第5話「やられるまえにやれ」
『おい美咲』
『なーにー?』
『クラスメートが10人死んでいる』
『そうみたいだね』
『他のクラスのやつらはどういう状況なんだ?』
『えーとね、死者数は65人』
『それは知っている』
『彼らはふつーにこの世界に転生して、ふつーに生きてるよ。スキルとかないし。初期ポイントが尽きて死んだりすることもない』
『姿は変わっているのか?』
『のんのん。制服のままで転移したはずだよ。体力は生前のまま。魔力はランダムだから、人によっては異世界無双とかできるケースもあるかもね』
『全員がばらばらの場所に転移したのか?』
『うん。といっても、人のいる場所から100メートル以内の安定した場所にランダム転移だけど』
『その条件はクラスメートも同じか?』
『設定をいじってなければね』
『それはおかしいだろ』
『なにが』
『僕のクラスのやつらはキャラクター設定でスキルを得ているし、パラメーターも強化できる。死亡率を考えろ。明らかに僕のクラスのやつらのほうが多く死んでるじゃないか』
『あー』
香山美咲は少し考えるように風呂場を飛び回り、ぽんと手を打って僕を見た。
『地雷スキルのせいかな?』
『地雷スキル?』
『文字通り、取ると命の危機に直結するスキル。無駄になるどころじゃない。マイナスになるスキル』
そんなものがあるのか。
いや、あるか。
今だからわかるが、あのキャラクター設定にはいくつもの罠があった。
制限時間が切れて失敗する可能性も決して低くはない。
『たとえば確率操作。これで自分の生存確率とかをいじっちゃうと即死する。あとは権力にマイナス補正を入れた人とか。街からスタートできないから死にやすい。基準値の100だと平民だから、貴族から無礼打ちされたりとかあるかも』
なるほど。
無礼打ちはともかく、設定をいじったせいで死にやすくなるケースはあるのだ。
『あとはまあ、体力を10にして即死とか? 警告が出るからこれはほぼいないはずだけど』
『他には?』
『自爆なんてスキルもあるよ。文字通り使うと爆発して即死する。試した段階で死ぬわけだね』
文字通りの地雷スキルということか。
無茶な設定だ。
そんなのを入れるなよ。
選択肢次第でバットエンド直結とか、いくらなんでも自由度高すぎだろ。
『要するに、キャラクターメイキングで10人が失敗して死んだということだな』
『まーそうだね。残ってる人はそろそろこの世界に適応するころだと思うし、今後は他のクラスの人のほうが死にやすくなると思う』
ふむ。
そういう意味では、僕のクラスはやはり恵まれているか。
失敗すれば悲惨だが、成功すれば人よりもはるかにいいスタートを切れる。
なにせ前提が違うのだ。
世の中には努力で解決できないことのほうが多い。
上級貴族の跡継ぎに生まれた僕は、正しい意味でのチート野郎ということだな。
『そういえば、他のクラスのやつらが死んだ時にはポイント変動はないのか?』
『ううん。あるにはあるよ。ただ、彼らはモブだから。直接殺してようやく2ポイント。100人死んで20ポイント』
『他のクラスのやつらには何か目的があるのか?』
『目的とは?』
『僕たちであれば他のクラスメートを殺すと寿命が延びる』
『ああ……そういう。目的はあるよ』
『あるのか』
『彼らが私たちを殺すとスキルとパラメーターを奪い取れる』
香山美咲は恐ろしい事実を口にした。
すると、なにか。
僕たちクラスメートは、他のクラスのやつら全員から命を狙われているのか。
『ただし、この情報を知るためには制限があるらしい』
『制限とは?』
『それはわからない。少なくとも私には。ただ、誰もが知れる情報じゃないのは確かだと思う』
それなら、まだましだが。
いやしかし。
400人も人がいれば、最高の運命を引き当てるやつはいるだろう、
『奪った能力は重複するのか?』
『ううん?』
『例えば5人10人と殺すことによって、より強化されるのかということだ』
『される。ただ、クラスメートの数は少ないからね。世界全土に散らばってるし。2人以上殺すなんてのは天文学的な低確率だと思うよ』
美咲は軽く保証した。
なるほど。
確かにそうなのかもしれない。
いや、本当にそうなのだろうか?
たとえば僕であれば、プライベートピクシーの力を使って転生者を探せる。
今はできなくても。
いずれできるようになる。
似たようなことをできる奴がいないと断言していいのか?
あるいは、他のクラスのやつを操る能力の持ち主がいるとして。
そいつと探索能力の持ち主が組めばどうなる。
操った奴隷にクラスメートを殺させてガンガン強化する。
最終的にはこの世界の王を作る。
そういうこともできるのではないだろうか。
わからない。
可能性はある。
できるだけ早い段階で殺しておくべきなのかもしれない。
他の転生者を、全員。




