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二十一話『王子殿下は使者じゃなくない!?』

内容変更いたしました。


 アルノルフ殿下をあずま屋に案内して、椅子をすすめる。

 

 あずま屋の椅子に座れば、すぐさま私の前に王太子殿下の前に出されていた茶器と同じものが用意される。


  いただき物のスイーツが盛り付けられるのは嬉しい。

 

 嬉しいけれど……うぐっ、紅茶だ……渋いから私としては白湯の方が好きだけど、貴族は紅茶を嗜むのが一般的らしい。


 私が紅茶が苦手な事を知っているため、テーブルの上にはミルクと蜂蜜も用意されている。


「パメラありがとう」


 いつものようにお礼を告げれば、仕方がありませんねぇといった困ったようににこりと微笑んでパメラが下がる。


 蜂蜜をニ回ほど垂らして、ミルクを混ぜてティースプーンでぐーるぐる。


「紅茶にミルクと蜂蜜?」


 前から声が聞こえて視線を上げれば、アルノルフ殿下が驚いたような顔をしていた。


「えぇ、紅茶って苦いから私苦手なんです! こうすると甘くて美味しいんですよ?」


 殿下もいかがですか?とおすすめすると、アルノルフ殿下がソワソワし始めたので、パメラに目配せしてアルノルフ殿下の飲みかけの紅茶を入れ直してもらう。


 キラキラとした目で、おそるおそる見よう見まねで蜂蜜とミルクを加えた紅茶を口に運び、アルノルフ殿下の表情が柔らかくなった。


「ふふっ、ね? 甘くて美味しいでしょ?」


「えぇ、美味しいです! グレタ嬢、この紅茶の飲み方を母上や姉上に教えて差し上げてもよろしいですか?」


「はい、どうぞ!」


 にこやかに紅茶を飲んでいれば、アルノルフ殿下が懐から封筒を差し出してきた。


 いや、従者に任せられない様な、機密情報でも書いてあるんじゃ無いよね?


 王子殿下が直接手紙を運ぶのは、もしかしたら普通のことなのかしら。


 もしかしたら私が奴隷だったから知らないだけで、貴族や王族はこれが常識なのかもしれないしね。

 

「母上からお茶会の招待状を預かって参りました」


「ありがとうございます」


 その場で開けて中身を確認する。


「……パメラ……」


 よっ、読めない……基本的にはアルファベットと同じだけれど、装飾された状態の文字を正確に読み取るにはまだまだ勉強不足なのだ。


「拝見させていただきます……グレタお嬢様、アルノルフ殿下を向かわせるので一緒に登城するようにと」


「ありがとうパメラ、登城の支度をお願いしてもいいかしら?」


「お任せ下さい、少し席を外させていただきます」


「お願いね」


 応接室から出ていくパメラを見送ると、アルノルフ殿下が不思議なものを見るような視線を向けてくる。

 

「グレタ嬢はいつも侍女にあのように礼を述べるのですか?」


「えぇ、公爵家に仕えている者たちに礼を告げる必要はないと教わってはいるのですが、つい言ってしまうんです」


「そうですか」


「そうなんです」


 くぴりと紅茶を飲んで、手に持ったティーカップを見つめると、アルノルフ殿下が顔をあげて紅茶を入れていた侍女に声を掛ける。


「……美味しい紅茶をありがとう」


「光栄でございます殿下」


 王太子殿下から褒められてオロオロしている侍女をみる。


「ふふっ、たまには礼を告げるのも楽しいものだね」


 何か思いついた悪戯っ子のような笑顔を浮かべた王子が、その後城に勤める人達に礼を告げるようになったと教えられるのはしばらくたった後の話だ。



 

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