第31話 結晶鉱山1
無属性の空間結晶へ続くポータルを開いた瞬間、空は一気に暗くなり、木々の隙間から見えていた太陽は皆既日食のように影が覆ってしまった。
空間の狭間への道を開けた影響でこちらの世界が歪み始めているのだ。
「じゃあ行ってくるよ。くるみおいで」
「もちろん」
「うん、お兄ちゃん気をつけてね。気絶したハルさんは介抱しておくから」
「おうよ。あたしはいけねえからここで待ってるぜ」
ハルさんは残念ながらポータルを開いた影響で発生した波動により気絶してしまったようだ。
--空間の狭間 結晶鉱山--
ポータルを抜けた先には赤黒い空が広がっており、その中心に空中に浮遊するように1つの白く輝きを放つ鉱山が存在していた。
外観は城に結晶が生えたような姿をしている。
「こんな外界の近い場所に鉱山なんて、ひどい状況ね」
「雛菊に聞いた限りだと、過去の人類に空間結晶に接触した人がいるらしいんだよね。まぁそのおかげで滅びたらしいけど」
「当たり前でしょ。人類に扱える新エネルギーとでも思ったわけ?」
「どうだろうね。ただ過去の人類は滅びたらしいけど遺伝子や因子は今の人類に引き継いでいるんじゃないかな? 私たちの移民団の遺伝子も引き継いでいそうだし」
「ふぅん」
エリーゼさんのような空間結晶に適合してしまう人間はそう多くはない。
適合してしまう場合、大抵は遺伝子や因子を取り込んで下地ができてしまうようだ。
--空間の狭間 結晶鉱山 外周--
結晶鉱山へと続く道は何もない空中を歩いて向かうほかない。
実際には何も見えないのだが、鉱山入り口に向かって見えない上り坂が存在している。
ふと下を見てみると、その奥には何もない赤黒い空間がただただ広がっていた。
「相変わらず不気味なところね。どうしてあいつらはこういう場所に作るのかしら」
「集まりがいいんじゃないかな? アレが出したごみを元に生成しているようだし」
「アレといいこいつらといい、ほんと狭間の生命体はわけわからないわ」
「でもまぁ話が通じるだけいいさ」
こういった狭間に存在する結晶鉱山には必ず誰かがいるとは限らない。
いれば面倒ごとが起きることが多いが、いなければ基本的に取り放題だ。
ちなみに、この結晶鉱山に生えている空間結晶は特殊武器の回路基板に使うことができるので、組み込めば様々な力を引き出すことができるようになる。
「じゃあ早速中へ進んでいくよ」
「うん」
今回の結晶鉱山は城のような形をしているのでその城門から中へと入っていく。
--空間の狭間 結晶鉱山 内部 エントランス通路--
今回の結晶鉱山の内部はまさに城といった内装をしていた。
いたるところに結晶が生え、絵画や調度品と思しき物も水晶のような結晶の形で飾られている。
まるで冷たい氷のようにすら思える。
「ずいぶん凝った作りね。どんな奴が作ったのかしら」
「どんな人物かはわからないけど、生前は芸術家だったのかもしれないよ」
「どういった経緯でこんな結晶生命体になるんだか」
結晶生命体とは結晶核に生命の情報が格納されて生まれてくる存在のこと。
人間みたいなのもいれば、虫や動物も存在している。
まぁ情報の記録媒体のようなものと思ってもらえればいいかな。
例えば誰かの人生の情報がどこかのタイミングでクリスタルストレージに保存され、それを基に新しく生まれ変わらせるといった具合だ。
つまるところ、こういった空間結晶には何かしらの情報が格納されているということだ。
「この通路に飾られている調度品を見る限り、どこかの時代に存在した王侯貴族かもしれないわね」
「ということはここには結晶人がいるってことになるね」
「話は通じるのかな?」
「見かけたら話しかけてみるか」
そんな事を話しながら通路を進んでいくとその先には大きな扉があった。
そっとその扉に近づき、触れる。
すると扉は音もなく開いたのだ。
--空間の狭間 結晶鉱山 内部 1階大ホール--
扉の先に広がっていたのは大きなホールだった。
左右に階段が取り付けられた3階まである大きなものだった。
「見た目通り城というわけか。さすが狭間の空間にある構造物なだけあるね」
「鉱山らしい鉱山には大抵人が住んでなかったものね」
この大きなホールにも様々な調度品が存在していた。
壺や絵画、中央にはなんと噴水まである。
天井には大きな光を放つシャンデリアも完備されている。
「うーん、豪華だ」
そんな光景に見惚れていると、不意に前方2階にある扉が開いた。
「なんだ?」
その扉を警戒しながら見つめていると、1つの小柄な人間型の存在が出てきた。
光に照らし出されたその人間型の存在は小柄な少女のものだった。
銀色に輝く長い髪に金色の瞳をした儚げな少女の姿をしている
「こんな場所に他の生き物が来るなんて珍しい。ねぇ、あなたは誰?」
結晶生命体の少女は美しい声でそう問いかけてきた。




