第37話 ソフィーの覚醒と鉄不足問題
さくらたちの作業を眺めつつソフィーの魂の情報の転送作業を行う。
しばらくすると無事完了したらしく、元々の結晶体は徐々に色を失っていく。
どうやら魂の情報が中に入っているときは色が付くようで、中に何もないときは色を失うという仕組みらしい。
今まで結晶体の身体をいじったことがなかったので新しい発見だ。
「雛菊、さくら。完了したようだよ」
「はい、ご主人様。こちらでも確認できました。身体の方に問題はなさそうですので、あとは身体と魂が同期できれば直に目覚めるはずです」
ソフィーの魂自体は定着しているようなので、あとはソフィー自身が目覚めようとするだけで完了することになる。
とりあえず、慣れない身体だと思うので意識をこちらに向けられるように誘導しておこう。
(ソフィー? 聞こえるかい? 今君は夢の中にいるようなあいまいな状態なはずだ。私の声が聞こえる方向に向かって歩くようなイメージで意識を移動させてくれ。うっすらと道のようなものが見えるはずだ)
今私はソフィーの意識に語り掛ける形で誘導を試みている。
とはいえ、夢の中に干渉して抜け出すための道のイメージを作ってあげるくらいしかできないんだけど。
「ご主人様。ソフィーさんの覚醒レベルが上昇しています。誘導の効果が出たようですね」
「お、じゃあもうすぐだね」
そうこうしているうちに覚醒レベルが目覚めの域に達したことを装置が教えてくれた。
私たちは早速ソフィーの入っている医療ポッド前に行き、彼女の目覚めを待つ。
しばらくした後、ソフィーはゆっくりと目を開き、こちらに顔を向けてから周囲を確認し始める。
「ここは……」
「ここは医務室だよ。新しい身体に問題はないかい?」
軽く声を掛け、ソフィーを気遣う。
するとソフィーは自分の身体を確認し始め、少しけだるそうに動かしつつ状態を確認していく。
「はい。まだなんとなく慣れない感じはありますが問題ありません。それにしても、見たことのない施設です」
物珍しそうに再度周囲を確認していく。
ただの鉄製の船くらいなら第二紀にもあったのではないだろうか?
「知らない機械がたくさん。私の生きていた時代にも機械はありましたがこのようなものはありませんでした」
そう言って指さしたのは備え付けの転移装置だ。
まぁ、たしかにないかもしれないね。
「身体が慣れるまではこのモジュールの居住区で暮らすといいよ。まだ状況は確認できてないけど」
「居住区、ですか?」
ルピナスの移住用のモジュールには大きな都市1つ分ほどの街が作られている。
今は住む人がいない上に管理も行き届いていないので瓦礫などもあるだろうけど、住めないほどではないはずだ。
「現在は第一地区しか居住に適していません。ほかの地区はマスターの状態の関係で時間停止状態になっています。開放したとしても管理することはできません」
「とりあえず居住区のほうも少しずつ整備しなおしていかなければいけないということだね」
「はい」
さすがに長い年月誰も使っていなかっただけあってすぐに使用できる状態ではなかったようだ。
それでも第一地区、小さな街程度の大きさだが、それだけでも利用できる状態なのは僥倖だろう。
「必要な素材は何がある?」
小さな街といってもそれなりに広いのだ。
作業用ロボットに管理を手伝ってもらわなければならないだろう。
「当面は鉄でしょうか。それ以外の物資も必要ですがまず鉄です。全てにおいて鉄が必要です」
「鉄かぁ……」
鉄が足りない問題はまだまだ解決しそうにもない。
鉱山1つ分程度じゃ絶対足りないだろうから、まずは交易を念頭に置いた方がよさそうだ。
「よし、当面は鉄の交易ができるように整備していこう」
「はい」
「承知致しました」
さて、何を売ろうか?




