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十話

ゴブリン被害が出始めて一週間、ギルドの様相は担当さんの予想通りの状況になっていた。街道沿いで偶然出会う形から待ち伏せのようなものへ。都市の外壁近くに夜中に現れた。最近はゴブリン数体をオークが指揮するような感じの報告も。

冒険者への被害も増えていて、今まで見なかった神官っぽいのや、本物の錬金術士がポーションを納品している場にも出くわしたり。


……こりゃ、そろそろ自分も気持ちを決める時期かなぁ。


ああ、トンズラって選択は無いので。

同業者の連中とも何だかんだと三ヶ月。いまだに名前は知らんけど、顔はもう覚えている奴も多い。大概は宴会で知った奴なんで情が無いとも言えんし。


と、言う訳で。


今回のは、俺も積極的にこの件に噛むかという意思表示。


今までは何時もの狩猟活動に乱入して来たのだけを相手してたんだよね。結果的に仕事の三割近くがゴブリン退治になってたけど。


覚悟を決めたので準備開始。

先ずは武器と防具の調達へ。今までは必要性も感じなかったんで定期的な補充は矢ぐいしかせんかったし。

ゴブリンは直に見たし相手もした。しかしオークとトロールに関しては知らんので、前情報として得たものを参考に武器を選ぶ。

オークは人族とほぼ同じガタイの筋肉デブ、最大で身長2mとの事。トロールは平均して2.5mはあり、そこから更に進化した特殊個体は3~4m程にもなる。

どう考えても、両手持ちの長物武器は必須だわな。正直今の弓で通用する相手とは思えんし、もっと強い弓も用意した方が良いかもか。

色々と試させてもらう。

槍は何とか使える。突くと掃う程度で素人丸出しだが、チートの身体能力で威力だけは乗せれる。同じ理屈でバトルアックスも大丈夫。力の乗せ方なんて技は無い。最初から最後まで全力で振りきる無茶っぷりだが。ちょっと片手で振ったら武器屋の店主に驚かれたが、まぁ、見なかった事にしてもらう。

弓に関しては希望の物が無かった。この都市で冒険者相手の武器屋では、純粋に戦闘用といった弓は無いのだそう。まぁ、街道沿いの雑魚な魔物狩りがメインだしねぇ。

ただそう言う指摘をくれた事は、ちゃんと俺の望む物を扱っている店もあるって話だ。この都市の武装自衛団用の武器屋なら、そう言った武器もあるそうだ。

結構貯蓄は有るし、またルテでの貯金が貯まってたので其処から試した武器をひと揃い購入。防具屋は隣なので、其処で今より頑丈な物を調達する。こっちに関してはこの三ヶ月、迂闊と油断で何度も壊しては直し、また買い換えてを繰り返してるので店主も慣れたもの。俺の希望に沿った品は直ぐ決まり、30分程度でサイズ調整も済んだ。

後は一見になる新しい武器屋で、希望の品を探すだけ。


……あれ、何かちょっとこれ。チートで俺Tueeな展開の始まりな感じ?


そんな錯覚を抱けるくらい、今の俺って『いざ、戦いへ!』な気分だぞ。


準備を終えて都市の外に出た頃には、すっかり(気分は)戦闘モード。MAP内のゴブリン反応を選択して近場から攻めて行く事にした。



……などと意気込んではみたが。

やってる事は基本に忠実な感じで。


自衛団用の武装はいわゆる人間対人間が想定の武器群だった。

地球は欧州での○○騎士団とかで使うような……ある意味俺の知識にある感じのやつ。

なる程、仮想敵は魔物より敵国の人間ってやつな訳だ。

更に言えば個人用の武器ではなく軍用という扱いなのだろう、最低でも小隊規模で互いに補助しながら動くからこその強力さを想定している作りのものだった。

つまりは個人で扱うには隙ができやすい、重くて連撃性能の低いもの。

一撃が強力になるが故のデメリット持ちな武器となる。


長弓からの射撃は曲射撃ち下ろしで威力を出す仕様で、基本は何十人が一斉に射る矢ぶすま攻撃用となる。サイト機構など無いので、射る時の姿勢は狙うというより心の眼で視るな感じの大雑把な感じ。だからこそ、そのアバウトな部分で直射も可能と言えるのかね?

正直、前の弓での感覚を元にチートが頑張って補正してくれてるから使えている。

以前の二倍近い距離をほぼ直線で飛ぶ矢がゴブリンに命中。急所や胴体に当ればその打撃力で即死させ、手足に当れば鏃の激辛に拒絶反応をだして行動不能と化す。

とりあえず、雑魚は問題無しな感じだろう。

例の魔物大集合も遠隔攻撃だと起きないようで、その部分の線引きがどういう理屈なのかは、いまいち判断できていない。


ついでに買った両手大剣とかハルバードとかガン○ムハンマー風の代物とかは……チャンスがあったら使ってみよう。

まだ新武装の試用を始めたばかりだし。いきなり大リンクとかもう勘弁だし。



初めてオークに遭遇したのはゴブリン対応を始めて二日後の事。

それまで出会うのはただの集団な感じのゴブリンだったのに、突然こちらのレンジ外攻撃の裏を描くよう接近し、連携のある動きもする一団が出たと思ったら、そのリーダーがオークだった。

とは言え、これは前もって情報を聞いてた事もあって混乱少なく対応ができた。多少フェイントを含む攻撃を受けてダメージは貰ったが、強化した防具で深刻な被害も無い。

またこれでゴブリンの攻撃は怖くないのも理解したので、見た目怪力そうなオークだけに集中できた。

前世の妄想知識だと性欲の権化っぽいオーク。現物は豚のマスクをした腹周りが豊かなブロレスラーの雰囲気というか、あまり贅肉過剰な体型ではなかった。武器は何処で調達して来たのか随分と立派で頑丈そうなバスタード。人間なら両手持ちで振り回す勢いを片手で余裕な感じに振って来る。流石にその攻撃を食らって試す気は無いので回避には最善の注意を。奇襲して来たゴブリンへの舐めプ続きで弓のゼロ距離攻撃も出来ないではないが、防御手段もとっときたいと武器は両手大剣に替えた。

そして実感。


……大剣、使えねー……


大剣と言っても某最終的な幻想ゲームの煙っぽい主人公が待つような鉄塊では無い。

見た目は片手剣がそのまま1.5倍に拡大された感じの、案外華奢な雰囲気の実用的な代物だ。あくまで普通の人間が握って振れるような……な。

なので本当に華奢だった。

少しでも刃を立てれ無い振りで剣身が撓む。その「くわんくわん」な振動で手元がブラされる。挙句の果てに、相手が硬くて割れる砕けるならまだ格好もつくのに、実際はただ曲った。

……正直な感想、同じ長さの鉄パイプにすら劣ってるぞ、これ。

謙虚な精神で言うなら「自分の未熟さ故の無様を晒した」。しかし同時に「とんだ不良品掴まされたか?」とも思う。

結論、二度とこんな剣使ってやるかに決定。


そんな憤りに発奮したのか、大剣捨てた次の瞬間には両手斧を[収納]から装備してオークの武器にフルスイングしてやった。今度は先端だけでも鉄塊仕様。チート腕力も相まって完全に打ち勝った。

万歳の格好で己の武器を背後へと放り投げたオークさん、さようなら。

味付け要らずの素のままの威力で、返す振り下ろしをその脳天に落としてやった。


おおっ、我ながらバイオレンスな勝ちで行けた!




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