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悪党狩り  作者: 伊藤イクヒロ
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イーブクロにて

前日、酒飲みで帰宅が午前様だったので、一日中眠かったです

ムタロウがイーブクロ入りしてから2ヶ月が経った。

クゥーリィーは初等魔導学校に通い、ムタロウ達は依頼をこなしながらイーブクロを訪れるポーションの仲買人と接触して医師の転移者の情報収集をするという毎日を送っていた。


日々の仕事はイーブクロが比較的大きな街でブクロと異なり治安維持組織もしっかりしている事に加えて矯正委員会の力がそれほど強くないことから依頼内容は、迷子の猫探しや草むしりといった便利屋業が大半であった。


仲買人に話を聞くと張り切っていたムタロウだったが、人見知りが激しく口下手である事が災いして、彼らからろくに情報を引き出せなかった。

業を煮やしたラフェールが、仲買人とのやり取りはわしがやると言い出し、ムタロウはラフェールの後をただついて行くだけの金魚の糞の様な有様であった。

実際、ラフェールの対人折衝能力は極めて優秀であり、声を掛けた仲買人の大半と懇意になり、医師の転移者の情報を掴んだら連絡するというイーブクロを訪れる大半の仲買人と約束を取り付けていた。


ラフェールが仲買人から得た情報のうちには3か月程前にナマナカ峠に巣作っていた強盗団が何者かによって全滅したという話もあった。

お陰で峠越えのリスクが大幅に減り、峠入り口の生なき町も大賑わいしているとの事であったが、まさか自分達がイーブクロの交易に多大なる影響を与えていたとは思いせず、驚いたりしていた。


クゥーリィーはというと、元々勉強好きということもあってか座学から実習まで精力的に取り組み、最近では水魔導も使えるようになったと学校長から報告があった。

ムタロウとラフェールは報告を聞き、たいそう喜んだが、肝心のクゥリィーはというと水魔導の発出は左手に制限され、なおかつ、水魔導は水盾のみである事に不本意な思いを抱いている様であった。


魔導の習得に於いて発動条件や系統等、個々人で様々な制約が発生するという話はムタロウも聞いていた。

クゥーリィーの場合、火魔導には相当な適性を有しているが水魔導に対する適正は火魔導程のそれは無く、また、魔導の使用は左手に限られるという制約があるという話であった。


クゥーリィーと戦闘になった場合、攻略の定石として先ず左手を切り落として防御魔導である水盾を使用不可にしたのち、右手の火魔導に注意しつつ接近戦に臨めば、極めて高い勝率が見込める。

対魔導師戦に於いて、相手の制約をいち早く見破る事が勝利への近道となると言えた。


魔力量については、修練に掛けた時間がそのまま結果に繋がる類のものらしく、クゥーリィーのそれは入学当初に比べ、飛躍的に増加しているとの事であった。


更にひと月経つと、ナマナカ峠の強盗団壊滅の話はナメコンド国中に知れ渡ったらしく、イーブクロにポーションを買い求めに来る仲買人や冒険者が急増した。

お陰でイーブクロには仲買人で溢れかえっており、情報収集に苦労する事は無くなった。

ラフェールは仲買人達から聴取したナメコンド国の医師の氏名、住所、得意分野をリストに纏める事に忙殺させられていた。


そんな事務作業に追われる日々の中で、ラフェールは仲買人から2つの気になる噂を聞いた。

一つは、ナメコンド西の港湾都市ビクンの反豚種団体であるナァル・ワッシが矯正委員会のメンバーに暗殺されたという話で、もう一つはナメコンド国で20年ぶりに魔人族の目撃報告が多数あるという話であった。

いずれも3~4か月前に起こった話との事であり、豚種と魔人種という一見関係性の薄い話が何故同じタイミングで世間に流れてくるのか、ラフェールの心に引っかかっていた。


特に魔人種は王都ナメコンド東に広がるウーマ砂漠北東に走る南カマグラ山脈奥地を拠点としており、人間との共生を極端に嫌う為、人間の前に姿を現す事は非常に珍しかった。

そんな彼らが、王都で目撃され数日後にブクロで見かけたという話を聞くと、目撃された魔人はイーブクロに向かっていると考えるのが自明であった。


「これが矯正委員会の追手だったりしたら、ちとやっかいだのぅ。」


ラフェールは思わずため息をついてしまっていた。

ブクロからイーブクロまでに3回矯正員会に関連した事案に関わっている。

初めはクゥーリィーの拉致・暴行、二度目はベリーショートの女の遭遇、そして三度目はナマナカ峠山頂での強盗団による襲撃。

特にナマナカ峠の強盗団の壊滅と魔人族の出現は無関係と言い切れなかった。


「早く医師を見つけて移動せんといかんかもしれないのぅ。」


魔人族の極めて高い戦闘力を思うと、ラフェールはイーブクロに居続ける事がリスクなのではないかと不安になるのであった。




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