19. 運命の導き
金髪が美しい女性が、泣きながら必死に訴えてくる。
「お願い…。…を助けて。私の……なの。お願いどうか…」
——また、この夢だ。
私は咄嗟に、自分の魔力を女性へ分け与えた。
すると、先ほどまで途切れ途切れだった女性の声が、ほんの少しだけ鮮明になる。
「…は、まだ囚われている。私の…が、ドラゴンの…なの」
「…何を言っているの?」
聞き返した瞬間、女性は再び必死に泣きながら訴えかけてくる。
「お願い…あの村に…。…を助けて」
しかし、その声は次第に遠ざかっていく。
「待って!」
手を伸ばすけれど、女性の姿も少しずつ薄れていく。
そして、彼女の姿は完全に消えてしまった。
——リーリエ村に行ってから、何度もこの夢をみるようになった。
夢の中の女性が言っていた「あの村」とは、もしかしたらリーリエ村のことなのだろうか。
そう考えると、どうしても確かめずにはいられなかった。
ようやく訪れた休日。私は、リーリエ村へ行くことにした。
ワープゲートを利用するため、管理人のもとへ向かっていると、背後から聞き慣れた声がした。
「ワープゲートは、私的な使用は認められていないんじゃなかったか?」
「…っ!」
ぎくりとして振り向く。
そこに立っていたのは、やはりグレンだった。
壁に背を預け、腕を組んだまま、こちらを見つめる姿は妙に絵になっている。
「グレン…どうしてここに?」
「それはこっちの台詞だ。休日に、何の用でワープゲートを?」
「…………」
まさか、夢のことを調べにリーリエ村に行くなんて言えるはずもない。
どう答えようかと迷っていると、グレンが小さくため息をついた。
「一人で行くつもりだったのか?」
「え?」
「俺も行く」
「ちょ、ちょっと待ってよ。グレンまで、職務規定違反させるわけには…」
「自覚はあったんだな…」
「…うっ。…だって、リーリエ村に行きたいなんて言ったら、ウォーター隊長に反対されると思ったから…」
すると、グレンが私の頬をにゅーんと引っ張ってきた。
「言っただろ?俺は、お前の味方だって」
「いひゃい…」
「一人で抱え込むな。お前が行きたいなら俺も行く」
その言葉に、胸の奥がじんと温かくなる。
けれど、グレンを巻き込むわけにはいかない。
私は、まだ頬を引っ張るグレンの手を振り解き、真っすぐグレンの瞳を見た。
「グレン、ありがとう。だけど、これは私の問題だから…」
「そうか…。では、今すぐ隊長にワープゲートの使用を禁止してもらう」
そう言うと、グレンはくるりと踵を返し、ウォーター隊長の執務室へ向かおうとした。
「えっ、ちょっと…!」
私は慌てて、その腕にしがみつく。
するとグレンは、体は進行方向に向いたまま、顔だけこちらを振り返った。
「選べ、エレノア。俺を連れていくか、隊長に報告されるか」
選択肢を与えられているようで、まったく与えられていない、ずるい二択だった。
私がどちらを選ぶのか最初から分かりきっていたかのような、グレンの勝ち誇った表情が、悔しい。
——けれど…。
私は小さくため息をつくと、観念した。
「分かったわよ…」
それから、夢の中で起きたことと、リーリエ村に何か手掛かりがある気がすることを簡潔に話した。グレンはしばし考え込んでいたようだが、「わかった」と一言だけ告げると、迷うことなくワープゲートの方へ歩き始めた。
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