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第7話「スキル調査」

 スキル 内臓強化


 詳細説明

 体力を20底上げします

 消化吸収を助けます

 病気にかかりにくくなります

 体の調子を整え、最適な状態をつくります

 効果は永続します

 発動すると失われます


 発動しますか?

 →はい



 迷わずに発動する。

 あいかわらず自覚症状はない。

 ただ、たとえば肝臓の力があがれば脂肪を分解しやすくなる。

 膵臓ならば糖尿病になりにくい。

 腎臓ならば老廃物をガンガン排出してくれる。

 胃腸がよければお通じもいい。

 いいことだらけである。

 過酷な訓練に耐えられるかどうかは、ほぼ内臓の力で決まるといってもいい。


 まあ、体重150キロのウォーレンであるから、もともと膵臓は強いだろう。

 アジア人とは違う。

 白色人種がああも太れるのは膵臓の力がけた違いに強いからだ。

 日本人が太れば糖尿病で死ぬ。

 そもそも太れないのだ。


 日本人は清貧だから太らない、などというのは単なる妄想である。

 膵臓が弱いから太れない、というのが正しい。

 不健康だと太れない。

 そういう意味ではウォーレンには見どころがあった。

 ガリガリの虚弱体質を改善するのはむりだ。

 デブならば希望はある。


 太っている人間をやせさせるのは病気を除いて比較的簡単なのだ。

 逆にやせている人間を標準体型にするのは難しい。

 食事制限によってやせているのならまだいい。

 どうにかなる。

 自然にやせている場合は困る。

 筋肉がつかないのだ。

 なにをどうやっても鍛えられない。



 さらに血管強化も試してみる。



 注意

 スキルの発動は1年で3回までです。

 体が慣れるまで他のスキルは使えません。



 げ。

 そんなめんどうな縛りがあったとは

 失敗したかもしれない。

 戦闘系のスキルを先に取ればよかった。

 詳細説明を見たいのだが、それさえも表示されない。


 なんてことだ。

 順番を間違えた。

 まずはじめに全てのスキルの説明を読んでから発動するべきだったか。


 いやしかし。

 僕は神ではない。

 結果論での間違いにまでくよくよするのは無駄だろう。

 反省するポイントもない。

 強いて言えば、次からはまず「いいえ」を選ぶというぐらいか。


 僕は気を静めるために茶葉やブルーベリーをぽりぽりとつまむ。

 おいしい。

 なかなか甘くて味がある。

 水と塩でそれらを流し込んで、僕は気を取り直して調査を再開した。

 

 スキルについてはいい。

 1年後に考えよう。

 その他の項目に目を向ける。



 その他


 転生場所 エニウェア侯爵領

 仲間 エニウェア侯爵家家臣団、プライベートピクシー(香山美咲)

 ペット 番犬、精霊獣、飼い馬

 奴隷 エニウェア侯爵家召使い

 種族 紅眼族純血

 人格固定 50%

 家族構成 エニウェア侯爵家一族

 容姿固定 なし

 汎用世界言語 会話のみ

 汎用竜言語 なし



 特に気になるのは、これか。



 汎用世界言語 会話のみ 



 僕のスキルには日本語や公用語がある。

 汎用世界言語との違がわからない。

 どうだろう。

 初期設定は読み書き可能だった。

 初期ポイントをかせぐために会話のみにしたのだ。


 何か不都合があるのでは?


 僕はウォーレンの部屋の書棚にある本を手に取って読んでみる。

 意味がわからない。

 読めない。

 もともとは読めたはずなのに。

 まさかウォーレンが読めない本を自室に置いていることはないだろう。

 設定をいじったせいで読めなくなったようだ。


 どうしよう。

 本が読めないと日常生活に支障が出る。

 しばらく言語学習を積む必要があるのかもしれない。

 いや、あきらめるのは早い。

 心の中のウォーレンが俺にまかせろと言っている。


 試しにまかせてみる。

 読めた。

 理解できた。

 ウォーレンの視点を意識して取り入れると本を読むことができる。

 しかし、これがつらい。

 並行して二つの事柄を処理している感じだ。

 外国語で書かれた本を読んでいる感覚に近い。

 わかることはわかるが、感覚的に情報が入ってこない。

 日本語とはやはり違うということか。


 より詳しく調べてみると、書棚には僕が読める本と読めない本があった。

 大陸中部で主に使われている公用語の本は問題ない。

 完全に理解できる。

 逆に大陸北部で主に使われている紅眼族言語はわからない。

 ウォーレンに音読してもらえばわかる。

 なるほど

 どうやら紅眼族言語とやらは汎用世界言語扱いのようだ。


 紅眼族言語と公用語との間にはほとんど違いはない。

 せいぜいが方言と標準語の違い。

 そんな程度のものだ。

 しかしスキルを使って翻訳されるかでいえば天と地の違いがある。

 僕には紅眼族言語が読めない。

 授業とかどうしよう。

 まあウォーレンに任せることになるのだが。

 読解スピードは相当落ちることになりそうだ。


 しばらくは読み書きの学習を日課に入れる必要がある。

 特に書くのは必須。

 あらゆる場面で必要になるだろう。

 ウォーレンに代筆してもらうこともできるが、どうしても速さが落ちる。

 それは困る。

 呼吸をするような自然さで書けないと学業に支障が出る。


 現状、僕は王立貴族学校の学生という立場だ。

 学生にも仕事はある。

 僕は貴族枠での入学のため、学業優秀である必要はない。

 しかし最低限、人としてこれぐらいはというハードルは存在する。

 一般枠の怪物とやりあうのはともかく。

 貴族枠のアホなボンボンと比べても頭が悪いというのは、後々の評判に関わる。


 まあいい。

 問題ない。

 僕はこう見えても頭がいい。

 世界トップレベルや専門家とやりあっても勝てないが、貴族相手なら十分。

 ちょっと学習環境がいいだけのお子様が比較対象だ。

 この世界の平均レベルが前世と同じなら。

 負けようがない。

 むしろ相手が弱すぎて退屈にさえ感じるはず。


 それからしばらくの間。

 僕は今までの情報をメモにまとめ、読み書きの練習をして過ごした。

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