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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
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発現⑤

東の空から漏れてきた薄橙色の粒は、南カマグラ山脈に流れ込んだ。

粒を当てられた鳥たちは、大切なことを思い出したかのように、きゃあきゃあと騒ぎはじめた。

カンダモンダは、尻尾を鞭のように左右に振りながら、鳥たちの姿を追っていた。


「おはようございます。」


「あ、おはようございます~。」


「朝はやいですね。」


「鳥の声を耳にすると、訳もなく身体が目、覚ましちゃんですよ~。」


「それはやっぱり…。」


「猫ですからね~。」

「猫ですもんね。」


二人はお互いに見合って、くすくすと笑った。


「おはよう。ムタロウ。」


「おはようございます~」


ムタロウはのっそりと上半身を起こし、右手で髪の毛を無造作に掻きむしっていた。

いびつな形になっていた。


「……おはよう。」


ウィドウとカンダモンダは目を見合わせた。


ムタロウは、魔力吸蔵合金を拾っていた。

周囲には、白目をむいている灰竜が3体転がっていた。


「心臓直撃だったんですね。」


「ああ…お前の電蟲、強いな。」


「われながらびっくりです。」


「丁度いいので捌いて焼いておきましょう~。」


カンダモンダが二人の間ににゅっと顔をだしてきた。


「私、灰竜を食べるのは初めてです。食べられるんですか?これ?」


「はい~。尻尾はあっさりしているし、お腹は脂がのっていておいしいですよ~。」


「へえ~…じゃあ、ムタロウ、捌いてくださいね!」


「おねがいします~」


カンダモンダの口はにゅうっと前に伸びていた。

カンダモンダの口元を見たムタロウの口角が僅かばかりゆるんでいた。


「ほんと、猫好きなんですね。」


ウィドウの口角もゆるんでいた。


◇◇


「焼き灰竜」をお腹に入れたムタロウ達は、遺構を目指し探索を始めた。


「ここから、南へ進みましょう~。」


「なんで南なんですか?」


「他はもう行ったからです~。」


「…ここに何回来ているんだ?」


「かれこれ4回ですね~。」

尻尾をぴんと立てて先頭を歩いていたカンダモンダは、わずかに顔を横に向けた。


「ムタロウ。ちょっといい?」


ウィドウがムタロウに並んできた。


「あの合金、仲間からもらったって言っていたけど、その人達どうしたの?」


「…今は訳あって、別行動をしている。」


「ふーん…どんな人たちなの?」


「ばばあと、子供だ。」


ウィドウはぷっと噴き出した。


「?…何がおかしい。」


「いや、おかしいでしょ。旅の仲間は?と聞くと、ばばあと子供だって答え。」


「そうか?」


「そうだよ!」


「…。」


「…また、その人たちと合流するの?」


「ああ。そうなる。」


「そうなんだー…。」


「……。」


「あってみたいな、ムタロウの仲間に。」


「会わない方がいい。疲れる。」


「疲れるのに、離れないんだ?…なんで?」


「…色々ある。」


「じゃあ、今度ムタロウの仲間に会ったら、いろいろ聞いてみるね。」


ウィドウのひとことで、ムタロウの歩みはすこしぎこちなくなった。


◇◇


薄橙色の粒は、白色に変化し、ただの粒は、熱をもった粒へと変わっていった。

ムタロウ達は、カマグラ山脈を南に進んでいた。


「あれ~。」


「どうしたんですか?」


「フケノトウの群生ですね~。これは珍しい。」


ムタロウ達の前に花畑が広がっていた。

どどめ色の花は、無数の水泡を蓄え、蜥蜴の鱗を想起させた。


「フケノトウ?これが?」


「そうです~。これ、いいお金になりますよ~。」


「ええ…こんなのが?」


「…高級食材だ。」


「ええ?これが?」


「ムタロウさんの言う通りですよ~。」


ムタロウの黒目が少し、光った。

ウィドウはムタロウの目を見て、ぷっと噴き出した。


「これを採取して生活の糧にしている冒険者もいるんです~。」


「ええ~…こんなのが…知らなかったなあ。」


ウィドウはフケノトウを一本むしり、鼻に近づけた。


「別に美味しそうな香り、しませんよ?」


「煮込むと、いい香りと味がでておいしいんですよ~。」


カンダモンダは右手で口の周りを何度もぬぐっていた。


「…人が入った跡があるな。」


ムタロウは、膝をつけフケノトウをじっと見ていた。


降り注ぐ粒子は、にわかに熱を失っていった。


◇◇


薬の仕入の為、ムニューチン夫妻は薬問屋へ向かっていた。

薬問屋は、ノーブクロ冒険者協会…ギルドと称される建屋の隣にあった。


「はやく、ムタロウさんたち帰ってこないかしら。」


「そう、心配するな。お前の思い過ごしだよ。」


「そうかしら…。私…気持ち悪いのよ。」


ペトーマンの目はしょぼしょぼしていた。


「顔色も悪い…寝不足じゃないのか?」


「…ええ、ここの処眠りが浅くて。」


「今日から眠りを深くする薬を飲もう。身体を壊したら元も子もない。」


「ありがとう。そうするわ。」


ムニューチンは、少し目尻を下げ、ちらと顔を横に向けた。

ギルド建屋から老婆と子供が出てきた。

二人の視線の先は足元だった。


ムニューチンは二人を見て、前を向いた。


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