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SilentRoseQuest  作者: 石食み
第1章
17/33

01-11

 ログインした場所は昨日ログアウトした場所と同じだった。

 大木が変わらず悠々と聳えている。

 スタフィーがいる事を少し期待したが、見かけられなかった。

 他の人と喋れないというのは、結構なストレスになっていたようだ。なにせ、まだまともにしゃべったのが光とスタフィーだけという。


「さて、今日は何するかね」


 悲しくなってきたので、声を出す。

 そのスタフィーさんのおかげで、一通りの動きにはぎこちなさが無くなっている。

 今ならどこへでも行けそうだった。

 今は、スタフィー先生に教わった戦闘用の準備運動を行っているところである。

 彼女に言わせれば、これを毎日繰り返すだけで今より強くなれる、らしい。


「本当は街にでも行きたいんだが、言語が違う、って言われちゃったからな……」


 そう。

 スタフィー大先生によると、亜人種だけ言語が違うのだという。

 言語の壁は大きい。

 現に、昨日も話が通じなくて襲われたのだ。

 どうやらこの姿は相手からしたらバケモノのように見えるようで……。

 そうして考えつつ体を動かすことしばし。


「あ。そうだ」


 体操が終わったタイミングで妙案が浮かんだ。

 昨日の広場に行こう。


             ◆


 普通なら人に襲われた場所なんてトラウマ物だ、なるべく近付きたくないと思うのが当然だろう。

 しかし、私は昨日の件は1種の事故で、しょうが無かったと考えている。

 更にいえば、という事は昨日の剣持ちと杖持ちにまた会えるかもしれないという期待があった。

 都合良く人類種語(仮定)が書かれた紙などは持っていないので、言語を覚えるには実際に聞き、話すしか無いのである。


 昨日今日でだいぶここら一帯の森の地理は理解してきた。

 人里に行かず、大衆の目に触れられず人と接触できる可能性があるのはあの広場しか思いつかない。

 それに、昨日感じた空気間の理由を確かめたかった。


 という訳で広場である。

 昨日と変わらない空間が広がっていたが、一点、昨日は立派に立ち、私の退路を塞いでくれた石碑がバラバラに崩れていた。

 だが、この空気感はやけに落ち着く。


「石碑……いや、石碑だったのかこれ?」


 他に見るものもないので、石碑に近付いて見てみる。

 ただ、手に持つことが出来ないので、頭を近付ける感じが、微妙に気持ち悪い。

 まあ、慣れだろう。


「……これ……?」


 そうして近付いて見てみると、崩れた石碑には文字が書かれているようだった。

 いや、文字かは分からない。

 正確には、文字のようにも見えなくはない模様、である。


「【魔導文字】……?」


 文字関連で唯一持っているスキルをダメ元で使ってみる。

 すると偶々当たりだったのだろう、うっすら模様が光り、その上から文字が浮かんできた。


「ええと……『……における……。……に関わる……。よって……。』……ダメだ、さっぱりわからん」


 だが、スキルレベルが足りないのだろう。

 虫食い状態でとても読めたものでは無い。

 それでもなんとか読もうと文字を見る。


「……そこで何をしているの!お前……昨日は良くも!」


 急に後ろから声が聞こえた。

 それも昨日の男声では無く、女声だった。

 慌てて振り向く。

 何やらよく分からないことを言われたが、何としても彼女と対話がしたかった。


「ふん。その余裕も今のうちだよ」


 だが、振り向いた先にいた女性は今にも飛びかからんと拳を構え、臨戦態勢だった。

 その体には憤怒のオーラを纏っている。

 頭から生えているうさ耳がギャップを醸し出していた。

 どうやら彼女は獣人種のようだ。

 だが待って欲しい。心当たりが無さすぎる。


「いや、昨日って。どこかでお会いしましたっけ?」


 ダメ元で話しかける。

 なるべく今聞いた発音に寄せながら。

 というか、また今更な疑問だが、何故あっちの言語は理解できるのだろう。分からないことだらけだ。


Tips:魔導文字

魔力を浸透させた文字の事。一般言語とは違う言語体系で、1つの文字に多くの意味を持たせている。この文字で意味ある言葉を載せた道具が“魔道具”と呼ばれる。


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