表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/85

九話

照り焼きタレに続いての[雷油]の納品依頼がががが……。

其方は知らんと突っぱねた。なんせ元々食品としては出して無いから。要は膨大な辛味成分を油に移せば良いだけなので、欲しけりゃ自分で作れ、である。

むしろ、これが切っ掛けでこの世界のトウガラシっぽいのが流通するようになったら、その方が俺的には嬉しいし。

一応、トウガラシが自生しそうな地域のそれっぽい素材を臭わせる話はしたので、後は商人の本領発揮で頑張ってもらいたいもんだ。

予想外だったのは、照り焼きタレのルーツもそっち関連に勘違いされた様子。俺の周辺から変な視線が減り、少し都市内での活動が楽になったわ。

其方は醤油と砂糖がありゃいい話なので、更に言えば大豆に似た性質の豆が有ればいい話。特に麦の耕作をする地域なら休耕地対策で豆を使う知識もあるかもしれない。其処らを調べてこっちにも情報流してくんないかねぇ。


もし醤油が存在するなら、当然その加工の前段階である(ひしお)も取れる。味噌の原型とも言われるそれが有るなら、この世界での天然の味噌汁も楽しめるかもな期待が生まれるし。


そんな感じに日常は続いて。

異世界生活もそろそろ三ヶ月目。


変な味を開発する外道気味な魔物駆除業者。最近の俺の冒険者としての評価は良くも悪くもそんな感じで、あまり世間的な強者というイメージは無いようで。

ある意味想定通りなので俺的には問題は無し。

ああ、なんか裏では、実は俺は何処かの国から出奔した錬金術士なんて噂も出てたり。

まぁ、大量のワインを買っちゃ照り焼きタレに変えてんだから、そう思われても仕方が無い。流石に三ヶ月近くやってれば作成法も勘繰られるだろう。チートでとまではバレてはいないが。

だがそれで完全に嫌な視線は消えたので良しとする。

どうやら、この世界はファンタジーではあれ魔法関係は希少の様子。どんな形態であれ魔術士らしいと思われると、下手なちょっかいは危険な相手と判断されるようだった。


ギルドの担当さんからは「魔法薬関連の納品はないのかしら、チラッ、チラッ」な視線を咋に貰ったりするが、それは流石に無理っす。ゴメンナサイ。

そういう依頼は専門家にどうぞ。


さて、そんな視線もちゃんと理由はあったらしい。

最近は冒険者の負傷率が増えていたのだ。

理由は、新たな魔物の登場。緑の肌の子供のような体躯、しかしその容貌は老人のようで、頭部のこめかみからは小さな双角を生やした小鬼の邪妖精。ゴブリンである。


ゴブリン。

おおっ、ゴブリンっ。

魔物の代表ってやつじゃんか。

いや、俺基準のもんだけど。


この世界の人型の魔物は放浪型というか回遊型といか、季節の変り目の渡り鳥が如く、一定の時期に一定の襲来が続くって感じに来るらしい。

更に言うと、ゴブリンは人型魔物の先遣隊な感じの扱いで、その後に徐々に強い魔物が増えて来るのだとか。

例年通りとすると、ゴブリンの次はオーク、その次はトロールとなる。

聞いた感じ性能や習性は俺の知識とほぼ同じのようだった。

ああ、R18系の女性関連は無し。連中にとって人族は余さず食欲の対象と言う事で。

まぁ、質の悪いイナゴの大群と同じだ。


で、そろそろ商隊を襲うゴブリンも出始めた。

対応した連中の感覚的に、今回はその数も多くなっているらしい。人型魔物は強さと多さは反比例との事で、一番下のゴブリンの数が多いとなると、個体数の少ない筈の続くオークやトロールの総数も増えそうなと予想し心配の種になってたそうで。


なる程、ギルドとしては冒険者の存命率を高めたい心境も解るわ。


でも無い袖は振れんってやつな訳で。

味付けだけじゃ薬にはなりません。


とりあえずは、俺の活動範囲にもゴブリンが出るかもな注意を受けるのに留まったのだが……、その日に早々に遭遇しましたわ。


ゴブリンのイメージは、ゲームでの仕様に順じた通りというやつ。MAPでの反応がホーンラビットとは全く違ったので確認しにいったのだが、汚い臭いといった印象が見た目だけで、実際の体臭はあまり感じられないとこに変な違和感。また俺が知る他の魔物と違い、一定の範囲に接近すると此方を感知するといった生態は持っていない感じ。

現に、物陰伝いに背後3m程度まで寄っても無反応。

トドメと言うか、そのまま背後から始末してみたら死体が残らず塵と化して消えた。その塵もやがて大気に溶けるように消え去り、後に残ったのは長さ20cm程の小さな骨。所々に紫色の結晶が埋まった骨は生物臭も無く、まるで作り物のような代物である。

ギルドに戻った後にそれを聞いてみると、いわゆるソレがドロップ品。人型の魔物は俺が見たような現象を起こして、死体を残さないのが仕様なのだとか。

因みに、ゴブリンは骨、オークは肉塊、トロールは眼球と背骨がドロップ品となる。それらが討伐証明にもなるので、可能な限り回収はした方がいいとの事。

買い取り額は高くは無いが、評価を上げる対象としては高ポイントなので、持ち返りの判断はその時の所持重量次第だそうだが。


豆情報としては、オークの肉は立派に食材。眼球と背骨は錬金素材として、そこそこ高値で売れる。ただし、鮮度で価格が変動するので確実に儲けれるとは限らない。

収納持ちの俺には良い情報ではあるが、錬金の方は劣化の早い素材として有名なので、派手に売れば確実に変なトラブルの元になる。


豆情報其の二としては、ゴブリンの骨に関してはほぼ価値無し。埋まっている結晶は魔石の欠片というやつで、微量な魔力を内包している。それでも価値無しの判定が下るわけなので、まぁ、性能は御想像に任せてなやつで。


最後に担当さんが、骨の最も有効活用されるのを実演してくれた。


買い取りを済ませた其の骨を手にして軽く振る。すると、結晶の部分に僅かに灯る魔力の光。

それは子供などが自分の魔力の操作を学ぶ時にやる練習兼、遊びとの事。自分の指先から魔力を骨に送る操作を感覚で覚えるのだと。


何と言うか、俺の感覚だとそれ、サイリウムの棒を振るような感じなんだけどねぇ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ