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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 089 死神の足音


 横溝から闘技場を覗くとセバロスの新しい兜が輝いて見える

 セバロスの盾とマニカはルクマーン、槍とオクレアはマクシミヌスのお下がりだそうだ、新調したわけでは無いらしい


 木剣と木槍の叩き合いが始まったがセバロスも動揺しているのが丸見えで槍は大振り盾はおざなりだ


 

「セバロスは一回死んでるから他人事じゃないんだな」


「え?死んでるんですか?」


「そうだ、死ぬ寸前から治療して治療完了で死んでたから蘇生したんだ」


「は?生き返ったんですか?」


「ああ」


「さらっと凄いこと言いますね」


「そうか?大量出血くらいの死に方なら結構生きれる可能性は高いんだぞ?」


「何も言えません」


「そういう場面があれば見せてやれるかもな」


「見たいような見たくないような」


「見たくはなくていいと思うぞ」



 なんとか木剣木槍でのウォーミングアップを終えて本番に入るようだ、セバロスは木剣での攻撃を結構食らっていたが大丈夫だろうか心配だ


 セバロスの背中が少し見えた、グラウクスの手形か?赤紫色の腫れがビタッと背中についている、なんとか本番まで踏ん張れたのはそれのお陰かもしれない



 セバロスは試し切りで板に穴を穿った槍を受け取るとしっかりと構え直して大きく深呼吸した



「オアアアアアアアアアア!アアアアアア!アアアアアアアアア!ァアー!」



 気合入れだ



「マツオの真似ですか?」


「かもな」


「あれ何の意味があるんですか?」


「アレはな、自分で自分に圧力掛けたり不安になったり無駄な心配なんかをしたり緊張したりすると体が動かなくなるだろ?

 それを外側に気合入れて出してしまって体の表面で止めておくのさ、そうすると動きたい動きが出しやすくなるように整うんだ」


「へぇそうなんですか〜緊張なんてしたこと無いんで分からないですね」



 なんて奴だ



 雄叫びをあげたセバロスは肩で風を切って歩いて間合いを取った

 相手も恐らくセクトール(追撃闘士)だ、同じような格好をしているが武器が槍と剣で違いがあるくらいなものだ



 セバロスの気合の乗りが変わった


 相手の攻撃にもしっかりと対応し盾を揺さぶらずに最小限動きで凌いでいる


 セバロスお得意の盾の下から足先潰しも成功し相手の動きは鈍ってきた

 大振りの槍は狙い通りに盾を弾き距離を詰めて足先の傷を開くように左足で思いっきり踏み抜いた



「オアアァ」


「イーーーーヤァ!」



 最後は大盾で思い切り突き飛ばし仰向けに倒れたところに槍を突き立てて仕合終了だ、もちろん当ててはいない



「本番からは危なげなかったな」


「そうですね」



 今日は怪我人が少ない


 怪我をしてくるのは軽症ばかり、重傷は居らずあとは何も言わない状態になった遺体だけだ



「次はババンギが出てきましたよ」


「おっ?早いな」



 セバロスが降りるとすぐにババンギが上がってきた、連続はハラハラするな〜



「マツオ、ちょっといいか?」



 マクシミヌスだ、また嫌なタイミングで来よった

 なんだか申し訳なさそうなモジモジ加減だ、いい歳のオッサンがするモジモジじゃないぞ?



「なんだ?」


「うーん、アルティマタスなんだがゲルマンだと文句をつけられてだな」


「ほう、見た目がそうだからな」


「ああ、元老院だという主催者がアルティマタスを大将に据えてゲルマニクスの討伐を再現したいと言い出したらしくてよ」


「横暴な」


「だろう?で、属国以外から来たグラディアトルを探しているそうなんだがどうやらアルティマタスとマツオ以外に居ないんだそうだ」


「俺も含むの!?」


「登録上な?含んでるんだよ、予備で」


「あちゃー」



 そりゃあ申し訳ない顔をしてくるわ



「でだ、討伐戦は出来ないから2対10くらいで団体戦になりそうなんだよ」


「比率酷いな」


「だろう?相手はウェテラヌス含むパルス・セクンダス以上なんだとよ」


「俺の命日今日来たか」


「スマン!どうしようもないんだぁ」



 マクシミヌスが涙を堪えて崩れ落ちた

 主催者が言い出したら仕方ないのは分かるが恨みが籠もってそうで嫌だな



「分かった、マクシミヌス、任せておけ

 アルティマタスと生きて帰れるように頑張るよ」


「すまない、すまない、すまない」


「まだ生きてるから謝らんでくれ、死ぬ寸前で謝ってくれよ?」


「おぅ」


「マシュアル」



 顔を見た瞬間に大泣きじゃないかね



「マヅヴォ〜」


「大丈夫だ、生きて帰ってくるよ

 傷の手当を頼むぞ」


「ばにがぐだじづげぼー(マニカくらいつけろよ)」


「何言ってるか分からんよ、じゃあ行ってくる」



 一度、横溝から闘技場を覗きこみババンギの動きを確認する

 相手はホプロマクス、槍のリーチを潜り抜けながら木剣でも圧倒しそのまま勝ってしまいそうなくらいで安心だ

 セバロスの勝ちから大分肩の力が抜けたのだろう、いい調子で何よりだ、問題ないだろう



「マシュアル、何かあったときには使いを寄越せ、駆け付ける

 準備に行ってくる、終わったらなるべく戻ってこれるように頑張るよ」


「はい!」



 泣くな泣くな〜、赤紙より帰ってこれない確率は低いと思うぞ



「出番は?」


「パルス・プリムスの前だ

 時間的には殆ど無い」


「すぐ行こう、マシュアル頼んだぞ」



 涙ぐんで頷くマシュアルを残していくのも忍びなくソテリオウスに事情を伝えて目を丸くされながらも頷いてくれたのでマシュアルを紹介、もしもパニックになったら手を貸して貰えるようにお願いしアルティマタスの居る控え室に向かった


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― 新着の感想 ―
[一言] ほぼ強制とはいえ、2人で生き残るために参加したんでしょうね。それに戦士が戦いから逃げるのはどんな理由でも不名誉だから後に従軍した時、アレコレ言われても困るし詰んでるなぁ・・・ ファミリアと…
2022/01/24 12:41 ケンタッキー
[一言] 王と医聖に命じられて4月から従軍医になる予定だと主催者に言えば、マツオはさすがに免除されそうな気がしますね。 せめて実力を僅差に調整させるか、弓の使用は相手に禁止させたり、あるいはニ体ニの…
[一言] 今回マツオを出して何かあったらどうするんだかね汗
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