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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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51 捨てられた地

 王命により旅し、辿り着いたアルフィナ領。

 災害から領民を置いて領主が逃げ出し、領民たちも一人残らずいなくなった領地。


「捨てられた地、ですか……」

「オマケに今や魔獣災害が起きると予言されている土地ね!」

「最悪ですねぇ」


 幸い、領民がゼロということは魔獣災害が起きても犠牲者もゼロということよ。

 とはいえ放置していれば近隣の領地に被害が及ぶわ。

 しかも、ここは森を挟んでいるとはいえ、私の親友フィオナの故郷エーヴェル辺境伯領の隣にあるのだもの。決して捨ておける状況じゃないのよね!


「とりあえず行くわよ! 領主屋敷に行けばいいかしら」


 私と一緒に来てくれた仲間たち、リンディス、カイル、セシリア、ヨナ。

 みんなと一緒にひとまず領主不在の領主屋敷を目指す。


「お嬢、警戒していてください。魔獣災害というものがどの規模かわかりません」

「そうね!」


 予言の聖女アマネが下した予言。あの女は多くの災害を当ててきた。

 だから魔獣災害がこの地で起きるという話も否定はできない。

 でも、それは将来、私が『傾国の悪女』になる予言も否定できないってことなのよね!

 困ったものだわ。私にはまったくそのつもりがないのにねぇ。


 しかも、私の方でも『予言』の【天与】によって、その未来が視えているの。

 予言の世界での私は処刑されたり、殺されたりしている。

 まぁ、その未来はあんまり今の私とつながっていなさそうなんだけどね!


「村かしら」

「そのようですね」


 領地の端の村ね。木材による柵で囲われているのだけど。


「村の周囲を覆う柵が壊れたまま、修繕されてないね」

「領民たちは皆、近隣に保護されたか逃げ出したかという話だよ」


 今、私たち一行はリンディスが二頭立ての馬車の御者を務めている。

 私とセシリア、ヨナはその馬車の中から顔を出して領地の様子を見ているわ。

 カイルは馬に乗っている。走らずにゆっくりと進んでいるところよ。


「……人がいないね」

「野盗に襲われ、アジトにされて、というわけでもなさそうです」

「家屋が倒壊している場所もありますね。嵐の被害がこんな領地の端にまであったようです」

「きちんと避難できていたならいいのだけどね」


 アマネの予言の功績は、そういうところよね。人を多く助けた。

 そこは認めないといけないわ。

 ただまぁ、あやしいところはあるのだけど。今はそれを言いっこなしね!


 そうして、奥へ奥へ。アルフィナ領を進んで行くわ。

 領地の中央にある領主屋敷にも着くまで、いくつかの村を見た。

 本当にどこにも人が残っていないわねぇ。


「近隣の領地が救援に来たといっても、ここまで残らないものなのね」

「領民を置いて逃げるような領主がいたんだ。元から苦しい生活をしていたのかもしれない。そこに手厚い保護が与えられたなら離れる者は多かったのだろうね」


 廃村となっているところばかり。

 人の姿も見かけないけど魔獣の姿もとくにない。

 ここが私の旅の目的といわれるとなんだか微妙だけど。


「ここまで色々とあったわね、リン」

「……そうですねぇ」

「婚約を解消されたこととか予言は思うところがあったけど。でも悪くない旅だったわ!」

「お嬢……」


 ヨナを助けられたし。カイルとも再会できたしね!



「……お嬢、おそらくアレが領主屋敷なのですが」

「またひどいわねぇ」


 領主屋敷は、領地で一番広い平野に建てられていた。

 ただ、遠目から見てもひどい有様だったわ。

 外壁は崩れ、屋敷の一部は焼けて壊れている様子。窓はいくつか割れているみたい。


「アレは人に襲われたんだろうね」

「嵐でああなったのじゃなくて?」

「領主が逃亡したことで、その時に残った民たちの怒りを買ったんだろう。だから、ああして領主の屋敷を破壊したのだと思う」

「なるほどねぇ」

「まぁ、もちろん嵐の影響も大きそうだけどね」

「とにかくいろいろな理由でボロ屋敷ってわけね!」

「お嬢、表現がよろしくないです」

「フフン!」

「褒めていませんから!」


 とにかく私たちは領主屋敷に入る。

 外壁は崩れているし、門も壊れていたわねぇ。


「失礼するわ! 私はマリウス侯爵家の長女、クリスティナ・マリウス・リュミエット! 誰かここにいるかしら!?」


 屋敷に入った私は大声を出して屋敷中に聞こえるようにした。


「返事がないわね」

「はい」


 ここまで、ざっと見た限りでは、この領主屋敷が一番立派な建物よ。

 もし、残った人がいるなら、家主のいないこの場所を勝手に陣取るんじゃないかしら。


「無人の廃村なら、賊が拠点に変えていてもおかしくないけれど。ここはそれすらもないみたいだ」

「領民もいないから襲う相手すらいないのね」

「ここまでに通った村では農具がなくなっていた。近隣の領地に移った村人たちが持っていったのだろう。そうでなくても他に残っていた有益な物は賊が盗んだあとだろうね」


 カイルの指摘通り、領主屋敷の中は略奪のあとみたいだったわ。

 それなりに広いから全部をすぐには見られないけど。

 残っていて嬉しい品は本当になさそう。


金目(かねめ)の物がないわね!」

「お姉ちゃんが盗賊みたいなこと言ってる……」

「フフン!」


 領主屋敷は本当にボロ屋敷状態。ただまぁ、建物としての造りだけはしっかりしているわね。

 崩れる心配自体はなさそう。


「拠点にするなら、この領主屋敷ね!」


 ちなみに。別に王命では領地を与えるなんて言われていない。

 なので、勝手に占拠することになるわ! ふふ。


「楽しそうですね、お嬢」

「だって、ちょっとワクワクするもの!」


 さぁ、今日から拠点作りよ!


【宣伝!】書籍1巻、2026年6月30日に発売です!

よろしくお願いします!

記念更新!

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!この作品が一番好きです。改訂前のも読みましたが改訂後もよりスピーディな展開になって良きです。前向きなクリスティナが大好きです♡
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