第二話 魔法の針と新たな仲間 (6/6)
勉強机に裁縫道具とセオルを並べて、ぞうさんとうさぎちゃんの見守る中、私は腕を組んだ。
ぞうさんには耳に星の形の刺繍を、うさぎちゃんにはリボンをつけたんだけど、セオルにはどうしようかな。あんまり可愛い飾りは似合わないだろうし……。
フェルトの金髪に、刺繍の青い瞳。つり目でキリッとした表情は、あのこだわりのお母さんがぬっただけあってぬい目も細かいところまで揃っている。
しばらく悩んでから、私は金髪と同じ金色の糸を選んだ。
魔法の金色の針をそっと箱から取り出すと、まっすぐまっすぐ、糸を通す。
針から伝わるキラキラの魔法の力を感じながら、ドキドキする心臓を深呼吸でちょっとだけ落ち着かせながら、マントの端っこに小さく三日月の形を刺繍した。
針を箱に片付けて、魔法の光がおさまると、セオルはスタッと私の手の上に着地した。
昨日のぷっぷちゃんとは着地からしてかなり違うなぁ。
片膝をついて、もう片方の膝を立てていたセオルは、ゆっくり立ち上がると片手を私に差し出して礼をした。
「おはようマイレディ。ボクはセオル。ボクに心を分けてくれたのは、キミだね?」
うん、さすが咲歩の推しというか……。
この人探偵なんじゃなかったっけ? 王子様の間違いかな?
人型のぬいぐるみに命を吹き込むのってはじめてだったけど、この人、ぞうさんたちと仲良くできるのかな。
「う、うん」
私が頷くと、机の両端に座っていたぞうさんとうさぎちゃんがあいさつする。
「こんにちは、僕はぞうさんだよ。これからよろしく」
「あたしはうさぎちゃんだよーっ。一緒にいっぱい遊ぼうねっ♪」
「ああ、こちらこそ、よろしくたのむよ」
セオルが二人に両手を差し出して、ニコッと笑う。とたんにキツそうな雰囲気がやわらいで、いたずらっぽい印象になった。
そっか、セオルは元がつり目だから、笑っても目の端が上がってて狐のお面みたいな顔になるんだね。
「わたしはみことだよ。セオル、あなたに相談したいことがあるんだ」
私は、セオルに咲歩の写真がなくなってからここまでに分かった事を話した。
セオルは私のふでばこに腰掛けると短い足を器用に組んで話を聞いていたけれど、私が話し終えると「なるほど、話は分かったよ」と立ちあがった。
「犯人は咲歩さんの教室に自由に出入りできる人物……。ぷっぷちゃんの証言から生徒であると仮定して良さそうだね、同じクラスかどうかは断定できないが、他学年の生徒の出入りはなかったようだし、同学年の可能性が高いだろう」
あ、そっか。別のクラスの人って可能性もあるのか。
私だって隣のクラスから咲歩のクラスに出入りしてるし、他にも同じように別のクラスから遊びに来てる子っているもんね。
「現在の状況下で解決に近づくには、マイレディか咲歩さんが」
……マイレディって私の事? それずっとそう呼ぶの?
「休み時間に手の中にぷっぷちゃんを隠して教室内や隣のクラスの生徒たちを見せて回るのが一番だろうね」
「あっ、それいいかも!」
「……まあ、これはぷっぷちゃんが正確に相手の顔を覚えているなら、だけれどね」
セオルが少しだけ苦笑を浮かべて付け加える。
今までなんで思いつかなかったんだろう。
こんな簡単なやり方があったなんて。
「セオル、ありがとう!」
セオルは「このくらい、お安いご用さ」とカッコイイポーズで答えた。




