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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 033 借金奴隷


「ようやく来たか」



 闘技場の一階席、ハルゲニスが揉み手をしながら刀を預けた御人と一緒に待っていた



「お呼び出しとのことですが何でしょうか?」


「お前の刀と言ったな、皇帝に献上せんか?」


「私の借財で得たものを献上するのですか?」


「それについてはの?」


「献上して頂ければそれ相応の返金は致そう」



 ジャラッと重たそうな音のする革袋を置かれた



「中身を確認しても宜しいですか?」


「良い」



 革袋を開けるとアウレウス金貨が30枚…あれ?



「はい、献上させていただきます」


「良いのかよ!」


 イフラースが止めてくれるが口に一本指を当ててシーとしておく



「見事な腕前、そして素晴らしい切れ味だった、皇帝もさぞ喜ばれよう」


「ありがたき幸せ、皇帝のお供にさせていただけるのでしたら喜んで」


「よく言った!あとで褒美を取らすぞ

 下がって良いぞ」



 ハルゲニスもご満悦なようで良かったです

 こちらの懐もご満悦です、ホッホッホ



 帰り道は暗い、イフラースは馬車の護衛も兼ねておりハルゲニスの乗る馬車の御者台の隣に座っている


 自分はというと、何と馬車の中にいました



「私の借金はアウレウス金貨で何枚でしたか?」


「刀を作る借金を入れて20枚になっていた筈だ」


「ではこれで足りますね」


 ジャラッと革袋の中身を少し見せる


「なんと!」


「解放ですね」


「そうだな、何より元々お前は安かったんだ

 これからどうするつもりだ?」


「今後ともメディケ兼グラディアトルとして働かせてください」


「それでいいのか?」


「はい!」


「分かった、金貨10枚は預かろう」


「なぜ?」


「マツオは今日何人治療した?」


「5人です、1人死にましたが」


「それだけでも金貨10枚は超えるだろう

 お前は本当にいい買い物だったよ、これからも尽くしてくれよ」


「はい」



 宿舎に戻りハルゲニスの部屋で解放の証文を書く、解放の手続きを翌日の午前中に済ませておく予定だ



 ハルゲニスの部屋を出るとディニトリアスとばったり出会い、流れでディニトリアスの部屋に行くとグラウクスとヌワンゴも居た


 3人でワインを飲みながら肉と硬いパンを摘んでいた、ご相伴に与ろう


 ディニトリアスとヌワンゴには刀を献上させて頂いたことを申し訳なく伝えると口を半開きにして固まった



「すまん!」


「驚いたぜ」


「怒りはごもっともだが解放のために仕方なく」


「全く怒ってなど居ないんだが」


「いやいやいやそうは言ってもあの一振りにどれだけ時間を割いてもらったことか!」


「本当に怒ってないんだ、嬉しいんだよ

 ま〜さか自分の作った剣が皇帝に献上されるなんてよ!思ってもなかったぜ!なあヌワンゴ」


「本当ですよ、試作みたいな一本にそんな価値無いですからね〜そうだあれ出しましょうよ!」


「あれな!」



 ディニトリアスが長いズタ袋の中から曲剣を一本出してきた

 ファルカタと呼ばれる反りの内側が刃になっている剣だ



「これはイフラースの剣だ、さっきオニシフォロスの穂先も渡してきたがな

 ついに鋼と鉄を使った硬い丈夫な剣が作れたんだ」


「凄いな!」


「おうよ、鋼の収縮と焼刃土の盛り方で色々やれることが分かってな!まっすぐの剣を焼入れで曲げて作ったんだぜ

 驚くのはまだ早い、こいつで薄い鉄板が切れたんだ、刃がこんなに薄いのに切れ味も耐久性も凄まじい

 イフラースに持ってこいだろ!」


「研究してるな〜」


「刀のおかげだよ!オニシフォロスの槍先も刀と同じ鉄を鋼で包んで作ってある、柔軟性と切れ味は抜群だぜ」


「楽しんでやってるな」


「おう、楽しいさ

 毎日微妙に土の配合変えたり焼入れ試したりよ〜弟子に戻った気分だぜ」


「ということで今新たに刀を作ったらもっと良いのができますよ」


「そうか!楽しみだな

 とりあえず今はあのコペシュと杖があればいいな、技が極まったときにまた一振り頼むよ」


「また変な武器探してきたな〜、手術道具と一緒に研いでおくよ、中の鋼は丈夫そうだし研ぐだけでも使えるはずだ

 今度刀を作るときには最上級の出来映えにするさ」


「頼むよ」



 試作品の刀が無くなったのは寂しいが今ならもっと良い物が打てるから問題なし、結果的に皇帝に剣を献上した鍛冶師としての名誉の方が大きいらしい


 4人で酒を飲み、解放奴隷になったこと、メディケ兼グラディアトルとしてまだまだ働くことを伝えるとバシバシ背中を叩かれ喜ばれた

 自由に柵の外へ出入りできる権利があるだけでも嬉しいものだ



 カヒームが迎えに来てくれたおかげであまり深酒にならないうちに就寝となった



 明日が楽しみだ



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