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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
9/87

〜穏やかな朝とエルフ〜

私は勝った。

進級を賭けた期末テストという名の戦争から生きて帰ってきた....


という訳で再び更新を再開致しますので、これからもよろしくお願いします。

 〜Side of Shiragi〜


 AM 2:00..........


「ああ、間違いない。今俺の端末からお前の研究所に送信したデータを見れば歴然だがこいつは普通の人間じゃない、俺と同じだ。」


備え付けのオイルランプの灯りと端末の液晶のみが照明となっている薄暗い部屋の中、俺はガーデンにいるエルメスという知人と通信をしていた。


『うん。確かに今届いたよ.......ふむ、確かに。君の眼による測定が狂っていなければ彼の身体能力は人間のそれを遥かに上回る数値だね。しかしこれは...彼の特性にあった特訓法を研究して鍛え上げればもしかすると君に匹敵する力を得るんじゃないかな』


端末からする声にはどこか楽しそうな色を秘めている。


いや、それは違ったな。


奴は実際に楽しんでいるのだろう。

デスク備え付けのコンピューターの画面をニヤニヤしながら見ているであろう姿が目に浮かぶ。


「不幸から産まれた亡霊(なげきびと)か、或いは唯の狂人(ひとごろし)か、どっちだろうな」

『ははっそんな事をここで話し合っても机上の空論に過ぎないさ』

「それもそうだな、らしくない事を考えた」

『本当にね〜』


つまらない冗談に微かな笑い声が聞こえたが、直ぐに真剣な声に戻る。


『で?彼は確実に今期の志願者なんだね?』

「それについては間違いない」

『ふむ....なら明日の船にひっそりと乗り込んで乗船したら速攻で拉致してみようかな?』


うなり声に似たものが端末のスピーカー越しに聞こえてくる。


「やめておけ、決闘後しばらく気配を消して後を追ったが四六時中くっついてる小娘が厄介だ。そいつはポーッとしてるようだが意外と勘が鋭い。実を言えば俺も何度か尾行に気づかれかけた、お前でも無理だろう。それにあの手の小娘は下手に弄ると何をしでかすかわかったもんじゃない。」

『え、なになになに!?女の子連れ!!歳は?身長は?そしてなにより可愛かった!?』

「おい」


俺は思わず溜息を吐くが、勿論そんなことで奴の暴走が止まる筈もなく話がどんどんと進んで行く。


『何でその娘の写った写真を送ってくれなかったんだ!常に付きまとってたならチャンスは幾らでもあったろうに!!ああ今日ほど君が憎い日は無い!』

「いい加減にしろ変態、今は仕事中だ...真面目にしろ。削ぎ落とすぞ。」

『あれ?なんだいシラギ、もしかして嫉妬?大丈夫だよ、私はシラギ一筋だから』


俺の声に反応して若干軌道修正したようだ。


『....あれ?削ぎ落とすって何を?.......あ!む、胸だけはやめて!最近何でか知らないけど小さくなった気が...』

「ほざいてろ」


そう思った俺が馬鹿だった。

奴のペースに流されると話がどんどんと脱線していくので少々強引に話を戻す。


「兎に角だ、艦内でもう一度だけ(ターゲット)とは接触してみるつもりだ。それで可能ならば任意同行で連れて行くさ」

『うん、まあ...シラギがそうしたいならそれでもいいけどさー。普通に連れて来ても面白くないじゃないか』

「俺はお前のそういうところが嫌いだ」

『あ〜...そう言わないでくれよ〜。わかったよ、攫わないから〜』

「最初からそうしろ。将来的にこいつは間違いなくガーデントップクラスの傭兵になる、ファーストコンタクトは大切にしておけ」

『は〜い、シラギ討伐部隊長様の仰せの通りに』


端末越しにふざけた声が聞こえてくる。


「馬鹿なことを言うな...で、まあ兎に角拉致はするなよ」

『はーい、わかったよ。じゃ、おやすみ』

「ああ。」


通信が切れると端末の明かりは落ち、部屋の光源はランプの揺らめく炎のみになった。


俺は(じき)にランプも消してしまい、真っ暗になった部屋の中を夜目の効く右目でベッドを探ると倒れ込んだ。


「まったく、いちいち騒がしい奴だ」


呆れと疲れで目を閉じるとあの騒がしい女の顔がボンヤリと浮かび上がった。


「が....悪くない.....」


目を閉じたまま奴との腐れ縁な日々を思い出していると、気がつけば俺は眠っていた。





 〜Side of Saki〜


カーテンの隙間から漏れるキラキラとした朝日で目を覚ました私は、まだ眠たい目を擦ってから大きなあくびを一つする。


もう少し寝たかったけれど二度寝する場所はここじゃない。

フカフカとした質の良いベットから這い出すとはだけかけたバスローブをそのままにしてお兄ちゃんの居る隣の部屋を目指す。


昨日借りたこの部屋はなんと寝室からお風呂(といっても浴槽は無くて、シャワーがあるだけだった)の揃った五部屋もあるのでもう家に近いのでお兄ちゃんの部屋まではそれなりに距離があった。

けれど、別に何か障害がある訳でもない(寧ろあるほうがおかしい)ので難なくお兄ちゃんの眠るベッドまで辿り着いた。


「ほふぅ....」


布団に潜り込んで居心地の良い場所を探し終えると口からは気の抜けた声が漏れてしまった。


それでもよく寝付いたお兄ちゃんはちっとも目を覚まさない。


頬をお兄ちゃんの腕に擦り付けて私なりのマーキングを一頻り終えると、今度は胸骨から首筋にかけてゆっくりと舌を這わせた。


「....ん?...紗季?」

「あ、おはようお兄ちゃん」


流石にこれには起きてしまったようだ。


「あれ?....えーっと、何で紗季が俺のベッドに?」

「寂しかったから来ちゃった」

「....そう」


お兄ちゃんはまだ眠そうな目を擦りながら簡素な返事をした。


「しっかしよく寝た。こんなに安心して眠ったのは久しぶりだな」


大きなあくびを一つしてからお兄ちゃんは満足そうに言う。


「そうだね〜...私なんだかこの港町が好きになっちゃった」

「昨日も思ったけど、この穏やかな雰囲気がいい」

「うんうん」


お兄ちゃんは静かな動きで私の頭を優しく撫でてくれた。

私はそれが気持ち良くて目が細くなってしまう。


「さ、着替えよう。まだ時間には余裕があるけど早めに準備しておこう」


やがて私の頭から手が離れるとお兄ちゃんはベッドを降りて着替え始めた。


お兄ちゃんの着替えはとても速くて、私が自分の着替えを部屋から持ってきた時にはすっかり身支度を整え終え、(つむぎ)姿で待っていた。


私も手早く着替えを済ませ、備品のブラシで髪をとかすと収納棚に置いた自分の荷物を肩にかけた。

最後に小太刀を腰に差し、それを隠すように上から長羽織を羽織って完了した。


「お待たせお兄ちゃん、いこ!」


廊下に繋がるドアの前で待っていてくれたお兄ちゃんに飛びつくようにくっつき一緒にエントランスへ降りて行った。




暦達はホテルをチェックアウトすると昨日轟に連れて行ってもらった港へ向かった。


中央通りには二人と同じくガーデンへ入ろうという若者達で賑わっており、皆同じように港を目指している。


「どのくらい居るのかなと想像してたけど流石に多いな...」

「うん、ざっと見ても千人は下らないよね」

「そうだな」


暦は歩きながら、同期生達の顔ぶれを眺めてみた。

髪の色一つとっても茶色い人や赤い人、金色に青など多彩で、また装備も多様で風変わりな剣を帯びている者も居てそれだけでも暦は楽しんでいた。


そんな中でたった一人だけ異彩を放つ少女が歩いている姿が暦の目に止まった。


澄んだ緑色の長髪と同色の瞳に人間とはどこか違い、神々しさを纏った美顔。細身剣(レイピア)とまでいかなくともスラリとしたスマートなフォルムに、白地に金線が走った独特なデザインの長剣を腰に差し、同じ装飾の盾を背負っている。


が、何よりもその少女の耳が細く尖っていたことが印象的で、一目で人外であることがわかった。


「紗季、あそこにエルフがいる」

「え!どこどこ?」


緑の守護者、森のエルフ、深緑の精霊など様々な呼び方をされる聖霊族で滅多に人前には姿を見せないことで有名な種族だ。


「んー....見当たらないよ?」

「ほら、今丁度噴水の横を...」

【その娘に私を探させても無意味ですよ】

「!」


暦が目で前方の噴水を指した時、突然エコーのかかった少女の声が頭の中に響いた。


「?、どうしたの?」

「いや、今声が...」


紗季には聞こえていないらしく、不思議そうな顔をしている。


変に思っていると、再び声が暦の頭に響いた。


【どうやら驚かせてしまったようですね。すみませんでした、貴方にのみ私の言葉を届けています。私達に近い存在の気配を感じたのでもしやと思い語りかけたのです】

「・・・・」


暦は少し困った顔をした。

何せ相手は暦たちの会話が全て聞こえている様である上、念話で語りかけられるが、暦自身には特にそういった能力は無い。

もしかしたらと心の中で言葉を浮かべてみたが、やはり言葉が届いた様子はなかった。


【あら、無視するの?】

「はぁ」

「本当にどうしたの?」


溜息を吐く暦を紗季は訝し気な目で見ながら揺すった。


「いや、一方通行な会話に悩まされてな」

「?」


暦の答えに紗季は更に疑問符を浮かべた。


【そういうことでしたか、てっきり私達と同様に念話ができるものかと思っていました】

(それができたら苦労しないよ)


暦は心の中でも溜息を吐くと先のエルフを見つめると、彼女もいつの間にか暦の方を向いており、ピタリと互いの視線が交差した。


しだいに距離は縮まり、遂には声が届く程の間まで近づいた。


「おはようございます」


ニッコリと微笑む笑顔は美しく、それでいて何処か幻想的な雰囲気が醸し出されていた。


-------------------------M.Gメモ------------------------




高等兵団討伐部隊長 シラギ・スラティスタ


Lv.1100

HP 12000

身長 ・・・

装備品 ドラゴンスレイヤー×2


白髪に極度の女顔で右が赤で左が琥珀色のヘテロクロミア(オッドアイ)

かなりの美人だが女性を指す呼び方全て及び身長関係は厳禁。

特に身長を口にする時は死を思え。

戦闘スタイルはスピードアタッカーだが筋力もかなり高いので、双方を掛け合わせた二刀流回転切りが得意。


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