01-05
別視点続きます。
帰ってきたギルドは雑然としていた。
そこかしこで怒声が飛び交い、行く前は飲んだくれていた顔も今は忙しく動いている。
ギルドの奥には老婆とやつれた子供が十数人程居り、何かに熱心に祈っていた。一部の子は涙目になっていて、そこだけ別空間の様に静かだった。
私は気になるそれら全てを1度無視し、依頼カウンターへと駆け寄る。
「すみません、依頼達成報告をしたいんですが」
「申し訳ございません、現在緊急依頼が発令されておりまして、その関係で全依頼を閉じているんです」
そう説明するギルド職員も焦っているようで、手短に要件を伝えてくる。
その緊急依頼ってなんですか?そう聞き返そうとした瞬間、ギルド内の喧騒がピタリと止まった。
何事かと周囲を見渡してみれば、いつの間に入ってきたのだろうか、厳しい顔つきの禿頭の大男が入口に立っている。
大男は1度ギルド内の様子を確認した後、よく通る声で告げる。
「既に知っている奴が殆どだと思うが、改めて説明する!現在このギルドは、依頼ランクAに相当する緊急依頼を発令している。10分後、緊急ミーティングを行う為、緊急依頼に参加する意思のあるやつはここに残れ。参加する気のないやつはとっとと失せろ!以上!」
話は簡潔ながらも、緊急性の高さがよくわかるものだった。
だが、この場にいる人は誰一人出ていく者はいなかった。
勿論、私も残っている。
ゲームではありえないはずの本能とでも言うべき感情が、私をこの場に居させたのだ。
◆
20分後。
ミーティングはつつがなく行われた。
一切の無駄が無いそれは、こういった事が度々起こっていたことを連想させる。
今回の緊急依頼はいわゆる複合型と呼ばれるもので、達成条件が複数あるものだった。
その条件とは、
1,行方不明となった孤児“マルク”と“スタッド”の捜索、又は生存確認
2,存在が示唆されたBレート魔獣“魔鳥のアンデッド”の存在確認、又は類似生物の存在確認
3,発見した魔獣の討伐
の計3つ。特に後半2つは危険度が高い為、冒険者ランクが低い者は速やかに高ランク冒険者に助力を乞う事、と念を押された。
また、捜索場所である“入らずの森”自体も危険度が高いらしい。併せて忠告される。
「捜索は、冒険者だけでなく街の衛兵も協力して行う。よく協力するように。成功報酬は、街から3万C,及びギルド保有の装備・アイテムを1つ授与だ。以上!」
先程の大男がそう締めくくると、冒険者達がにわかに浮き足立つ。我先にと急ぐようにギルドから出て行く。
おおかた、報酬に目が眩んだのだろう。つまりそれだけ危険だということだ。
というか今更知ったが、大男はこの街のギルドマスターだったらしい。下手な冒険者よりよっぽどできそうだと思った。
「あの」
私も早速行こうと立ち上がると、先程の老婆が声を掛けてきた。
近くで見た老婆は修道服のようなものに身を包んでおり、首からは銀の星を掛けている。
「私がどうかしましたか?」
「いえ、そうではないんです。ただ……よろしくお願いします」
「はあ」
「あの子たちは、マルクとスタッドはウチの子です。2人とも乱暴ですが、優しい子なんです。いつも口では悪ぶって、でも誰よりも皆のことを考えていてくれて。だから、だから……」
続いたのは言葉ではなく涙だった。
彼女が必死に頼み込む姿は、ゲームの世界とは思えないほど生々しくて。
そのあまりにもなリアルさに、どうしてこれ程まで気になっていたのか理解した気がした。
だから――
「失礼ですが、お名前は?」
「……エミリです」
「では、エミリさん」
だからこそ、他人事として放ってはおけなかった。
「その依頼、このユーナが引き受けました。だから――」
――安心して、吉報を待っていてください。
Tips:ギルド
異世界物でお馴染みのギルドはこの世界にも存在する。最もメジャーな冒険者ギルドを筆頭に、魔術師ギルドや商会ギルド等、多数存在している。
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早くも二桁達成しました。
有難いことに当初想定していたよりも多くの方に読んで頂いており、おかげで高いモチベーションを維持することが出来ております。
拙い文章ですが、今後とも応援の方、よろしくお願いします。
最後に、宜しければ感想や、星評価の方、是非、お願いします……。(小声)




