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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
36/87

〜これもまた朝〜

〜Side of Koyomi〜



「・・・っ」


窓から射し込む眩しい朝日によって俺は目覚めさせられた。


「くぁ...」


俺の右腕を抱き枕の様に抱え込んで眠る紗季を起こさないように気をつけながら朝一番のあくびをしてから目をこする。


「朝...か」


寝起きでぼんやりとする頭であるが昨晩の事が単なる夢であったのか、それとも精神世界の様な場所で実際にあった事なのか俺は考えようとしたが、結論の出しようがない不確かな事を考えるのも馬鹿馬鹿しいと思い思考を中断した。

それにこの件を事実だと証明したければ学園長(カーディナル)の元へ行ってみればいいだけのことである。

(それでも妖怪の再生能力を考慮すれば既に傷が修復してしまっている可能性が高いので確信を持つには至れないであろうが)


枕元に投げ出された端末の液晶を指で弾いて時刻を表示させてみると、今日の訓練日程やらが届いたという通知も一緒に表示された。


端末を操作して詳細を見てみると集合時刻は昨日よりも遅い七時集合となっている。

これならば後三十分程は布団に包まったままでいても十分に余裕があった。


端末の電源を落として再び枕元に放り投げると心地良さそうに眠る紗季の背中に空いている手を回して抱き締めると、可愛らしく抱き返してきて紗季の体温が心の芯まで温めてくれる。


「くぅん...」


寝ぼけているのか何時もにも増して甘えた声を漏らす。


普段は頼れる存在にならねばと甘えてくる紗季に素っ気ない対応をすることもあるが、本当のところを言えば俺だってこうしていたいのだ。

それに気づいて、せめて公の場では自重して欲しいのだが、紗季にそれを言っても意味は無いだろう。


「紗季、愛してるよ」


無防備な頬に口付けをしてからそっと呟いた。


すると、紗季の体が僅かに強張ったのが密着しているので容易く感じ取れる。


(・・・起きてるな)


何を思ってか必死になって寝たふりを続ける紗季を見ていると、どれどこまで耐えられるものかとついつい悪戯心が湧き出してきた。


まず手始めに背骨に沿って寝巻き越しの肌に触れるか否か程度の力で軽く撫でてみる。


「っ!....」


ビクリと体を震わせて必死に乱れる呼吸を押し殺している。


三十秒程したら一度手を止め、また少ししてから撫でて慣れを覚えないように工夫しながら合計で五分間程度撫で続けたが、紗季は見事耐え切った。


「・・・ふぅーーーっ」


ならばと思って紗季の体をしっかりと抱き締めて逃げられないようにすると、弱点である耳に息を吹き込んでみた。


「ひゃああ!!」


すると、紗季は面白いくらいに悲鳴を上げて飛び起きた。


「はははっ俺の勝ち、だな」

「もーっお兄ちゃんいつから気がついてたの?」


水滴を浴びた猫の様に跳ね起きた紗季は薄っすらと涙を浮かべると、俗に言う女の子座りで俺を見つめてきた。

睨んだと言っても良かったかもしれないが、その愛らしさ故の迫力の無さは元より本人にもそういった意思があるようにも思えない。


俺も紗季と向かい合うように起き上がってその目をじっと見つめた。


「ついさっきだよ、俺が愛してるよって言った時に反応してただろう?」

「ア、アーソッカー」


俺が優しい声でそう言うと、紗季は酔った様に顔を紅くすると大袈裟な身振り手振りを加えながら棒読みで答える。


「?」


しばらくして、紗季が落ち着きを取り戻してくると俺が疑問符を浮かべている事に気がついたらしく、恥ずかしそうに頬を染めながらポツポツと小声で語る。


「だ、だってお兄ちゃんがそうやって...あ、愛してるって言ってくれたの...すっごく久しぶりだから....嬉しくって」

「そうか...そうだったね」


俺の目を見つめてくる紗季の姿は我が妹ながら堪らなく愛らしくて可愛らしく見えてしまい、思わずその細い肩を抱き寄せてしまった。


可能ならば誰にも見せたくは無い。 そんな愛しさが今の紗季にはあった。


(頼れる存在には...成れそうに無いな。俺も紗季に負けず劣らずの狂愛者だ...いや、そうであっても...)


長い旅路の中に忘れて来てしまった平穏な朝。

こんな穏やかな朝もあったのだなとしみじみと思い浸った。


(これもまた朝、か)


俺たちは抱き合ったままの状態で再び布団に倒れ込むと二人仲良く目をつぶった。




不覚にも二度寝をしてしまったものの、ネリシャのありがたい呼びかけのお陰で時間に余裕をもって準備を始めることができた。


「じゃあ俺は部屋に戻るからね。準備が終わり次第部屋の前で落ち合おう」

「はーい」


紗季の返事を聞き、扉を開くと、そこにはネリシャとエレンが待ち構えていた。


(・・・増えてる)

「おはよう」


思わず胸中でそう呟いてしまうが、顔に出ないように注意しながら朝の挨拶をした。


「おはようございますコヨミさん。今日も良い日が昇っていますよ」

「おは...よう...コヨミ.....迎え...来た...」

「ネリシャは兎も角、エレンはよくこの部屋がわかったな」

「ん...ネリシャが...教えてくれた....」

「教えたと言うよりも後を着けられた、と言った方がただしいですがね...」


心なしか目を輝かせているエレンにネリシャはげんなりとした様子でボヤいた。


「取り敢えず着替えに行きたいからどいてもらえる?」

「どうし...て?だって...ここが....」


エレンが顔を上げた瞬間俺の背後、すなわち扉が勢い良く開け放たれた。


「あ、お待たせお兄ちゃ....増えてる」

「・・・」


飛び出さんばかりの勢いで出てきた紗季であるが、紗季とエレンの視界にお互いが入ると凍りついたようにこれまでの熱気が失せた。


「あなた確か昨日お兄ちゃんと戦った...エレン・ケラーさんだったけ?」

「そう...」

「どうしてここに居るの?」

「貴女には関係無い」

「無く無い!!」


朝の穏やかさはどこへやら、剣呑な空気を振りまく紗季と輝きを失った虚空の様な目で見つめるエレン。

どちらも朝っぱらからにしては重過ぎる空気が張り詰めいた。


「コヨミさん、お着替えをお持ちしました」


我関せずと外野に回っていたネリシャはいつの間にか俺の着替えと装備を一式持って来てくれていた。


未だ静かに、されど激しい威嚇を交す二人とネリシャを残して紗季の部屋に戻るとササッと着替えを済ませて、申し訳ないと思ったが寝巻きは畳んで布団の端に置いておかせてもらった。

最後に刀を帯に差して完成である。


どれ彼方さんは鎮火したかなと覗いてみるが寸分狂わぬ場所で睨み合う二人を見てそれは意味の無い希望であった事が判明する。


「朝食に行きましょう?」


俺が呆然と呆れていると、一人生き生きとしたネリシャがその腕を俺の左腕に絡めてきた。


「あ!鬼の居ぬ間に!!」

「裏切り...者っ」


ネリシャに対する不満を零しながら紗季は右腕へ、エレンは首に手を回しておぶさる様な形でそれぞれ俺に取り憑いてきた。


(ははは....これもまた朝、なのか....)


早々に抵抗する気力が失せてしまった俺はされるがままに食堂へと引きずられていった。


そして、朝からこれだけ騒いだ俺たち(特に俺)は様々な念の篭った視線を送られるようになるのだが、それはまた別の話。

-----------------------M.Gメモ-------------------



武器(剣編)


片手剣

名の通り片手で振れて扱い易い、大半の剣士志願者が初めて手にする剣。

腰の回転や重心移動などを利用して切れ味をより引き出せる。

ごく稀にだが両手に片手剣を携えて二刀流をする剣士もいる。


両手剣

重く大きい両手用の剣。

片手剣が体の回転を利用して斬るのに対して両手剣は剣の重さと遠心力を利用して叩き切る。

何分にも重いので得手不手がハッキリと現れる。


短剣

ナイフ以上片手剣以下の長さの剣で俗に言うショートソード。

力の無い女性が使用することが多く、切るより刺す方が使い勝手がいい。


今は沈んでしまった東方の島国で作られていた反りのある片刃のとても鋭い剣。

片手でも両手でも扱えるが殆どの人は両手で握る。

二種類の鋼で鍛えられたこの武器は折れず曲がらずよく切れると三拍子揃っており、剣士ならば誰もが一度は手にしたいと思う。

現存数がとても少ないのでオークションなどに出品されると破格の値段で取引されるが、紛い物が数多く存在し、中には殆ど本物と変わらないような代物まである。


訓練用模擬剣

名前の通り訓練用の模擬剣。

といっても普通の剣の刃を殺しただけのものなので研ぎに出せば普通に切れる。

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