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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 013 強制参加


 それから晴れている日の朝はオココの牛タックルをかわし続け、昼からは幻影と対戦、夕方からはマクシミヌスに教わり教えを繰り返す日々が続いた



 一週間ほど訓練を重ねた後にマクシミヌスが格上挑戦の為に二人連れてきた

 イフラースとその護衛のように後ろに付いてくる大男のルクマーンだったが二人ともめちゃくちゃ強かった



 イフラースはトゥラクス、短い曲剣と四角い小さい盾を使う

 170センチ近い長身でそれほど速くないのに死角を攻めてくるので盾を持っているとなかなかに避けるのが大変だ

 自分は盾がないのでその点は良いが剣を潰しにくるという厄介な方法を取ってくるのがこれまた賢い

 結果、決着つかずで終わったが負けた感が濃厚だ

 本番用は盾も剣も特殊らしく更に嫌な攻撃をしてくるのだとかで当たりたくない


 ルクマーンは焦げ茶色くらいの猫毛で髭と一体化しており額も狭く目と鼻と口が見えるだけの真ん丸なモジャ丸

 身長は2メートル近くあり体は筋肉でゴリゴリの腕と脚、張り出した僧帽筋と胸筋、腹筋背筋が巨体を俊敏に動かす為に鍛え上げられたものだとすぐに分かる

 平面の四角い大盾を使い、練習用にいつか見た木槌をもってきた

 大盾でオココ並の速度で突進してくる、ちょっと当たっただけでもトラックと交通事故みたいなもんだ

 しっかり受け身を取るからと試しに突進に当たらせてもらったら本当に人間て4メートルくらい飛ぶんだなと実感できた


 手合わせの時に勢いよく振り下ろされた木槌が砂の地面揺らしそんな簡単には上がらないと思って踏み込んだら振り上げの速度も剣のようで木刀をかち上げられ飛んでいった


 普通に負けた


 素手でも闘えるがルクマーン相手には分が悪い、大盾の使い方が上手いこと、身長相応のリーチがあり内側に入り辛いというところを何とかしないといけないがその技術が今はない



「いつか二人に勝てるように研鑽を積むよ」


「数年後にしてくれ、すぐ追い付かれそうだ」


「もう少し体を作り込まないとだな」



 イフラースとルクマーンから有難い経験を頂いた、これで幻影との闘いにもバリエーションが増えて手数が増えそうだ


 勿論、自分だけじゃなくニゲルやセバロス、ババンギ、オココも二人のシゴキを受けているがババンギ以外はまともに闘いにすらならなかった

 ババンギは手数の多さと速度でイフラースの防御技術を垣間見てカウンター一閃、いつの間にかババンギの首に剣が突き付けられていた

 ルクマーン相手には盾に阻まれてまともに入り込めず盾にバシバシ叩かれボロ雑巾になって終わった、木槌を振るまでも無かったということだろう



 高みは近くにもある、二人が言うにはカヒームはもっと強いのだとか・・・そんなカヒームの右腹に剣を刺すって相手どんだけ強いんだよ、刺さった角度を見ると何となく左利きかな?という感じはしていたがどんな動きをしてあの位置に傷をつけたのか想像もつかない

 かといってカヒームに聞くのもなんとなく気が引ける、とりあえず一度カヒームにも手合わせ願いたいものだ



 それからまた数日が経った日の夕食でハルゲニスから話があった



「皆、よく聞け!

 来る9月1日の1日前(8月31日)は皇帝ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス様の誕生日であらせられる

 現在はダナウ川にて病床の皇帝マルクス・アウレリウス様に代わり戦線を維持しておられるが9月1日の9日前(8月23日)の太陽の日(日曜日)にジェヌアにて誕生祭が開催されることになった

 3日間で40組の対戦がされる予定だ

 午前中3回のウェーナティオー、午後からは10組の仕合だがそのうちチロ(新人)は7組、パロス・ウェテラヌスは最初の2日は3組、最終日4組の対戦が組まれる」


「「「おおお」」」


「うちのプリームスであるカヒームは今回は療養のため出場できない、そこでセクンダスのオニシフォロスに最終日の3組目を任せたい」


「「「おおおおおおお!」」」


「チロは5人全員を連れていく、運良く生き残ってもらいたい

 パロスはマリーカ、イフラース、ルクマーンの3人だ

 後の者は研鑽を詰むように!」


「「「はい」」」



 オニシフォロスは会ったことが無い、どんな人物なのか気になるところだ

 マリーカも手合わせどころか見たこともない

 それと新人5人とは誰のことだろう、自分とニゲル、セバロス、オココもだとしてもう一人誰だ?




 夕食後、珍しくカヒームが来た



「マツオ、腹に縫った髪が抜けてしまったんだが大丈夫だろうか?」


「大丈夫だ、傷が塞がっていればいつ抜けても問題ない」


「そうか、なら良い

 グラウクスから傷の周りを揉んでもらっても大丈夫か?」


「大丈夫だ、油を塗って柔らかく揉んでもらってくれ」


「了解だ」


「一つ聞いていいか?」


「何だ?」


「新人が5人と聞いたが自分とニゲル、セバロス、オココとあと一人知らないんだが知ってるか?」


「ああ、それなら俺が今鍛えてるところだ、楽しみに待っててくれ」


「そういうことなら当日楽しみにしているよ」


「じゃあ、あっと、武器はどうなった?」


「まだ、何か探さないとかな」


「打って貰え!今日が8月1日だからあと20日そこそこじゃないか

 専属の鍛冶屋が居るから立て込む前に今すぐ行くぞ、ハルゲニスにも今伝えに行く木刀持って待ってろ」


「お、おう」


「鍛冶代金は借金になるからな、考えておけよ」


「え?おぅ」


「稼げ!」



 カヒームは砂浜を走って母屋に向かいすぐに戻ってきた



「行くぞ!」



 じゃらっと巾着を鳴らしながら走ってきてそのまま一緒に走って柵の外に出掛けた




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