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後編

「シャル、何でこんなことを」

「あの盗人は神を冒涜しました」

「いやいや、神罰はいーけどさー、聖剣を返してもらってからにしろよー。探すのめんどいだろ」

「おいおい、ポール。違うだろ」

「それなら問題ありません。さあ、勇者様。聖剣を感じてください」

「え? 俺に丸投げ?」

「ま、勇者ならそのくらいできんだろ」

「は? 何言って」

「よさぬか! それよりも、どういうことじゃ? 前勇者が聖剣と契約してないとは」

「契約をしていました。クレールは盗人の言葉を信じるのですか?」

「いや、しかしな」

「貴女も冒涜者ですか?」

「ちょ、クレール様に手を出すのはヤバいって!」

「お主は馬鹿か? 妾には王族の血が流れておるし、婚約者の王子が黙ってはいまい」

「私はブークリエの大巫女です。私の言葉は神の言葉。皆分かってくれますよ」

「ストーップ! いい加減にしろよ、俺達仲間じゃないか」

「……分かりました。勇者様の顔に免じて今回は不問にしてさしあげましょう」

「妾はいい加減我慢の限界じゃ。彼女にはまだ聞きたいことがあったのにだな」

「何をー?」

「それは……あ、なぜ無事なのじゃ?」

 仲間割れが面白く茶番劇を見ていたけど、美少女の聞きたいことが気になりつい声をかけてしまった。

「嘘、そんな」

 血の気が失せた顔色でフラリと美人さんがよろめく。

 そりゃぁ、そうだよね。

 ご自慢の神聖魔法が全く効いてないってことは、すなわち信仰心が足りてないってこと。

 つまりは、大巫女(笑)っていう存在になっちまうんだよねー。

 美人さんはプライドが高そうだし、敬虔な信者っぽいしダメージでかそう。

 ウケケケケ、他人の不幸は蜜の味ぃ。

「そういえば、自己紹介がまだだったわね」

 にんまりと笑い、スカートの裾を持ち上げ軽く膝を折る。

「マコト・スルスと名乗ってますけど、正式名はリュミエール・ブリエ・ソレイユ・デエスでっす♪ デエスの名を持つ私に神罰が効くはずがないっしょ、ごっめんねー」

 いち早く美人さんが私の名前の意味に気付き、サッと青ざめる通り越して白くなっていくのを見るとゾクゾクしちゃうー。

 私に対して行った散々な態度、暴言に今頃気付いて後悔しちゃってますかぁ?

 うふふふふ、ざまーみやがれですぅ。

「光輝く太陽の女神って、女神だと?」

 眼鏡が直訳してくれ、ますます動揺していく勇者パーティ。

 いや、一人勇者が置いてけぼりだけどね。

 こっちの世界の人間じゃないからしょうがないか。

「勇者的には聖剣と言えば分かるよね。聖剣ってね、『神聖なる神の一柱を宿すことに耐えうる祝福された世界が生みし剣』ってのが正式名称なの。だけどね、人間って我儘だからくだらないことで聖剣を使うんだよ。決定的なのは夫婦喧嘩だったね。いくら優しい私でもぷっつーんってきちゃってさ、思わず異世界に逃げちゃったぜぃ。んで、聖剣の中身ってゆーか世界から女神が消えたもんで、各国が慌てて呼び戻そうとして勇者召喚が始まっったんよ」

 召喚された人間は良い迷惑だよねー。

 自分には何一つ落ち度がないのに才能ないと殺されちまうし、多分女神がなかなか引っ張り込めないから八つ当たりで誰かが殺したのがそのまま風習になった気がするぜ。

 んん、私のせいかって?

 いやいや、才能ない人間殺せって命令したわけじゃないので関係ないべ。

 第一、夫婦喧嘩に聖剣持ち出す馬鹿にさ、誰がついていけるかって話じゃねー?

 私は無理、絶対に拒否るし実際ぷっつーんってなっちゃたしぃ。

 しかも、相手は相手で魔剣持ち出してさ、城壊して地形変えたりとえっらい被害出したんだよぉ。

 さらにさぁ、誤解が解けたら何事もなかったかのようにいちゃいちゃピンクいオーラ出して、マジありえない耐えられない死ねよって感じじゃね?

 恐ろしいことに被害被こうむった臣下も民も許しちゃって、のほほんとパーティ始めちゃうってどーゆーことっスか。

 怒りを覚えた私が悪者ですかい。

 ちなみに、魔剣ってのは聖剣と正反対の力を持つ剣のことだよ。

 正式名称は『魔に落ちし神の一柱を閉じ込めることに耐えうる呪われた世界が生みし剣』て指す通り、悪いことした神様を反省させるための牢獄だぜぃ。

 罪を償うまで所有者の奴隷にならなきゃなので、魔剣に閉じ込められるってすんごーい不名誉なんだよ。

 だから我儘放題の神様にも抑止力として働くんだけど、どこにでも馬鹿っているんだよね、うっざーい。

「待て! そうすると、聖剣は太陽の女神のこと」

「そですよ。今代の魔剣はソンブル・シランス・リュヌ・デュー、月の神なので聖剣は姉である私が務めてるの。とんだとばっちりよねー、超迷惑ぅ」

 天界では身内の恥は家族でそそごうって方針で、白羽の矢が姉の私に立っちまいやがったのさ。

 なまじ弟の力が強すぎるせいで釣り合いが取れる相手がいねぇっつー事情があったんだけど、親も親戚も皆して酷くねーかい。

 グルになってか弱い女神の私をハメやがって、怒りで弟殺しそうになったじゃんかー。

 危うく姉弟で魔剣行きにになりそうだったから、最高神の髭ヤローが涙目とかマジウケたわぁ。

 まあ、やんちゃして魔剣になっちった弟の刑期そろそろ明けそうだし、私が聖剣でいるのももう少しで終わりなんだけど勇者パーティには黙っておくべ。

 そのほうが面白そーだしぃ。

「そ・れ・か・ら、あんた断ったら犯罪者って言ってたけど、人間如きが神を相手に何ができんの? 通じねー相手がいんのをさ、覚えたらどーですかー」

 神にとって人間が勝手に作りやがった法律なんぞ関係ねーですもん。

 厳守すんのはあくまで世界の法則なだけであって、それ以外は好き勝手あくどいことも平気でしちゃうのが神様なんだぜ。

 そもそも善とか悪とか存在しねーし、人間の尺度で測られてもだから何?って感じぃ。

 べーっと明らかに馬鹿にしながら舌を出し、悪意を込めて仕返しをしてやる。

「覚えてないかもだけど、私、あんたに殺されたの。殺した奴らの仲間に従うほどマゾくねーし、安い女じゃないっスよー」

「殺したじゃと?」

 険しく眉を顰める美少女に眼鏡は思い当たったのか額に手を当て天を仰いじゃう。

 女神バージョンになれば色彩とか容姿、雰囲気すら変わって、もはやあんた誰?ってなるけどさ、今の私は人間のフリしているので目立つ色は避けてんだぜ。

 イコール平凡な容姿ってことで、殺されたときと全く変わんない同じ姿だよ。

 きっと、眼鏡は殺した奴を一々覚えておくってか、召喚した奴を同じ人とすら認識してなさそーじゃん、どーでもいーけどさぁ。

「そ。勇者召喚で女神を世界に取り戻すって目的達成したのに気付かずに神殺ししたんぜ。命令したのはさー、なんと大巫女様(笑)なんだよ。とんだ敬虔な信者もいたもんで、女神様本人もビックリよー」

 揶揄やゆって最後は棒読みにすると、美人さんの肩が跳ねて薄い唇から血が流れる。

 今にも死にそうな表情で戒律に自殺を禁じるものがなきゃ、自決してんじゃねーってレベル。

 勇者パーティに嫌な空気が流れてくけど、そろそろこのくらいで勘弁してやろっかなぁ。

 もちろん、美人さんと眼鏡からは私の祝福を除くのは忘れねーぜぃ。

 ってか、ぶっちゃけこんな奴らに時間を割くほど暇でもねーし。

 主婦的にはいい加減掃除に戻らなきゃいけねーよな。

「それにさー、聞かれなかったから答えなかったけど、聖剣の契約者いるから無理ってのが一番の理由なんだぜぃ」

 当たり前だが二重契約は受け付けておりませぬー。

 契約者が死なない限り他者と契約を結ぶことはできぬって仕組みになってんだよ。

 まさか私の契約者を殺すなんて選択したら、それこそ女神様の天罰が落ちちゃうぜ。

 戦いとか司ってないけど、神でも一、二を争うほど強いんだからね。

 お前は絶対に魔剣になんか堕ちるなって、ヅラの最高神が土下座するほど実力は折り紙付き。

 うふふ、天界じゃ私を怒らせるなって不文律があったくらいなんだからと胸を張ってみるー。

「契約を、なぜじゃ?」

 咎めるような視線を向ける美少女に、私は子どもへ向けるような優しい微笑みを見せちゃう。

 怪訝そうな表情を浮かべ戸惑ってるようだけど、もう勇者パーティに構う時間は終わっちゃったよー。

 だってさ、玄関が開いてリュックを背負ったアルが出てきちったんだもん。

「おい、マコト。遺跡調査に行くぞ」

「うん、行こ、行こ」

 ものの見事に派手で目立つ勇者パーティをスルーしている夫に拍手を送っちゃうよー。

 無視されたことがなさそうな勇者が呆然と立ち尽くし、眼鏡や美人さんも唖然と口を開いたまま動かずその姿は滑稽で見ていて愉快だ。

「いや、待て! その男が契約者か」

 美少女だけが気付いたようで声を荒げ、アルはさらに勇者パーティの視線を独り占めするが気にしてない。

 違うか。

 興味もなく、眼中にすらない。

「そだよ。私の夫アルフレド」

「何だ、こいつら。それよりも早く行くぞ。遺跡は待ってはくれない」

 勇者パーティを一瞥するも頭の中は遺跡のことしかないみたい。

 美少女に美人さんもいるのに目移りしないって凄いよね?

 普通はガン見して妻が夫をボコるのが定番なのに、良い意味でいつも裏切ってくれて厭きないわぁ。

 さっすが、私の旦那さんってか、遺跡へのお誘いってことはデートってヤツですよねー。

 くふふふ、暗い中危険な場所で吊り橋効果的に二人の距離が縮まったりなんかしてー、そいで私の重要性をより理解してくれてさすが我が妻とか言っちゃってさー。

 キャー、腕が鳴るわぁ!

「了解でっす。ってことだから、聖剣は諦めてちょーだいねぇ」

 ヒラヒラ手を振って勇者パーティとお別れし、私は下心満々でアルとの遺跡デートへ出かけた。



一人称のせいか、ふざけた感じの主人公にしたせいか、文章とゆーか、口調が安定してません。

うう、難しい。

いつかリベンジしたいです。


とりあえず、お話はこれにて完結。

読んでいただきありがとうございました。

それなりに楽しんでもらえたら嬉しいです。


他の作品も完結目指して頑張ります!


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