最終話 「事件・事故」
バスに乗っていた時の話です。
旅行先で路線バスに乗り、最寄りの駅へ向かっていました。信号待ちでバスが止まって、席に腰かけていた私は窓から外を見てました。目の前に古い民家があってその玄関があいています。
不用心だなと思った瞬間、中から絶叫が響きました。
「誰か──‼ 早く来て、お父さん‼ お父さん‼」
窓が半分開いていたため、家の中からバタバタ階段を下りてくる足音まで聞こえました。何があったんだと思ったとたん、前の信号が青に変わってバスがその場所を離れました。
結局、それで何があったかは全くわからずじまいです。とにかくものすごい叫び声でした。
突発的な出来事と言えば、学生時代の話です。
「あっ」
講義をしていた先生が急にそんなことを言った後、窓に駆け寄って外を見ました。
その教室は五階にあって、とても見晴らしのいい場所です。しばらく硬直したように外を見下ろしていましたが、何も言わずに先生は走って教室を出て行きました。
もちろん、教室は大混乱です。何が何だかわからないまま友人とぽかんとしていると、そばにいた女性が泣き出しました。
「私、見ちゃった。見ちゃったよー」
周囲の状況からすると、どうやら隣の教室棟から飛び降りた人がいたらしい。彼女以外にも何人か見てしまった人がいて、先生も落ちた瞬間をちょうど見ていたようでした。
その後はもう授業にならず、講義は全て休校です。様子を見に行った人もいますが、私にそんな根性はなく、とっとと家に帰りました。
窓から眺めた猛者によると、飛び降りた人は女性だったそうです。教室を飛び出した先生が人工呼吸をしましたが、やはり即死だったとのこと。……先生すごい。
その後、顔見知りの先生が教えてくれたことですが、飛び降りた学生は学校になじめず、下宿先で引きこもっていた人でした。
アパートで自殺を試みたものの手首を切っても死にきれなくて、傷口をバスタオルで止血しながらタクシーに乗ってやって来たと。で、教室の向かいの棟のトイレの窓から飛び降りた──との話でした。
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怖い話もさまざまですし、語ってくれた人によって怖さの度合いも異なります。ですが、自分の経験からして会話のついでに語られたような、ちょっとした話が本当に怖かったりします。そしてやっぱりお化けより現実の人間の方が怖い。
おつきあいいただき、ありがとうございました。




