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雲の下  作者: ツミキ
10/11

10.日常

サザリカは塔の外へと出る、外はうっすらと明るくなっていた。

振り向くと塔を見上げる。

さっきまで女性と居た場所は灰色の雲のさらに上にある。

サザリカは前に向き直り歩き出すが、10程歩いた所で止まり、塔へ向き直るとゆっくりとそちら踏み出す。

その瞬間、塔もそれを囲う壁も、丸ごとサザリカから離れていた。

2歩3歩と歩くたびに塔は歩幅とは比べものにならない距離を離れていく。

5歩歩いた所でサザリカと塔の間には300m程の距離が出来た。

「やっぱり、そうか」

サザリカは立ち止まりしばらく塔を見つめると帰り道に向き直り、もう振り返る事はなく歩き出した。

だんだんと周りの明るさが増していく。

サザリカは前を見つめながら塔へ向かうよりは少し早足で歩いていく。

時折リュックから出した透明なペットボトルに入った水を飲む。


サザリカが拠点へと戻ってきた時には朝と言っていい明るさになっていた。

箱を見るとそれに手を触れる。

「なんでこんなの残しちゃったかなあ…」

サザリカは手を離すと家の中へと入る。

リュックを木箱の横へと置くと、ゆっくりと2階へと上っていく。

部屋の中を覗くとクミナはまだ横になったまま眠っていた。

それを見るとサザリカはいつもの歩き方に戻り、クミナに近づくと頬にそっと手を触れる。

そのまま人差し指を立てると何回か頬を突いた。クミナが起きる様子はない。

サザリカの顔が緩む。

「はは……あーねむ」

サザリカは目を閉じて目頭を押さえるとベッドの中へと入り、トタンの天井を向いて目を瞑った。


「サザリカー」

クミナが仰向けになっているサザリカの額をペチペチと叩く。

「ん、んん……」

サザリカがうめき声を上げながら少しずつ目を開いていく。

目の前にはクミナの顔があった。

「ああ、おはよ…………顔、近くない?」

「だってサザリカがなかなか起きないからさあ」

クミナはベッドのサザリカの上で四つん這いになっていた。

下着も何も着けていない裸だ。

クミナの髪がサザリカの顔をくすぐる。

サザリカは力を入れて目を瞑ると、パッと開く。

「何、してるの?」

サザリカはクミナの目を真っ直ぐ見る。

「サザリカがこんなに寝てるのって初めてじゃない?」

「ん、ああ、そうかもね゛え゛っ!」

クミナは上半身を落としてそのままサザリカを腕ごと抱きしめる。

「ん゛ん゛…………ちょっ、と、クミナ?」

「ああーサザリカの体気持ちいいー」

クミナは頬ずりをする。

胸がぐにゅぐにゅとサザリカにこすり付けられる。

「ちょっ、はははっ! くすぐっ……たい、あはははっ!」

サザリカが体を動かすがクミナにがっちりと掴まれていて身動きできない。

クミナは体を下へと滑らせていく。

「ひっ! ちょっ……っと」

クミナがサザリカの首筋を軽く舐めた。

数回舐めるとサザリカはさらに体を下へと滑らせ、顔をサザリカの胸に埋めて動きが止まった。

「はぁはぁはぁ……あー、やっと終わった?」

「サザリカあったかいなあ」

クミナは顔を埋めたままで言う。

「ちょっと、モゴモゴさせないで、くすぐったいって」

「んー」

クミナは抱きしめていた体を離すと再び四つん這いでサザリカの上に乗る。

「あーやっと解放された」

サザリカは手で額の汗をぬぐった。

「ちょっと朝から激しすぎでしょ……どっと疲れたよ」

「いやー最近してなかったから情欲が解放されちゃったねえ」

「あーそう……」

サザリカが腕を目の上に乗せる。

「そういえばサザリカ」

「ん?」

「夜、どこかに行ってた?」

サザリカの体が一瞬微かに震えて止まる。

「……ああ、ちょっと塔の方に行ってたよ」

サザリカが腕を目から外してクミナを見る。

「塔? なんで? というかなんで夜に行ったの? 真っ暗で何も見えないよ」

「塔のある方角は分かるからね、夜に行くことで朝とは違う結果になるかもとふと思ったんだよ。で、調査してみた」

「へー、どうだった?」

「いや、何も変わらなかったよ、いつまで経っても塔にはたどり着けなかった」

「あー残念だねえ、というかなんで一人で行っちゃうの」

クミナが頬を膨らませた。

「だってぐっすり眠ってたからさ。調査の事事前に言ってなかったし起こすのは悪いかなってね」

「悪いなんてことないのにー。あー、私も行きたかったなあ。また今度、今度は二人で行こうよ」

「いや、だから無駄だったって」

「いいからいいから、今日は二人で行ってみようよ、二人だと何か変わるかも」

「変わらないでしょ……というか一晩中歩いて疲れたから今日じゃなくて別の日にして」

「じゃあ明後日?」

「いやー……1週間後でどう?」

「えー……まあいいか。よいしょっ」

クミナは再び体を降ろしてサザリカを抱きしめ体をこすりつける。

「だからやめっ……苦しっ、あははっ! ははははっ!」

サザリカは脚をバタバタと動かす。


「ねーサザリカー」

「んー」

二人は川で水浴びをしている。

クミナは大きな岩に座り足を水に漬け、サザリカは浅い場所で座り、胸の下まで水に浸かっている。

「…………」

「どうしたー?」

サザリカがクミナの方へ顔を向ける。

「たまーに考えちゃう事があるんだよね」

クミナが岩の上に仰向けになる。

「何を?」

「こうやって何もない所で誰にも知られず毎日毎日生きて、なんの意味があるのかなーって」

「……」

周りには水と砂と岩山と少しの緑。

サザリカは川から出ると砂の上に仰向けになる。

「子孫を残すことなんじゃない、生きる意味って」

「はははっ、でも私達じゃ無理じゃない?」

「そうだね」

「あーどっちかが男だったらなあー」

「だったらしてたの?」

「そりゃあするよー」

「そうですか。まあ、生まれてしまったから生きるしかない、それだけだよ。意味なんていつまで考えてても納得出来るものは出てこないよ、きっと」

「そっかあ……そうかもねえ……ふあーあ」

クミナがあくびをして目を瞑る。

「でもサザリカと会えて、そういう事を考える事もあんまりなくなってきたよ」

「私も同じだよ、というか一人だったら今頃死んでたろうね」

「あははっ、サザリカはよわよわだもんねえ」

「そういうわけでこれからもよろしく頼むよ、一人だと死んじゃうから」

「こちらこそよろしくね、サザリカ」


――数日後

「サザリカーまだー?」

家の横に置かれている車の助手席に乗ったクミナが後ろを向いて声をかける。

車は洗車されていて曇り空の下でもピカピカと光っている。

しかし時折吹く強い風で砂が少しずつ車体を汚していく。

「もうちょっと待ってー」

家の中からサザリカの声が返ってくる。

「なにしてるんだろ」

サザリカは椅子にもたれると空を眺め、目を閉じる。

曇ってはいるが雨は少なく空気も乾燥している。

家の中からはガタガタと何かを動かす音が響く。

それから1分ほど経った頃、サザリカが家から出てくる。

背中には膨らんだリュック、手には鍵を持っている。

「ごめんごめん、鍵置いた場所忘れちゃってて」

サザリカが後部座席へとリュックを置いて運転席に座り込む。

クミナが閉じていた目を開ける。

「ふあーあ、遅すぎて寝ちゃってたよー」

「今度からはちゃんと決めた場所に置いておかないとね」

「刺したままでもよくない? 誰かに盗まれるわけでもないでしょ?」

「ああ、それもそうか」

サザリカは鍵を挿すとひねる。

エンジンの音が響き、車が振動する。

「えっと、方角は……」

サザリカは前方を見回す。

「あっちだよあっち、あのアリジゴクのあった場所のもっと先」

クミナが指を差す。

「ああ、あっちだね。じゃあ行こうか、準備はいい?」

「こっちの台詞だよー」

「それもそうか、じゃあ行くよー」

サザリカがアクセルを踏むとタイヤが回転し砂をまき散らす。

前に少し進むと車は左に曲がる。

そのままどこまでも直進していき、やがて二人の姿は地平線の先へと消えた。

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