあるので、我慢しないようにしてる。

歯ブラシの先を濡らし、塩をひとつまみ乗せて歯を磨く。

ああ、しょっぱい。チューブの歯磨き粉が恋しい。あれは一体何で出来てるんだろう。

口をゆすいで顔を洗う。顔を上げると鏡に映る女の子の顔。誰だ!

髪の長さやスカートには慣れても、顔はまだまだ慣れないなぁ。

屋上に行き、花壇に水をやる。ジョウロが無いので水差しからパチャパチャと水をかける。

空を見ると今日も晴れのようだ。

家の中はどこにでもランタンが下がってるので明かりに困ることははないけれど、やっぱり日が差す時間の屋上が一番明るい。

ここは基本的に水音と私が立てる音しかしない。

日本では例え真夜中でもどこかで車のエンジン音や人の作る音が聞こえてきた。

それを思うとこの静けさは都会では味わえないご馳走だね。


ご馳走と聞いてお腹が空腹を訴えてきたのでキッチンへ下りる。

今日の朝食は昨夜の夕食後に、スライスしたパンを牛乳と卵と砂糖を混ぜた液に一晩漬けておいたフレンチトーストだ。

早速火を熾して薪をくべ、フライパンを暖めバターを入れる。

バターが焦げてしまう前にトーストを投入。

両面に軽く焦げ目をつけたらチーズをたっぷり乗せてフタをして火から下ろす。

新しいフライパンを用意して、暖めてる間にハムを出来るだけ薄く切ってフライパンに乗せ、その上に卵を割って軽く塩を振る。

こちらもフタをして、弱火のところに移動させ、昨夜残しておいたコーンポタージュの鍋を暖める。

暖めてる間にキャベツを一枚千切りにし、お皿に盛って蒸し焼きしておいたハムエッグを乗せる。

ポタージュをマグカップに注いで、最後にフレンチトーストをハムエッグの横に添えて完成。

いただきます。

まずポタージュをひと口。

朝の温かいスープは格別。これは冬はもちろん夏も。プロポーズする時は「毎日君のポタージュが飲みたい」にします。

さあフレンチトーストだ。余熱で形を保ったままやわらかくなったチーズと一緒にナイフで切る。

ふわふわでありながらプルンとした弾力がある。まるで作りたての焼きプリンのよう。

口に入れると牛乳と玉子のやさしい味と爽やかな甘さ、そしてチーズの香りが口の中いっぱいに広がる。これだ。このために一晩待ったんだ。

そしてハムエッグだ。ハムは片面だけ焼くことによってカリッとした歯応えとハム独特のやわらかさを両立させた。

目玉焼きはフタをして弱火でじっくり蒸し焼きにすることで、表面の白身を固めつつ黄身は半熟に保つことが出来る。

黄身の中心にナイフを入れて下のハムも一緒に切り分け、玉子とハムを同時に口に入れる。

ああ、フレンチトーストで甘くなった口の中を目玉焼きとハムの塩味が引き締めてくれる。

忘れてはいけないキャベツの千切り。ハムエッグを乗せたその熱で少し甘みを帯びながらもまだ生の清涼感を残している。

この朝食コンボはまさに栄光。胃袋がグローリアと叫んでいる。

甘さと塩味とフレッシュ、そして温かいポタージュ。皿の上のものが全て無くなるまでもう誰も私を止める事はできない!


朝からテンションが上がってしまった。

落ち着きを取り戻した私は洗い物をした後にテーブルや調理台などを拭き、窯の火が完全に消えたのを確認してからキッチンを出る。

今日は洗濯をする。

部屋に戻って寝巻きから七分丈のハーフパンツと半袖のシャツに着替えサンダルを履く。

ベッドのシーツを剥ぎ取り、一度着た服や使ったタオルと一緒に大きな桶に入れて屋上に持っていく。

洗剤には石鹸をナイフで薄く削いで入れることにする。何を洗うにも同じ石鹸を使ってるけど、これしかないのだからしょうがない。量だけは一生分はあるからどんどん使おう。

桶に水と石鹸を入れて泡立ててからサンダルを脱いで素足になって踏む。踏む踏む踏む。

日に日に温かくなっているようで、水の冷たさが気持ちいい。

そういえばこの島の樹木はジャングルの様だったと思い出す。

夏はどれぐらい暑くなるだろう。日差しは届くけどかなりの地下なので、上よりは気温の変化が少ないかもしれない。


屋上には柵があり、何メートルか置きに柵の柱が上に伸びてるのでそこにロープを結びつけて横断させて干し場とする。

風が無いので乾きにくいかもしれないが、飛ばないようにするための洗濯バサミを作る必要がないことを喜ぼうと思う。

濡れたついでにお風呂のタルを洗って、逆さにして斜めに立てかけて、今日の家事は終わりとする。

お疲れ様でした。ありがとうございました。


昨日作った胸当てを着て、手袋と矢筒を持って三階に行く。今日は出来るだけ戦闘訓練をしたい。

いつ何があるかわからないので備えは必要だ。

まずは戦闘関連のスキル書を読む。スキル書が日本語なのはマキシマスが日本語ローカライズされてたからだろうか。

サービス開始初期は英語だけだったので、その頃に飛ばされてたらもっと大変だったかも。


うーん。一通り読んでみたけど、どれも基本的な持ち方や構えしか書いてない。

弓のようにそもそも持ち方さえわからない物は助かるけど、それ以外はあまり役に立たないなぁ。

とりあえずメインウエポンにする予定の弓の練習をしよう。

今日の装備はそのために作ったものだしね。


手袋をする。片手でヒモを結ぶのにちょっと手間取って、少しはしたないけど口も使って結ぶ。

矢筒を今日はベルトのようにして腰につける。矢は20本入った。

もう少し重くなっても大丈夫そうなので、次はもっと大きめに作ることにする。矢は多ければ多いほどいいはずだ。少なくとも一人でいる間は矢の数が生命線と言っていい。

覆いを開けたまま歩くとパカパカするのでベルトに回して挟む。

よし、準備オッケー。


人形から20歩ほど離れて撃ってみる。

全然当たらない。20本撃って命中した矢はゼロ。これはかなり練習が必要だな。

正式な構えを覚えたので、前のように弦が頬に当たることは無くなったけど、今度は矢を放つ時の弦が右胸の辺りにピシピシ当たるようになった。

胸当てのおかげで痛くはない。作ってて良かった。

昔の冒険小説に出るアマゾネスという女性ばかりの種族を知ってるだろうか。

彼女たちは主に弓で戦うので、弓を使うのに邪魔な右胸を切り落とすという話がある。それを知った時はゾッとしたものだ。

私が読んだ本ではアマゾネスが実在するように書かれていたが、もちろんフィクションである。右胸の逸話もフィクションなので安心して欲しい。

弓が得意な種族といえば、ファンタジーの定番エルフ。

エルフの女性は胸が小さいという定説があるが、それももしかしたら弓を使うのに邪魔だろうという配慮によって作られた設定かもしれない。

元からあったのか後に作られたイメージなのかわからないけど、作る人によって様々なパターンがあって面白いじゃないか。


マキシマスにもエルフはいるはず。

ファンタジー好きにとってエルフという存在には胸が高鳴らざるを得ない。

ピシッ。

また弦が胸に当たる。

元々無かった部位なので、いちいちビックリしてしまう。慣れないとね。

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